典型元素と遷移元素をいろいろとみてきましたが金属のイオン反応がたくさんありました。ここでは金属イオンの検出試薬と検出反応(炎色反応など)と反応式をまとめておきます。系統分析につながるところなので沈澱の色とともに少し時間をかけて見ておくと良いでしょう。

金属元素の検出反応には炎色反応などもありますが、特定の試薬との反応で呈色したり、逆に色が消えたりすることで存在を確認することができます。
イオン反応式で表せないものもありますが、金属イオンの有名どころを並べておきますので確認して下さい。

典型元素の金属イオンと化合物

カルシウム

 \(\mathrm{Ca^{2+}}\)(イオン): 

+ \(\mathrm{\color{red}{(NH_4)_2CO_3}}\)(試薬)

 \(\mathrm{Ca^{2+}+CO_3^{2-}\rightarrow CaCO_3}\) (白色)

バリウム

\(\mathrm{Ba^{2+}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{(NH_4)_2CO_3}}\)
 \(\mathrm{Ba^{2+}+CO_3^{2-}\rightarrow BaCO_3}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{H_2SO_4}}\)
 \(\mathrm{Ba^{2+}+SO_4^{2-}\rightarrow BaSO_4}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{K_2CrO_4}}\)
 \(\mathrm{Ba^{2+}+CrO_4^{2-}\rightarrow BaCrO_4}\) (黄色)

アルミニウム

\(\mathrm{Al^{3+}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\)
 \(\mathrm{Al^{3+}+3OH^-\rightarrow Al(OH)_3}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\) (少量)
 \(\mathrm{Al^{3+}+3OH^-\rightarrow Al(OH)_3}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\) (多量・過剰)
 \(\mathrm{Al(OH)_3+OH^-\rightarrow [Al(OH)_4]^-}\)
(白色沈澱が溶けて色が消えます。)

\(\mathrm{Pb^{2+}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{H_2SO_4}}\)
 \(\mathrm{Pb^{2+}+SO_4^{2-}\rightarrow PbSO_4}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{K_2CrO_4}}\)
 \(\mathrm{Pb^{2+}+CrO_4^{2-}\rightarrow PbCrO_4}\) ( 黄色)

+ \(\mathrm{\color{red}{HCl}}\)
 \(\mathrm{Pb^{2+}+2Cl^-\rightarrow PbCl_2}\) (白色)

亜鉛

\(\mathrm{Zn^{2+}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\) (少量)
 \(\mathrm{Zn^{2+}+2OH^-\rightarrow Zn(OH)_2}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\) (過剰)
 \(\mathrm{Zn(OH)_2+2OH^-\rightarrow [Zn(OH)_4]^{2-}}\)
(白色沈澱が溶けて色が消えます。)

+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\) (少量)
 \(\mathrm{Zn^{2+}+2OH^-\rightarrow Zn(OH)_2}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\) (過剰)
 \(\mathrm{Zn(OH)_2+4NH_3\rightarrow [Zn(NH_3)_4]^{2+}+2OH^-}\)
(白色沈澱が溶けて色が消えます。)

ここまでは典型元素で、
次からは遷移元素です。

遷移元素のイオンと化合物

\(\mathrm{Cu^{2+}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\)
または
+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\) (少量)
 \(\mathrm{Cu^{2+}+2OH^-\rightarrow Cu(OH)_2}\) (青白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\) (過剰)
 \(\mathrm{Cu(OH)_2+4NH_3\rightarrow [Cu(NH_3)_4]^{2+}+2OH^-}\)
(青白色沈澱が溶けて色が消えます。)

\(\mathrm{Ag^+}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{HCl}}\)
 \(\mathrm{Ag^++Cl^-\rightarrow AgCl}\) (白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{K_2CrO_4}}\)
 \(\mathrm{2Ag^++CrO_4^{2-}\rightarrow Ag_2CrO_4}\) (赤褐色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\) (少量)
 \(\mathrm{2Ag^++2OH^-\rightarrow Ag_2O+H_2O}\) (褐色)

