両性元素とはどういう性質を持つ元素をいうのか分かりますか?両性酸化物との違いと両性元素の化合物の性質と共に性質を説明しておきます。特にアルミニウムと亜鉛は試験に良く出ますので覚えておきましょう。両性水酸化物も同様ですね。
両性元素
単体が酸の水溶液にも強塩基の水溶液にも反応して、それぞれの塩をつくる元素を「両性元素」といいます。
周期表の非金属元素との境界付近にある
アルミニウム( \(\mathrm{Al}\) )
亜鉛( \(\mathrm{Zn}\) )
スズ( \(\mathrm{Sn}\) )
鉛( \(\mathrm{Pb}\) )
などが両性元素になります。
例えばアルミニウムは
\( \mathrm{2Al+6HCl\rightarrow 2AlCl_3+3H_2\uparrow}\)
\( \mathrm{2Al+2NaOH+6H_2O\rightarrow 2Na[Al(OH)_4]+3H_2\uparrow}\)
のように酸とも強塩基とも反応して塩をつくります。
\(\mathrm{Na[Al(OH)_4]}\) :テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウム
ところで両性元素と似た用語で「両性酸化物」というのがあります。
これは酸とも塩基とも反応する<酸化物>のことでアルミニウムや亜鉛などの酸化物があります。
「両性水酸化物」という物質も酸とも強塩基とも反応する<水酸化物>です。
元素そのものをいう場合「両性元素」ということですね。
具体的に元素別に見ていきましょう。
アルミニウム
単体は原料鉱石のボーキサイトを精製して得られる酸化アルミニウムを氷晶石とともに電解塩融解して得ます。
※
ボーキサイトの主成分は酸化アルミニウムの水和物です。
氷晶石は \(\mathrm{Na_3AlF_6}\) ですが覚えなくても良いです。w
電解塩融解というのは加熱・融解して行う電気分解のことです。
アルミニウムの単体は銀白色の柔らかい軽金属で、密度が他の金属に比べ小さいので非常に軽く、電気を通すので送電線などに使われます。
※
アルミニウムと銅やマグネシウムを混ぜた合金をジュラルミンといいますが軽くて丈夫なので飛行機の機体に使われることが多いですね。
空気中では表面が酸化されて皮膜をつくる不動態となるので内部までは酸化されません。
酸化アルミニウム
ボーキサイトの精製でも得られますが、
アルミニウム単体を空気中で強熱すると光と熱を発生し激しく燃焼することでできます。
\( \mathrm{4Al+3O_2\rightarrow 2Al_2O_3}\)
この酸化アルミニウムは「アルミナ」と呼ばれる物質で両性酸化物です。
\( \mathrm{Al_2O_3+6HCl\rightarrow 2AlCl_3\downarrow+3H_2O}\)
\( \mathrm{Al_2O_3+2NaOH+3H_2O\rightarrow 2Na[Al(OH)_4]}\)
※
アルミニウムの表面を酸化させて内部を保護するように不動態化させたものを「アルマイト」といいます。
水酸化アルミニウム
アルミニウムイオン \(\mathrm{Al^{3+}}\) を含む水溶液に塩基の水溶液を加えると水酸化アルミニウムが白色のゲル状の沈澱として生成します。
\( \mathrm{Al^{3+}+3OH^-\rightarrow Al(OH)_3\downarrow}\)
水酸化アルミニウムは両性水酸化物で酸にも強塩基にも反応して溶けます。
\( \mathrm{Al(OH)_3+3HCl\rightarrow AlCl_3\downarrow +3H_2O}\)
\( \mathrm{Al(OH)_3+NaOH\rightarrow Na[Al(OH)_4]}\)
複塩とは
硫酸アルミニウムと硫酸カリウムの混合水溶液を濃縮(または冷却)すると、無色透明な正八面体をした結晶ができます。これがミョウバンです。
