2017年センター試験2日目、全国的に大雪となった1月15日に化学基礎を含む理系科目の本試験が行われました。
化学の問題分解は別にしますが、先ずは化学基礎について解説してみようと思います。平均点は昨年並みか少し上がる程度でしょう。

2017年(平成29年)センター試験化学基礎の問題

問題

 ⇒ 2017平成29年度センター試験「化学基礎」問題

詳しくはおおよそサイト内にあるので「サイト内検索」にキーワードを入力し参考にして下さい。

2017年(平成29年)センター試験化学基礎の解説

第1問 物質の構造と構成

問1-同素体

同素体を持つ元素は「SCOP」です。
酸素も同素体のオゾンがあるので「同素体が存在しない」というのが誤りですね。

問2-同位体

中性子数を計算すれば良いだけですが、原子番号を覚えていない人は周期表を書いたか書かなかったかが分かれ道です。
周期表の20番目までの元素は覚えて、書き出しておきましょう。

左上の数字は質量数なので原子番号を引けば中性子数ですね。
 \(\mathrm{^{40}Ar}\) がアルゴンの原子番号18との差が一番大きいです。

問3-結合を表す価標の数

水はご存じの通り酸素の手が2本あり、それぞれの手に水素が1つずつ単結合した構造です。
窒素は3重結合、酸素は二重結合、二酸化炭素の炭素と酸素も二重結合、アセチレンは炭素結合が三重結合、エチレンは炭素どうしが二重結合となっています。
これは他の分子の構造よりも水の構造式から即答でしょう。

問4-結晶と分子構造

a:結晶です。
二酸化ケイ素は分子結晶なのでイオン結晶でないものはこれです。
他はイオン結晶です。

b:分子の構造です。
メタンの正四面体構造はよく知られていますね。
水は直線ではなく折れ線だというのもよく知られています。
二酸化炭素は炭素と酸素の結合は二重結合で直線構造です。
極性はありません。
アンモニアは水素が3つなので平面と間違えやすいですが四面体構造です。
メタンの水素が1つ抜けて、その部分に電子対がある構造を想像して下さい。

問5-物質の三態(沸点)

気圧が高いときは沸点は高くなります
上から液面をおさえているようなものなのでそれが大きくなれば沸騰しにくくなります。
だから、「大気圧が変わっても沸点は変化しない。」というのが誤りです。

問6-アンモニアの水への溶解と気圧低下

アンモニアは水に溶けやすいので上方置換で集気して、水を加えるとアンモニアが溶けてその分圧力が下がるということが読み取れるかどうかですね。
メタンは水に溶けないのでアンモニアと同じようには水は吹き上がりません。

問7-日常生活での化学の利用

水道水はpHがおかしいから飲めないということはありません。
自然の川の水もpHは中性とは限りません。
塩素を加えるのは消毒殺菌のためでpH調整の為ではありません。

第2問 物質の量的問題

問1-簡単な比

ややこしい計算はしなくても出ます。
水素とヘリウムは問題の最初のページに与えられているとおり、分子量が2:4です。
ヘリウムは単原子分子なので2倍しなくて、そのまま分子量になることに注意。
気体の体積が4:1なので水素:ヘリウム=8:4となるので水素の方が2倍重い。

問2-ややこしい比例計算

要は、\(\displaystyle \frac{w}{M}\) (mol)
つまり分子の数が \(\displaystyle \frac{w}{M}\times N_\mathrm{A}\) のとき \(X\)(cm^2) なら、
分子1個のときの面積は?という問題です。

\(X\) を \(\displaystyle \frac{w}{M}\times N_\mathrm{A}\) で割れば良いので、

 \( \displaystyle X\div\frac{w\times N_\mathrm{A}}{M}=\frac{XM}{wN_\mathrm{A}}\)

問3-エタノールの燃焼

反応式が書ければ簡単です。
トウモロコシはどうでも良いし、関係ありません。笑

 \( \mathrm{C_2H_5OH+3O_2\rightarrow 2CO_2+3H_2O}\)

