凝固点降下度は溶媒と溶液との凝固点の差と考えて良いですがこの小さな温度変化をどうやって測定するのか、またそれをグラフにした冷却曲線について良く問題にされるので過冷却とは何かについても説明しておきます。

凝固点降下度

凝固点は純溶媒と溶質が溶けた溶液とでは違ってきます。
例えば、\(\mathrm{1.0\times 10^5Pa}\)においては純水は0℃で凝固しますが、海水はおよそ-2℃くらいまで凝固しません。
このように溶液の凝固点が純溶媒より凝固点が下がることを凝固点降下といい、その差を凝固点降下度といいます。

凝固点降下度(\(\Delta t\))はは沸点上昇と同じように溶けている溶質の質量モル濃度\(m\)に比例します。

 \(\color{red}{\Delta t=K_f\times m}\)


\(K_f\)はモル凝固点降下と呼ばれるもので溶媒によって決まった定数です。
単位は \(\mathrm{\color{red}{K・kg/mol}}\) で1kgの溶媒に1モルの溶質が溶けたときの凝固点降下度を示しています。
例えば水のモル凝固点降下は1.85で、ベンゼンだと5.12と決まっている数値です。
※※
この値は沸点上昇度とは違った値ですので注意してください。

ほとんどが水溶液についての問題なので、水の場合の定数は覚えていても良い数字ですね。
この定数は問題に与えられますので覚える必要はありませんが、意味は理解しておかないと使えませんよ。
1kgの溶媒に非電荷質である溶質が1mol溶けたときの凝固点降下です。

冷却曲線

例えばベンゼンを試験管に入れ、周りを氷水で均一になるようにかき混ぜながら冷やす冷却装置と温度計をセットした器具を用いて一定時間ごとの温度を測定します。
このとき温度計はベックマン温度計という普通の温度計より目盛の小さな温度計を用います。

ベックマン温度計は0.01K毎の目盛がついています。

このときの温度変化をグラフにしたものがベンゼンだけの純溶媒の冷却曲線です。

次に試験管を取り出し溶媒を完全に溶解させ、正確に質量を測定した溶質を加えて全部を溶かします。
この溶液をまた冷却装置を用いて冷却し冷却曲線を描きます。
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この冷却曲線から凝固点を読み取りますが、注意点があります。

 凝固点はグラフの直線部分を左側の冷却曲線に延長した交点(AとA’)となります。

純溶媒の凝固点は、水平になった温度となりますが、
溶液の凝固点は、傾いた直線部分と曲がりながら温度が降下しているところの交点となります。

この純溶媒と溶液の凝固点の差が凝固点降下度(\(\Delta t\))となるのです。

凝固点の読み取りと凝固点降下度の求め方はグラフからで良いので凝固点だけはどこを示すのか覚えておきましょう。

ただ、冷却曲線っておかしな動きしているでしょう?
なのでここでは少し発展させてグラフの挙動を説明しておきます。
分からなければ飛ばして良いので軽く目を通す程度で良いですからね。

過冷却とは

液体を冷やすと時間とともに一定の割合で降下して凝固します。
しかし、普通凝固点を超えて降下してもまだ液体の状態でいることがあります。
この本当なら凝固している凝固点以下まで液体でいる状態を過冷却といいます。
(グラフのA→B点までの下降部分です。)

これは何故起こるかというと、凝固するということは結晶化するということで、結晶を構成するには結晶核と呼ばれる核になる部分が必要だからです。
結晶核を構成するには規則的な分子の配列が必要となるのですが、液体ではきれいに分子は並んでいません。
ばらばらの状態なので、結晶ができるきれいな配列ができるまで冷却が過剰に進み過冷却が起こるということなのです。
過冷却をできるだけ防ぐためには、時間をかけてゆっくり冷やすか、結晶核を加えるか、ちょっと振動させて核ができやすくすることです。
結晶ができはじめると一気に結晶化するので凝固熱により温度は上昇します。
(グラフのB→C部分)

 純溶媒の冷却曲線の直線部分について 

これは沸点や融点と同じことで、凝固する分子と液体でいる分子とが熱交換することで一定となります。
溶媒が完全に凝固するまで一定となり、すべてが凝固したらさらに温度は下がっていきます。
(グラフのD以降)

 溶液の冷却曲線の直線部分について 

溶液が凝固するときは溶媒だけが先に凝固します。
すると溶液の溶媒が減り、濃度は大きくなるということで凝固点降下も大きくなるので右下がりのグラフになるのです。
(グラフのC→D’の部分)
このことから本当の凝固点はこの直線部分の延長と左側の降下部分との交点として求められるというわけです。

ちょっとややこしいところまで書いておきましたが、
冷却曲線の読み取り方だけでも覚えておいてくださいね。

⇒ 希薄溶液の蒸気圧降下と沸点上昇と凝固点降下

基本はここからです。復習しておいてくださいね。

グラフの読み取り方が理解できているかの問題は良く出ます。
冷却曲線から凝固点降下度を読み取る練習はしておきましょう。