気体についてボイルやシャルルの法則や気体の状態方程式を見てきました。ここでは理想気体とは何か?実在気体とは何か?その違い何なのか?どのようなときに理想気体と実在気体は大きな違いが出てくるのか見ておきましょう。

理想気体と実在気体

気体の状態方程式 \(\mathrm{PV}=n\mathrm{RT}\) に完全にしたがう気体を理想気体といいます。
これは仮想の気体を意味しています。
逆に、実際に存在している気体を実在気体といいます。

何が違うのか説明しておきます。

気体の物質量を一定に保ちながらという条件の下で、
気体の状態方程式では温度を一定にすると右辺は一定になるので、
\(\mathrm{PV=\color{red}{c}}\)(一定)
圧力を限りなく大きくすると体積は限りなく0に近づきます。
これがボイルの法則でした。

また、圧力を一定にしている条件では、
\(\mathrm{V}=a\mathrm{T}\)(\(a\) は比例定数)
温度を限りなく低くすると体積は限りなく0に近づきます。
これがシャルルの法則です。

ところが実際に存在する気体では、
圧力をものすごく大きくしても、
温度をものすごく低温にしても、
体積は0にはなりません。

これは実際の気体では気体分子そのものに大きさがあり、
温度変化に対して液体や固体に状態変化するという現実があるからです。
このように気体の状態方程式にあてはまらない気体を実在気体というのです。

これに対して、
気体分子の大きさや状態変化のないものと仮定した気体を理想気体といいます。
気体の状態方程式に完全にしたがう気体のことですね。

実在気体と理想気体の違い

上に書いた事から実在気体と理想気体の違いをまとめます。

実在気体に追加するべき理想気体の条件

分子自身の大きさは考えない
(体積はもたないけど質量は存在する)
分子間力ははたらかない

この2つの条件が実在気体に加えられた場合状態方程式にしたがう理想気体といいます。

普通に書いている気体の状態方程式は「理想気体の状態方程式」です。
実在気体で広い範囲の条件を満たす方程式で、
「ファンデルワールスの状態方程式(実在気体の状態方程式)」
というのもあるのですがここでは省略しておきます。

実在気体が理想気体としてあつかわれる条件

実在気体では低温、高圧になるほど理想気体からずれてきます。
逆に高温、低圧になるほど理想気体に近づきます。
つまり、
高温にすることで分子の熱運動が激しくなり、
分子間力の影響がなるので理想気体に近づく。
低圧にすると分子どうしの衝突が減り、
分子自身の大きさを考えなくて良くなるので理想気体に近づく。
ということです。

理想気体の状態方程式は、
ある程度の温度とある程度の体積をもっている気体に使えるものであるということですね。

簡単にですがまとめておきました。

高温で、低圧の場合、理想気体と実在気体は同等の扱いをして良い。
ということですから、
問題に「標準状態」などとあれば理想気体として考えて構いませんよ。

「あれ、標準状態って何だっけ?」

という人は大切なものが抜けています。笑
⇒ アボガドロの法則 標準状態での気体の体積と物質量
の内容と
⇒ 気体定数とは?標準状態と理想気体の状態方程式
で復習をかねて、確認しておくことをおすすめします。

気体の状態方程式を使う問題では標準状態についての説明はありません。
当然知っておく言葉は問題に書かれていませんので用語は大切にして下さいね。

定数や原子量は問題に与えられることが多いのですが、
気体定数などのある程度良く出てくる定数は覚えておきましょう。