2016年センター試験「化学」本試験の問題と解説と傾向を見てみます。
1年分の過去問を見たからといって対策になるわけではありません。
最後に数年分を見られるように追加してありますので、目を通し傾向をみて対策してみてください。
化学基礎と違い配点も倍あり問題が多くなるので解説は少なめにさくさく進めます。
2016年(平成28年)センター試験化学の問題
2016年は第1問~第5問は必答問題で、第6問と第7問のどちらかを選択する問題形式でした。
これはずっと続いていますが、共通テストでは選択問題はなくなりそうです。
問題は入試センターで公開してくれていました。
2016年(平成28年)センター試験化学の解説
第1問の解説
問1-電子配置
原子番号20までの周期表とイオンになるときの電子の動きは知っておきましょう。
原子番号19のカリウム(\(\mathrm{K}\))は電子1つ放出して陽イオンになり原子番号18のアルゴン(\(\mathrm{Ne}\))の電子配置と同じになります。
問2-面心立方格子
面心立方格子は立方体の各頂点と面上に1つひとつの球の中心があります。
図に書き込めばすぐに答えは分かります。
ながめていても答えは見つかりませんよ。
手を動かして書き込んで見る。それが大切です。
問3-蒸気圧の計算問題
水上置換された気体は水蒸気も混じっています。与えられた圧力から水蒸気圧を引けば集めた気体の圧力なので引くことを忘れずにすれば問題ありません。計算は慣れるしかありません。いくつかといわず慣れるまで100でも200でも演習してください。
問4-冷却曲線の見方。
凝固が始まるのはBではなく、過冷却が進んで曲線が上がり始める時なので違いますね。
問5-原子量を求める問題
\(\,\mathrm{1mol}\,\)の原子は\(\mathrm{6.0\times 10^{23}}\)個なので、
\( \displaystyle \mathrm{7.3\times \frac{6.0\times 10^{23}}{8.3\times 10^{22}}}\)
の比例計算をするだけです。
密度は関係なくて\(\mathrm{8.3\times 10^{22}}\)個は7.3g。
それが問題になっているだけです。
問6-浸透圧問題
純水がスクロース水溶液側に移動するのでスクロース側の液面が増加します。
第1問は問6までありますがつながりはなく小問集合形式です。分野でかたよりがなく、広く基本的なことが聞かれています。
第2問の解説
問1-熱化学方程式
アセチレン、ベンゼンの分子式が分からないと求められませんが問題に分子式は書かれています。笑
\( \displaystyle \mathrm{C_2H_2+\frac{5}{2}O_2=2CO_2+H_2O+1300kJ}\)
\( \displaystyle \mathrm{C_6H_6+\frac{15}{2}O_2=6CO_2+3H_2O+3268kJ}\)
の2つの発熱反応から酸素と二酸化炭素と水を消去すれば求まります。同時に消えることになっていますから難しく考えなくて良いですよ。笑
問2-活性化エネルギー
発熱するということは正反応(左辺→右辺の反応)の活性化エネルギーは逆反応の活性化エネルギーより小さいですよ。
問3-完全燃焼と発生する二酸化炭素の物質量
同じ熱量を発生させた場合なので単純ではありません。
燃焼熱は物質1molが燃焼したときの熱量なので熱化学方程式から、それぞれ二酸化炭素の発生する物質量と発熱量は、
メタン(\(\mathrm{CH_4}\))から1mol、890kJ。
エタン(\(\mathrm{C_2H_6}\))から2mol、1560kJ。
エチレン(\(\mathrm{C_2H_4}\))から2mol、1410kJ。
プロパン(\(\mathrm{C_3H_8}\))から3mol、2220kJ。
となります。
これを同じ発熱量1kJに換算すると、発生する二酸化炭素は
