アセチレン(化学式C2H2)はさまざまな反応をします。もちろん生成物も変わってきます。不飽和炭化水素なので付加反応が起こりやすいですが、付加した後は置換反応も脱離反応も起こりますので、作り方といろいろと出てくる生成物について反応をまとめておきます。

アセチレンの作り方

アセチレン( \(\mathrm{C_2H_2}\,,\,\mathrm{H-C\equiv C-H}\) )は三重結合をもっているので反応性が高いです。
そのため生成物は多いですが、先ずはアセチレンの作り方から見ておきましょう。

アセチレンはカーバイドに水を加えてつくります。
カーバイドは、炭化カルシウム( \(\mathrm{CaC_2}\) )のことです。
このときの反応式は

 \( \mathrm{CaC_2\,+\,2H_2O \,\rightarrow \,Ca(OH)_2\,+\,C_2H_2}\)

また工業的にはメタンやナフサを熱分解(高温に)して得ます。

 \( \mathrm{2CH_4 \,\rightarrow \,C_2H_2\,+\,3H_2}\)

「ナフサ」は原油から取れるガソリンと同じようなものです。

アセチレンの構造は直線構造ですよ。

アセチレンから生成する物質

アセチレンの付加反応

白金触媒の存在下で水素を付加させるとエチレンになり

 \(\mathrm{C_2H_2 \,+\,H_2 \,\rightarrow \,C_2H_4}\) ( \(\mathrm{H_2C=CH_2}\) )

さらに水素を付加させるとエタンになります。

 \(\mathrm{C_2H_4 \,+\,H_2 \,\rightarrow \,C_2H_6}\) ( \(\mathrm{H_3C-CH_3}\) )

触媒はニッケル( \(\mathrm{Ni}\) )や粉末の鉛( \(\mathrm{Pb}\) )でも反応します。

臭素とは触媒無しでも反応します。

 \( \mathrm{C_2H_2\,+\,Br_2 \,\rightarrow \, CHBr=CHBr}\)
(1,2-ジブロモエチレン)
さらにこの反応は進むことができます。

 \( \mathrm{CHBr=CHBr \,\rightarrow \,CBr_2-CHBr_2}\)
(1,1,2,2-テトラブロモエタン)

硫酸水銀のような水銀塩存在下で水と反応させると水が付加して

 \( \mathrm{C_2H_2 \,+\,H_2O \,\rightarrow \,(H_2C=CH(OH))}\)

とビニルアルコールになりますがこれは非常に不安定なのですぐに反応が進みます。

 \( \mathrm{(H_2C=CH(OH)) \,\rightarrow \,CH_3CHO}\)

このように水素が移動して少しは安定なアセトアルデヒドになります。
アセトアルデヒドも反応性は高いですがビニルアルコールよりは安定だということです。

ビニルアルコールを( )と表しているのは物質としては存在しないからです。
ビニルアルコールからアセトアルデヒドに変化するときの水素転移についての反応機構は大学の専門に進んでから学んで下さい。w

塩化水素を付加させると塩化ビニルが生じます。

 \( \mathrm{C_2H_2\,+\,HCl \,\rightarrow \,CH_2=CHCl}\)

酢酸を付加させると酢酸ビニルが生成します。

 \( \mathrm{C_2H_2\,+\,CH_3COOH \,\rightarrow \,CH_2=CH(OCOCH_3)}\)

シアン化水素を付加させるとアクリロニトリルが生成します。

 \( \mathrm{C_2H_2\,+\,HCN \,\rightarrow \,CH_2=CHCN}\)

「アクリロニトリル」という名前は覚えにくいですよね?
「-CN」がついた有機化合物をニトリルと呼ぶのでたまにききますが、「アクリロ」ってほとんど聞かないです。
ただ、この物質は良く出てくるので覚えておきましょうね。w

アセチレンの重合体

触媒を用いて加熱すると3分子重合体のベンゼンが生成します。

 \( \mathrm{3C_2H_2 \,\rightarrow \,C_6H_6}\)

⇒ 芳香族炭化水素 ベンゼンの構造と構造異性体

2分子で重合するとビニルアセチレンになります。

 \( \mathrm{2H-C\equiv C-H \,\rightarrow \,CH_2=CH-C\equiv C-H}\)

さらに水素を付加すると1,3ブタジエンになります。

 \( \mathrm{CH_2=CH-C\equiv C-H \,\rightarrow \,CH_2=CH-CH=CH_2}\)

アセチレン自体は炭化水素なので当然燃焼します。
でも、(アセチレンが完全燃焼できるほど酸素が十分ではない)空気中での燃焼だと不完全燃焼となって大量のススが出ます。
ところが十分に酸素を与えながら(空気を送りながら)完全燃焼させると3000℃くらいの「酸素アセチレン炎」が得られます。
このとき、空気を送りながら燃やすとオレンジ色の炎になります。
さらに、酸素の量を多くすると青白い炎になります。
これは見たことあるか分からないんだけど溶接のときのゴーって燃えているあの炎です。
金属の溶接ができる炎だし、金属を切断することもできるほどの高温な燃焼です。

以上のようにアセチレンの反応はいろいろあります。
もちろんアセチレンからできた生成物もこの後いろいろな反応をします。

でも、最初がなければ後はありません。
なんでもそうですけど、1つひとつつなげていくしかないんです。

アセチレンの次はエチレンです。

⇒ エチレンの作り方(製造方法)と反応生成物まとめ

高校の有機化学はスタート物質が少ない上に後の反応もそれほど多くありませんので、
少し努力して覚えればあんまり考えなくても何とかなりますよ。w