+ \(\mathrm{\color{red}{NH_3aq}}\) (過剰)
 \(\mathrm{Ag_2O+H_2O+4NH_3\rightarrow 2[Ag(NH_3)_2]^+2OH^-}\)
(褐色沈澱が溶けて色が消えます。)

\(\mathrm{\color{green}{Fe^{2+}}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\)
 \(\mathrm{Fe^{2+}+2OH^-\rightarrow Fe(OH)_2}\) (緑白色)

+ \(\mathrm{\color{red}{K_3[Fe(CN)_6]}}\)
ターンブル青と呼ばれる濃青色沈澱で検出
(\(\mathrm{K_3[Fe(CN)_6]}\)ヘキサシアニド鉄(\(\mathrm{Ⅲ}\))酸カリウム)

\(\mathrm{\color{blue}{Fe^{3+}}}\) :

+ \(\mathrm{\color{red}{NaOH}}\)
 \(\mathrm{Fe^{3+}+3OH^-\rightarrow Fe(OH)_3}\) (赤褐色)

+ \(\mathrm{\color{red}{K_4[Fe(CN)_6]}}\)
紺青(こんじょう)またはベルリン青と呼ばれる濃青色沈澱で検出
((\(\mathrm{K_4[Fe(CN)_6]}\)ヘキサシアニド鉄(\(\mathrm{Ⅱ}\))酸カリウム)

金属イオンの検出反応はここに並べただけではありません。
他にもたくさんあります。
物質が化学変化をすれば反応は何かしら起こっているはずなので、それを式で表す化学反応式は大切ですよね。
教科書からすべて抜き出して、覚える時間があれば覚えておくと良いですよ。

金属イオンの検出は炎色反応もありますので一通り紹介しておきます。

炎色反応

 \(\mathrm{Li} 赤 \mathrm{Na} 黄 \mathrm{K} 紫 \mathrm{Cu} 緑 \mathrm{Ca} 橙 \mathrm{Sr} 紅 \mathrm{Ba} 緑\)
 リアカーなきKムラ、どうりょく(動力)借りようとするもくれないばりょく(馬力)

炎色反応を起こすのはアルカリ金属とアルカリ土類金属、それと銅だけです。
マグネシウムは炎色反応するアルカリ土類金属には含まれておりませんので注意して下さいね。

⇒ 物質の成分元素の検出 沈殿と炎色反応

硫化水素の6属系統分析で説明してありますが、\(\mathrm{Na^+}\,,\, \mathrm{K^+}\) などの第6属陽イオンのアルカリ金属は沈澱を生じないので炎色反応で検出します。他の元素の炎色反応は補助手段です。
6属系統分析法が出てきたので硫化水素の反応もまとめておきます。w

金属イオンと硫化水素の反応

水溶液が酸性、中性、塩基性のどれでも反応する金属イオンの沈殿物は
 \(\mathrm{Cu^{2+}\rightarrow CuS}\) (黒)
 \(\mathrm{Hg^{2+}\rightarrow HgS}\) (黒)
 \(\mathrm{Ag^+\rightarrow Ag_2S}\) (黒)
 \(\mathrm{Pb^{2+}\rightarrow PbS}\) (黒)
などがあります。

水溶液が中性、塩基性の場合のみ反応する金属イオンの沈殿物は
 \(\mathrm{Mn^{2+}\rightarrow MnS}\) (淡赤)
 \(\mathrm{Fe^{2+}\rightarrow FeS}\) (黒)
 \(\mathrm{Ni^{2+}\rightarrow NiS}\) (黒)
 \(\mathrm{Zn^{2+}\rightarrow ZnS}\) (白)
などがあります。

ここまでをしっかり復習しておけば次の系統分析が理解できます。

試験で良く問われるところなので何度も見ておくといいです。

⇒ 金属イオンの定性分析 分属と系統分析の方法

広く基礎知識を問われるのは間違いないので捨てて良いところはありません。
でも力の入れどころもありますよ。