\( \displaystyle \mathrm{\frac{1}{890}:\frac{2}{1560}:\frac{2}{1410}:\frac{3}{2220}}\\ \\
\displaystyle =\mathrm{\frac{1}{890}:\frac{1}{780}:\frac{1}{705}:\frac{1}{740}}\)
と分子をそろえると分母が小さい方が二酸化炭素の発生量は大きくなります。
\( \mathrm{C_2H_4}\,>\,\mathrm{C_3H_8}\,>\,\mathrm{C_2H_6}\,>\,\mathrm{CH_4}\)
逆数の比になることが分かればそれぞれの燃焼熱を発生する二酸化炭素のモル数で割って比較しても構いませんよ。
問4-電離平衡
酢酸の電離度が与えられていませんが、「十分小さい」と書かれてあることからも分かるように、塩酸(塩化水素の水溶液で強酸)の電離度は1として見て良いので混合後の水素イオン濃度は塩酸のモル濃度と考えて構わないということですね。
電離定数から計算すれば酢酸イオンのモル濃度が分かります。
この問題のように必要な数値、定数は与えられますので電離定数の式を覚えておけばいいということです。
問5-化学平衡(ルシャトリエの原理)
結果のグラフから温度を上げると反応は左から右に進んでいることになるので吸熱反応です。
さらに左辺の減り方と右辺の増え方が2:1になっていることも読み取れます。
長々と書いておりますが聞いているのはそれだけです。
問6-酸化還元の計算問題
物質Aは特定する必要はありませんね。比例、反比例の計算できますか?という問題です。
2つの酸化剤は物質Aから同じ量だけ電子を受け取り還元されます。電子の移動数が還元の比率になりますよね。
問題にある通り、同じ濃度だと過マンガン酸カリウムは5、二クロム酸カリウムは6の比率で電子を受け取ります。
ここでは酸化剤の濃度が2:1なので、同じ量の酸化剤が物質Aから受け取れる電子の比は5:3となります。
酸化剤の量は、物質Aを同じ量酸化するにはこの比の値の逆数分必要となりますので
\( \displaystyle \mathrm{\frac{3}{5}}=0.6\)
ざっくりいってしまうと二クロム酸カリウムの方が多量に必要だということです。
濃度が半分なので受け取れる電子の比が5:3と二クロム酸カリウムの方が少ないですからね。
第3問の解説
ここは無機化学の分野で、物質ごとの性質を覚えておかないと答えられない問題も出てきます。
問1-水素
水素といえば軽い気体、還元する、などが一般ですが、ハーバーボッシュ法や燃料電池でも使われますね。
ただ、酸化亜鉛と塩化水素からは水素は発生しません。
\( \mathrm{ZnO+2HCl \rightarrow ZnCl_2+H_2O}\)
問2-金属単体と合金
下線部に注意しておけば問題ありません。
カリウムは金属ですがアルカリ金属は柔らかい軽金属です。
水素よりイオン化傾向が小さい金属は塩酸とは反応しませんが、酸化力の強い濃硫酸や濃硝酸とは反応します。
不動態となる反応は酸化物が被膜となり反応が止まります。
水素吸蔵合金とは大量に水素を吸収し貯蔵できる合金のことで、電池の負極材料に使われます。
イオン化傾向は覚えておいた方が良いですね。
亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きいです。
問3-ナトリウム
塩化ナトリウムを融解塩電解(高温にして電気分解)するとナトリウム単体が陰極に析出します。
化合物Aは炭酸ナトリウム(\(\mathrm{Na_2CO_3}\))の前の物質と考えれば、
炭酸水素ナトリウム(\(\mathrm{NaHCO_3}\))しか考えられませんね。笑
加熱すれば炭酸ナトリウム(\(\mathrm{Na_2CO_3}\))になります。
もう一つ計算問題がありました。
10kgの炭酸水素ナトリウムから最大何kgの炭酸ナトリウムがえられるか?
