エチレンもアセチレン同様不飽和結合があるので付加反応を起こしやすいです。エチレンからの生成物はたくさんありますので先ずはエチレンの作り方と置換された生成物とをいろいろとみておきましょう。アセチレンほどではありませんが反応性は高いです。

エチレンの作り方(製造方法)

エチレンはエタノールを濃硫酸とともに160℃~170℃に熱し、分子内で脱水させて生成します。

 \( \mathrm{C_2H_5OH \rightarrow CH_2=CH_2 +H_2O}\)

これは実験室での製法です。
工業的にはアセチレンと同様にナフサを熱分解して得ます。

エタノールは130℃くらいの温度だと2分子間で脱水して、
ジエチルエーテル( \( \mathrm{C_2H_5-O-C_2H_5}\) )になります。
温度によって生成物が変わることは覚えておきましょう。

エチレンの炭素と水素は同一平面上にある平面構造です。
炭素と炭素の二重結合が自由回転できないので幾何異性体が存在する物質が出てきます。

⇒ 異性体の種類 構造異性体と立体異性体(幾何異性体と光学異性体)

エチレンの反応といろいろな生成物

白金(ニッケルも使われます)を触媒として水素を付加させるとエタンとなります。

 \( \mathrm{CH_2=CH_2+H_2 \rightarrow C_2H_6}\)

塩化水素と反応してクロロエタンが生成します。

 \( \mathrm{CH_2=CH_2+HCl\rightarrow CH_3-CH_2Cl}\)

塩素を付加させると1,2-ジクロロエタンになります。

 \( \mathrm{C_2H_4+Cl_2\rightarrow CH_2Cl-CH_2Cl}\)

臭素とは常温で簡単に付加反応して1,2-ジブロモエタンになります。

 \( \mathrm{C_2H_4+Br_2\rightarrow CH_2Br-CH_2Br}\)

この反応が進むと赤褐色が無色に変わるので不飽和結合の検出に利用されます。
非常に重要なところなので覚えておいて損は無いです。

エチレンを付加重合(次々に繰り返し付加)させるとポリエチレンが生成します。

 \( n\mathrm{CH_2=CH_2 \rightarrow -(CH_2-CH_2)}_n-\)

この反応のように分子量の小さい単量体(モノマー)から分子量の大きい分子量の重合体(ポリマー)をつくる反応を「重合」といいます。この場合は付加反応によって重合が進むので「付加重合」ですね。

⇒ 高分子化合物の種類と反応(共重合と開環重合と縮合)と特徴 

ここで確認しておいて下さいね。

エチレンの生成方法のときエタノールを脱水しましたが、この反応は条件次第で逆にエチレンからエタノールが生成します。
リン酸か濃硫酸を触媒として加熱・加圧して水を付加するとエタノールを生じます。

 \( \mathrm{CH_2=CH_2+H_2O\rightarrow C_2H_5OH}\)

ここまでの反応は覚えておいた方がいいと思いますよ。

ところで、
エチレンなどの二重結合を含む化合物をアルケンといいますよね。
例えばプロピレンなどのアルケンはエチレンと同様の反応をします。
これはエチレンだからではなく、二重結合部分の反応性が似ているからということなのでまとめて考えるようにするといいでしょう。

このサイトは「化学が苦手な人向け」のものにしようということで始めたのですが、ここではちょっとだけ進んだ話をしておきます。
といっても大学の専門でしかやらないとかいうレベルではありませんので割と勉強熱心な人はすぐに覚えられます。笑

アルケンの酸化反応

エチレンとわずかにアルカリ性にした過マンガン酸カリウム水溶液とを反応させると、
2価のアルコールであるエチレングリコールが生じます。

 \(\mathrm{3CH_2=CH_2+2KMnO_4+4H_2O }\\ \\
\rightarrow \,\mathrm{3\color{red}{CH_2(OH)CH_2(OH)}+2MnO_2+2KOH}\)

わずかにアルカリ性にしているところがポイントです。
この場合は過マンガン酸カリウムの酸化力はそれほど強く働かないので、
二重結合の弱い結合( \(\mathrm{\pi}\) 結合)だけが切断されることになります。
その際に切れた結合の両方に同じ過マンガン酸の酸素が配位して、
その酸素に水素がひっついてグリコールになるのでシス付加と呼ばれます。

二重結合の2本の結合の内、
 弱い方の結合を「 \(\mathrm{\pi}\) 結合」といい、
 強い結合を「 \(\mathrm{\sigma}\) 」結合といいます。

今度は強い酸化です。

エチレンやプロピレンなどのアルケンにオゾン( \(\mathrm{O_3}\) )を作用させると、
オゾニドという不安定な状態を経て、
これに水を加えて加水分解するとアルケンの二重結合が切れて(オゾニドは環状なので開環して)アルデヒドやケトンのカルボニル化合物を生成します。
これが「オゾン分解」と呼ばれるものです。

 \(\mathrm{CH_2=CH_2 +O_3 \\ \\
\rightarrow } (\color{red}{オゾニド})\mathrm{\rightarrow +2H^+ \rightarrow 2HCHO+H_2O}\)

これはさらに反応が進行してカルボン酸(この場合はギ酸)になりますね。

他のアルケンでも同じです。

 \(\mathrm{R-CH=CH-R’+O_3 \\ \\
\,\color{red}{\rightarrow }\,\color{red}{\rightarrow }\,R-COOH+R’-COOH}\)

もう一つ、
先程の過マンガン酸カリウムをアルカリ性ではなくて、硫酸酸性の強い酸化作用をする状態でアルケンを加熱すると二重結合は開裂してケトンまたはカルボン酸になります。
上の例では二重結合の炭素には水素がついている反応でしたが、2つともアルキル基などの炭素がついている場合はケトンになります。

 \(\mathrm{R_1(R_2)C=C(R_3)R_4}\\ \\
\rightarrow \,\rightarrow \,\mathrm{R_1-\color{red}{CO}-R_2+R_3-\color{red}{CO}-R_4}\)

反応機構や細かい条件を知りたければ難しい参考書や大学の教科書等で勉強すれば良いです。

ただ、オゾン分解や強い酸化をすると二重結合は切れてカルボニルになる、と覚えておくだけでも少しは違いますよ。w

当然のことですが、二重結合が切れてアルデヒドやカルボン酸、またはケトンになった後の反応もまだまだ条件が変われば続きます。
アルデヒド基の検出方法などはこちらで復習しておいて下さい。

⇒ アルデヒド基の性質 銀鏡反応とフェーリング反応

アセチレンの誘導体としてエチレンが出てきます。

⇒ アセチレンの作り方と反応生成物のまとめ

ここもたくさんある有機化学反応(誘導体)の経路の1つの通過地点であることは忘れないで下さい。