1モルのエタノールから2モルの二酸化炭素が発生するので、
1モルの二酸化炭素が発生したなら0.5モルのエタノールが燃焼したことになります。
44gの二酸化炭素は1モルなので0.5モルのエタノールが燃焼したことになりますが、
エタノールは1モル46gなので23gのエタノールが燃焼した、ということです。

問4-実験器具の扱い方

a:ホールピペットは標線のついたガラス器具の1つです。
溶液の濃度を変えずに一定量を計りとるためのものなので、あつかう溶液ですすいでそのまま使います。水などで洗うと残った水で濃度が変わるので水では洗いません。
温風で乾かせば良いのでは?と思うかもしれませんが、熱を書けるとガラスの膨張などにより体積が変わるので自然乾燥するのが普通で、使う前にあつかう溶液ですすぐようにします。
b:ホールピペットは、はかりとる溶液ですすぎます。
また溶液のはかり方は溶液の底面(液表面の平らな部分)で量ります。溶液の端は表面張力で浮き上がるので正確ではありません。

問5-滴定と指示薬

フェノールフタレインは塩基性で赤色
(元が赤色なら塩基性液が入っていた)
メチルオレンジは酸性で赤色
(元が赤色なら酸性液が入っていた)
というのを覚えていれば、入っている溶液の性質が見抜けます。

AとBは塩基性、Cは酸性です。
これは選択肢ですべて一致しているので理由には足りません。
Bは中和に2倍の量が必要なので2価だと分かるので水酸化カルシウムしかありません。
さらに、徐々に変化したということなのでAは弱塩基、Cは弱酸で酢酸と分かるので、
Aはアンモニア、Bは水酸化カルシウム、Cは酢酸の組合せとなります。

問6-酸化還元反応

反応式は与えてくれているので、
係数で等式をつくればヒントが与えられます。
電荷の総数は左右で等しいので、
1番目の式から、

 \( \mathrm{-1-b=-2a}\)

3番目の式から

 \( \mathrm{-1+2c=3c-2a}\)

整理すると

 \(\mathrm{1+b=2a}\) ・・・①
 \(\mathrm{1+c=2a}\) ・・・②

これらから \(\mathrm{b=c}\) かつ「\(\,\mathrm{b\,,\,c}\,は奇数\)」と限定できるので答えは選べます。
が、正確には、1番目の式の「酸素の数」から、

 \( \mathrm{4+a=2+2a}\)

となるので、\(\mathrm{a=2}\) と分かるので

 \( \mathrm{b\,=\,c\,=\,3}\)

問7-物質の変化から濃度を求める問題

問題分に反応式が書いてあるので問題ないでしょう。
(私は問題分を読みながら反応式を書いていくので時間をほんの少し無駄にしました。笑)

 \( \mathrm{CaCO_3+2HCl\rightarrow CaCl_2+H_2O+CO_2}\)

この反応式から二酸化炭素は塩酸の半分のmol数だけ発生するということが分かります。
もちろん塩酸がなくなれば反応は終了です。
(グラフが横ばいになったとき。)
二酸化炭素は0.025mol発生して反応が終わっているので塩酸は0.050molあったということです。
この塩酸は25mlだったので1Lにすると40倍です。

 \( \mathrm{0.050\times 40=2.0(mol/L)}\)

二酸化炭素の質量ではないので計算は楽ですね。

まとめと対策

とにかく難しい計算はありません。
一部比例計算がややこしいところはありますが算数程度です。
ですが、1つの条件から次々に難しくなるという問題構成ではなく、1つひとつが独立した問題で、幅広い知識を問われているのは例年と同じです。
化学でも同じことがいえますが、センター対策としては問題集は基本的なものだけを全体を通して何度も繰り返すというのが最善でしょう。
1つの単元にこだわらず、すべての単元の基本をおさえるようにしておくと良いですね。

昨年度の化学基礎も同じようなものです。

⇒ センター試験「化学基礎」過去の問題(H28年度)

傾向を知ったら後は実践あるのみですよ。

⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説

基礎を幅広く問われるのはずっと変わりません。