\( \mathrm{2NaHCO_3 \rightarrow Na_2CO_3+H_2O+CO_2}\)
が書ければ比例計算するだけですね。
式量は \(\mathrm{NaHCO_3=84} , \mathrm{Na_2CO_3=106}\) なので
\(\mathrm{2NaHCO_3=168}\) から \(\mathrm{Na_2CO_3=106}\) が得られます。
では10kgの \(\mathrm{NaHCO_3}\) からはいくらか?単なる比例計算です。
\( \displaystyle \mathrm{10\times \frac{106}{168}}\)
を計算するだけなので「6.3」を選べば正解です。
問4-元素の周期表と化合物
誤りを含むものを選ぶので消去法でもいいですよ。分かるものから除外して行くのです。
ア:ホウ素(\(\mathrm{B}\))、イ:炭素(\(\mathrm{C}\))、ウ:マグネシウム(\(\mathrm{Mg}\))
エ:アルミニウム(\(\mathrm{Al}\))、オ:ケイ素(\(\mathrm{Si}\))、カ:リン(\(\mathrm{P}\))
キ:硫黄(\(\mathrm{S}\))、ク:塩素(\(\mathrm{Cl}\)、ケ:カルシウム(\(\mathrm{Ca}\))
ここまでは20までの元素で覚えておいた方が良い元素です。周期表に書き込むと分かり易くなります。
コ:臭素(\(\mathrm{Br}\))、サ:ヨウ素(\(\mathrm{I}\))
はハロゲンなので族として覚えておくと便利な元素です。
問題の中で誤りがあるものは硫酸塩の溶解度です。
\(\mathrm{MaSO_4}\) は水に溶けますが、\(\mathrm{CaSO_4}\) は溶けにくい塩です。
問5-金属イオンの分類(系統分析)
\(\mathrm{Ag^+}\) は希塩酸ですぐに白い沈澱を生じ、\(\mathrm{Cu^{2+}}\) は硫化水素を通じることで黒色沈澱を生じるのでこれらの操作から始まることが多いですが、イオンにありませんので飛ばしてアンモニア水を加える段階からが示されています。笑
\( \mathrm{Al^{3+},Ba^{2+},Fe^{3+},Zn^{2+}}\)
にアンモニア水を(多量に)加えると、
\(\mathrm{Fe(OH)_3}\)(赤褐色)\(\mathrm{Al(OH)_3}\)(白色)の沈澱が生じます。
\(\mathrm{Ba^{2+},Zn^{2+}}\) はろ液に残ります。
さらに、
\(\mathrm{Fe(OH)_3}\) と \(\mathrm{Al(OH)_3}\) の沈澱に、
\(\mathrm{NaOH}\) 水溶液を「過剰に」加えると
\(\mathrm{Al(OH)_3}\) は \(\mathrm{[Al(OH)_4]^-}\) となり溶けます。
さて、一方のろ液(\(\mathrm{Ba^{2+},Zn^{2+}}\))ですが、
アンモニアで塩基性になった \(\mathrm{Zn^{2+}}\) は、
硫化水素(\(\mathrm{H_2S}\))を通じると \(\mathrm{ZnS}\) 白色沈澱となります。
(酸性下では沈澱は生じません。)
残ったろ液が \(\mathrm{Ba^{2+}}\) ですね。(問題に書いてあった。笑)
ということで間違いは操作cで硫化水素(\(\mathrm{H_2S}\))を加える前に酸性にしておくというところです。
問6-質量パーセント濃度
ミョウバンは化学式が与えられているのですが
\( \mathrm{FeK(SO_4)_2+2BaCl_2 \rightarrow 2BaSO_4+FeCl_3+KCl}\)
から \(\mathrm{FeK(SO_4)_2:BaSO_4=1:2}\) のモル比だと気がつくかどうかですね。
式量は \(\mathrm{BaSO_4=233}\) なので\(\,\mathrm{4.66\,g}\,\)は\(\,\mathrm{0.02\,mol}\,\)です。
するともとのミョウバン中の \(\mathrm{FeK(SO_4)_2\cdot 12H_2O}\) (式量=503) の質量は
\( \mathrm{503\times 0.01=5.03g}\)
これから質量パーセントはもとのミョウバンが5.40gだったので
\(\displaystyle \mathrm{\frac{5.03}{5.40}\times 100}\) から「93%」
有効数字はあまり考えず計算していますが、センターでは十分です。w
ここまでが第1問~第3問となります。
配点にして69点分あります。7割近いですよね。
どのような問題か?
計算が複雑なのではなく理論化学分野、無機化学分野、と化学基礎同様広範囲から出題されているということです。
第4問以降は別に解説します。
⇒ センター試験化学の過去問(2016)解説と対策方法その2
これを見ても分かるとおり、有機化学分野と選択問題なのでやはり出題範囲にかたよりがない、というのが特徴です。
⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説
先ずは基本を幅広くおさえることと、理論的に理解するには高校生には厳しいところもあるので、暗記すべきところはしっかり暗記して、
高得点を狙うなら計算を要領よく処理しないと時間的にも内容的にも厳しくなりますね。