気体分子は熱運動によってあらゆる方向に飛び衝突しています。この気体分子の運動の仕方や衝突による圧力と地球全体をおおう空気による大気圧の単位を説明しておきます。圧力には国際単位系の単位Pa(パスカル)を使いますので注意しておきましょう。

気体分子の運動

すべての気体分子は熱運動によって拡散します。
このことは基礎化学でも説明しましたので確認しておいてください。
ここでは気体分子の運動の速さについても見ていきます。

同じ温度でも気体分子の速さはすべてが同じではありません。
熱運動によっていろいろな方向へ飛び交ううちに、
分子同士が衝突し運動量を交換するので速度は絶えず変化しているのです。

分子の速さとその速さを持つ分子との関係をグラフにすると山型の曲線になります。
bunpu
(だいたいの図です。笑)

この分布を簡単に説明すると、平均速度の分子が最も多く存在し、極端にはやい分子や遅い分子の数は少なくなります。

温度が高くなると分子の持つ運動エネルギーの総和は大きくなります。
曲線が右にかたよると考えれば良いです。

また温度が高くなると気体分子の平均の速さは大きくなります。
山の頂点も右に移動すると考えれば良いですね。

ただ、同じ温度では気体の種類に関係なく平均の運動エネルギーは等しいので、
分子量の小さい気体ほど平均の速さは大きくなります。

これは運動エネルギー \(E\) と質量 \(m\) と速さ \( v\) の関係が、
 \( \displaystyle\color{red}{ E=\frac{1}{2}mv^2}\) なので、
平均速度は分子量の平方根に反比例することになります。

簡単に言えば、
 分子量が大きくなれば平均速度は小さくなる。
 分子量が小さくなれば平均速度は大きくなる。
ということです。

例えば、水素分子の分子量は2、酸素の分子量は32で、
分子量は酸素が水素の16倍なので平均速度は \(\sqrt{16}=4\) 倍水素の方が大きくなります。

気体の圧力と単位

気体分子は激しく熱運動していて、物体の表面に衝突すると力をおよぼします。
この気体のおよぼす力のことを気体の圧力といいます。

国際単位系(SI)では \(\mathrm {Pa}\)(パスカル)という単位で表されます。
  \(\mathrm {1Pa}\) は \(\mathrm {1m^2}\) の面積に1N(ニュートン)の力がはたらいたときの圧力です。
つまり、 \(\color{red}{\mathrm {1Pa}=1\mathrm {N/m^2}}\) です。

※ (読み飛ばして良いです。)
 \(\mathrm 1\mathrm {N}\) とは、1kgの質量をもつ物体に1メートル毎秒毎秒 (\(\mathrm {m/s^2}\)) の加速度を生じさせる力のことで、
 \( \mathrm 1\mathrm {N}=1\mathrm {kgm/s^2}\)
(「1キログラムメートル毎秒毎秒」と読みます。)

中学の理科を忘れている人がいるといけないので説明しておくと、
中学では重力加速度を \(\mathrm {10m/s^2}\) としていたので100gの物体にはたらく力を1Nとしていました。
正確には重力加速度が約 \(\mathrm {9.81m/s^2}\) なので1kgの質量にはたらく重量は少し違います。
ここは基礎物理を学ぶ人はしっかりおさえておいてください。

ついでに大気圧について簡単に説明しておきます。

大気圧の表し方

私たちが住んでいる地球の大地をおおっている大気による圧力を大気圧といいます。

表し方がいろいろありますのでまとめて覚えましょう。
海面上での大気圧の平均は \(\mathrm {1.013\times 10^5Pa}\) で、
これを標準大気圧といい、1気圧といいます。
\(\mathrm {1atm}\) とも表します。

水銀柱を利用して大気圧を測定したトリチェリーは、
 水銀が760mmの高さで大気圧と釣り合う
ことを発見しました。

水銀柱1mmで示す圧力を \(\mathrm {1mmHg}\)(1ミリメートル水銀柱)とすると、
 \(\mathrm {1atm=760mmHg}\) と定義されることになります。

さらに \(\mathrm {Pa}\) とつなげると、

 \(\large{\color{red}{\mathrm {1atm=760mmHg=1.013\times 10^5Pa=1013hPa}}}\)

となります。
 \(\mathrm {hPa}\) はヘクトパスカルと読みますが、
「ヘクト」は100を意味します。
 \( \mathrm {1.013\times 10^5Pa=101300Pa=1013hPa}\)
で、天気図ではこの \(\mathrm {hPa}\) が使われていますよね。
1013より大きい場合は高気圧、小さい場合は低気圧を意味しています。

気体分子の熱運動や拡散について
⇒ 物質(粒子)の拡散と熱運動と温度の種類(絶対温度とセルシウス温度)
確認しておきましょう。

次は蒸気圧曲線です。

⇒ 気液平衡における蒸気圧(飽和蒸気圧)と沸点と蒸気圧曲線

曲線の見方を理解すれば大丈夫です。