熱化学方程式の作り方はそれほど難しくはありません。反応式と方程式というだけで拒否感を持つ人が多いですが、反応物と生成物さえしっかり問題から読み取れば熱量は問題に与えられますのでちょっとした計算で求まります。後は発熱か吸熱かで符号を変えるだけです。

熱化学方程式

化学反応式の右辺に反応熱を加えて書き込み等号(=)で結んだ式を熱化学方程式といいます。
反応物と生成物の量的な関係と同時にエネルギーの出入りも知りたいときに利用されます。
普通化学反応式は「→」を使いますが熱化学方程式ではエネルギーの量的関係が左辺と右辺で等しいことを示すので等号を使います。
普通の化学反応式と違うのは示したい反応および生成物質「1mol分」のエネルギーを表すようにすることです。

化学反応では左辺と右辺という言い方はあまり使いません。
左辺には反応物を書くことが多いので左辺にある反応物をひっくるめて「反応系」、
右辺には生成物を書くことが多いので右辺にある生成物をひっくるめて「生成系」といいます。
熱化学方程式では「反応系のエネルギー」と「生成系のエネルギー」が等しいことを示しています。

熱化学方程式をつくるときの約束

熱化学方程式の作り方を見る前に書き方の約束を見ておきましょう。

注意点その1
先ず注意して欲しいのが、着目する物質量を1molとするということ。
反応式は普通なら整数係数にしますよね?

 \( \mathrm{2H_2+O_2 \rightarrow 2H_2O}\)

でも熱化学方程式では係数調整のため、分数係数を使ってもいいのです。

 \( \displaystyle \mathrm{H_2+\frac{1}{2}O_2 = H_2O+Q}\)

注意点その2
反応熱は温度によって変わるので、
25℃、\(\mathrm{1\times 10^5Pa}\)(熱化学の標準状態)での反応熱を、
(気体の標準状態ではありませんのでその点も注意が必要です。)
反応式の右に書きますが、発熱反応は「+」、吸熱反応は「-」の符号をつけ、
両辺を「=」(等号)で結ぶということ。

熱化学方程式では反応系のエネルギーと生成系のエネルギーとを必ず等しくするためです。
生成系のエネルギーが大きい場合は、生成系のエネルギーの方が小さいので、
余ったエネルギーを「+」と右辺に書き加えないと両辺のエネルギーが釣り合わなくなるからです。

注意点その3
反応物、生成物の状態を必要に応じて、
固体、液体、気体の区別を表記するということ。
 固体は「(固)」または「(s)」(solidのs)、
 液体は「(液)」または「(l)」(liquidのl)、
 気体は「(気)」または「(g)」(gasのg)と表します。
また水溶液の場合は「(aq)」(aqueous solutionのaq)と表しますが、
多量の水を表す場合は「aq」と(カッコ)をつけずに表します。
紛らわしいですがちょっと注意しておきましょう。笑

例えばですが、酸素や水素は25℃、\(\mathrm{1\times 10^5Pa}\) では完全に気体と判断出来ますが、水は気体と液体と混じった状態も考えられますのではっきりと区別するために表記するのです。

さて、この約束ごとさえ抑えておけば方程式自体は簡単に作れます。

熱化学方程式の作り方

 ①反応系と生成系の係数を合わせて書き出す。
 ②着目している物質の係数を1にするため全体の係数を調整する。
 ③反応熱を発熱なら「+」吸熱なら「-」で右辺に書き込んで等号で結ぶ。

それだけです。

例えば水素1molは完全燃焼して水になりますが、そのとき発生する熱は268kJです。
これは水素の燃焼熱で発熱反応です。

単に水素と酸素が反応した化学式は

 \( \mathrm{2H_2+O_2 \rightarrow 2H_2O}\)

これは①の段階ですね。
次に水素の係数を1にすると

 \( \displaystyle \mathrm{H_2+\frac{1}{2}O_2 \rightarrow H_2O(l)}\)

これが②の段階です。
最後に反応熱を右辺に書いて等号をつけると、

 \(\displaystyle \mathrm{H_2+\frac{1}{2}O_2 \color{red}{=} H_2O(l)+268kJ}\)

と水素の燃焼熱を表した熱化学方程式のできあがりです。

状態変化を表す融解や蒸発も熱化学方程式で表すことができます。
実は反応熱の1つとしてあげた「溶解熱」も化学反応とは言いにくいのですが、
水和すると化学的に変化があるとして広い範囲で化学変化と見ているので反応熱といっているのです。

融解熱

固体1molが融解するときに吸収する熱量を融解熱といいます。
例えば氷が水になるときの吸収エネルギーです。
吸収したエネルギーで固体から液体へ動きやすい状態になるので吸熱ですね。

 \( \mathrm{H_2O(s)=H_2O(l)-6.0kJ}\)

蒸発熱

液体1molが蒸発するときに吸収する熱量を蒸発熱といいます。
例えば、水が水蒸気になるときに吸収エネルギーです。
これも熱を吸収しますね。

 \( \mathrm{H_2O(l)=H_2O(g)-44kJ}\)

蒸発熱は測定する温度により値が違ってきますので、
熱化学の標準状態である25℃、\(\mathrm{1\times 10^5Pa}\) での値で表すのが普通です。

反応熱と状態変化の熱化学方程式の作り方は同じです。

⇒ 反応熱の種類と反応例を見るときの注意点

で反応熱の種類の復習と、いくつか例題は見ておいた方が良いですよ。

熱化学方程式が与えられて、反応熱の種類を聞かれる問題は基本です。