\(\mathrm{AlK(SO_4)_2\cdot 12H_2O}\) : 硫酸カリウムアルミニウム十二水和物
このよう2種類以上の塩が一定の割合で結合した塩を複塩といいます。
もう一つ、亜鉛の化合物も良く出てくるので説明しておきます。
亜鉛
亜鉛の単体は、青みを帯びた白色金属で比較的融点は低いです。鉄の表面を亜鉛で覆った(いわゆる「めっき」)ものを「トタン」といいます。
亜鉛も両性元素で酸、強塩基の両方と反応し水素を発生します。
\( \mathrm{Zn+2HCl\rightarrow ZnCl_2+H_2\uparrow}\)
\( \mathrm{Zn+2NaOH+2H_2O\rightarrow Na_2[Zn(OH)_4]+H_2\uparrow}\)
※
\(\mathrm{Na_2[Zn(OH)_4]}\) : テトラヒドロキシド亜鉛(Ⅱ)酸ナトリウム
亜鉛の化合物
「酸化亜鉛」は白色の粉末で水には溶けません。
両性酸化物で酸、強塩基両方の水溶液に溶けます。
\( \mathrm{ZnO+2HCl\rightarrow ZnCl_2+H_2O}\)
\( \mathrm{ZnO+2NaOH+H_2O\rightarrow Na_2[Zn(OH)_4]}\)
「水酸化亜鉛」は亜鉛イオン \(\mathrm{Zn^{2+}}\) を含む水溶液に塩基性水溶液を加えると白色のゲル状沈澱として生成します。
\( \mathrm{Zn^{2+}+2OH^-\rightarrow Zn(OH)_2}\)
両性水酸化物で酸、強塩基の両方の水溶液と反応して溶けます。
\( \mathrm{Zn(OH)_2+2HCl\rightarrow ZnCl_2+2H_2O}\)
\( \mathrm{Zn(OH)_2+2NaOH\rightarrow Na_2[Zn(OH)_4]}\)
弱塩基ですがアンモニア水を過剰に加えると錯イオンをつくって溶けます。
\( \mathrm{Zn(OH)_2+4NH_3\rightarrow Zn[(NH_3)]_4^{2+}}\)
錯イオンについては別に説明しますが、両性元素の中でアンモニアの錯イオンをつくるのは亜鉛だけです。
※
\(\mathrm{Zn[(NH_3)]_4^{2+}}\) : テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン
両性元素にはスズと鉛もありますが、
(両性元素は「アルミ」「あえん」「スズ」「鉛」で「『ああすんなり』と両刀の両性元素」)
単体と化合物を簡単にまとめて終わりにします。w
(「系統分析」でまた出てきます。)
スズ
単体は銀白色で融点は比較的低いです。
鉄の表面をスズでめっきしたものが「ブリキ」です。
両性元素ですので酸、強塩基の水溶液に溶けて水素を発生します。
スズは酸化数が+2と+4の化合物をつくれますが、+4の酸化数の方が安定なので、塩化スズ(Ⅱ)は強い還元性を示します。
鉛
単体は青灰色の金属で柔らかく,融点は比較的低いので加工しやすいですが密度は大きいです。
両性元素なので酸、強塩基と反応して水素を発生しますが、酸のうち、硝酸には溶けますが、希塩酸や希硫酸とは鉛の表面に薄い塩の膜を形成しすぐに反応が止まります。
鉛は酸化数が+2と+4の化合物をつくれますが、スズとは逆に+2の方が安定なので、黒褐色の酸化鉛(Ⅳ)には酸化作用があります。
鉛の化合物は水に溶けにくいものが多くいずれも有毒なので取り扱う際には十分注意して下さい。
クロム酸鉛(Ⅱ)は珍しい黄色の沈澱なので、\(\mathrm{Pb^{2+}}\) の検出に用いられます。
両性元素については以上です。
アルカリ金属
⇒ アルカリ金属単体の性質と化合物の製法『アンモニアソーダ法』
アルカリ土類金属
と金属は覚える事が多いですのでしっかり復習しておきましょう。
覚えるのはあなた自身です。笑