2族の元素のうちアルカリ土類金属の性質とその化合物の性質を見ておきましょう。何故、同じ2族の金属でありながらベリリウム、マグネシウムはアルカリ土類金属に属さないのか分かりますか?化合物もややこしい日本語で表現されるので整理しておきましょう。

アルカリ土類金属

周期表の2族元素は周期の小さい順に
 ベリリウム( \(\mathrm{Be}\) )
 マグネシウム( \(\mathrm{Mg}\) )
 カルシウム( \(\mathrm{Ca}\) )
 ストロンチウム( \(\mathrm{Sr}\) )
 バリウム( \(\mathrm{Ba}\) )
 ラジウム( \(\mathrm{Ra}\) )
いずれも価電子が2個なので2価の陽イオンになりやすいです。

このうちベリリウムとマグネシウムを除いた元素
 「アルカリ土類金属
といいます。

アルカリ土類金属の単体はどれも銀白色で、
化合物の融解塩電解で得ることができ、
アルカリ金属の次に反応性が高いです。

ここです。

「ここですってどこです?」
って何故にベリリウムとマグネシウムは金属でありながらアルカリ土類金属に属さないのか?というところです。

いくつか理由をあげますがその前にバリウムまでの2族元素化合物の性質を見ておきましょう。

2族元素の反応性

2族元素の反応性は\(\,\mathrm{Be}\,\)と\(\,\mathrm{Mg}\,\)は、
アルカリ土類金属に属する2族元素とは異なります。

2族元素の水との反応性

 \(\mathrm{Be}\,,\, \mathrm{Mg}\) : 常温では反応しない。
 \(\mathrm{Ca}\,,\, \mathrm{Sr}\,,\, \mathrm{Ba}\) : 常温の水とも反応する。

水酸化物の溶解性

 \(\mathrm{Be}\,,\, \mathrm{Mg}\) : 水に溶けにくい。
 \(\mathrm{Ca}\,,\, \mathrm{Sr}\,,\,\mathrm{Ba}\) : 水に溶けやすい。

硫酸塩の溶解性

 \(\mathrm{Be}\,,\, \mathrm{Mg}\) : 水に良く溶ける。
 \(\mathrm{Ca}\,,\, \mathrm{Sr}\,,\, \mathrm{Ba}\) : 水に溶けにくい。

炎色反応

 \(\mathrm{Be}\,,\, \mathrm{Mg}\) : なし。
 \(\mathrm{Ca}\,,\, \mathrm{Sr}\,,\, \mathrm{Ba}\) : 特有の炎色反応あり。

と分けて書くと何となく違うと分かりますが、それでもはっきりしていません。

例えば、水との反応でも \(\mathrm{Be}\) は高温水蒸気としか反応しませんが、
\(\mathrm{Mg}\) は熱水とは反応します。
どの温度までが反応しないというのかあいまいです。

溶解度にしても溶けやすい、溶けにくいってどこまでが溶けやすいというのか、よくわかりません。

でも、炎色反応の「あり・無し」ははっきりしています。
はっきりと区別するには炎色反応を示すかどうかで分けておけば良いです。

ただ、水酸化物と硫酸塩の溶解性が逆だというのも覚えておいた方が良いかもしれませんね。

カルシウムの化合物

アルカリ土類金属の中でもカルシウムの化合物は良く出てきます。

酸化カルシウム

(\(\mathrm{CaO}\))

石灰石(\(\mathrm{CaCO_3}\))を900℃くらいまで加熱すると

 \( \mathrm{CaCO_3\rightarrow CaO+CO_2\uparrow}\)

の反応が起こり生石灰(せいせっかい)と呼ばれる白色固体の酸化カルシウムが得られます。

水酸化カルシウム

(\(\mathrm{Ca(OH)_2}\))

酸化カルシウムは水と激しく反応して

 \( \mathrm{CaO+H_2O\rightarrow Ca(OH)_2}\)

消石灰(しょうせっかい)と呼ばれる白色粉末の水酸化カルシウムになります。
水酸化カルシウムは水に少し溶けて強い塩基性を示します。
水酸化カルシウムの飽和溶液を石灰水といいますが、これに二酸化炭素を通じると炭酸カルシウムの白色沈澱を生じます。

 \( \mathrm{Ca(OH)_2+CO_2\rightarrow CaCO_3\downarrow +H_2O}\)

ここらはややこしいですよね。
 石灰石は \(\mathrm{CaCO_3}\) のことで、
 石灰水は \(\mathrm{Ca(OH)_2}\) の水溶液のことです。
 生石灰は \(\mathrm{CaO}\) のことで、
 消石灰は \(\mathrm{Ca(OH)_2}\) のことです。
暗記した方がはやそうですよ。笑

炭酸カルシウム

(\(\mathrm{CaCO_3}\))

天然では石灰岩や大理石、貝殻や卵の殻の主成分として存在して、水には溶けません。
石灰水(\(\mathrm{Ca(OH)_2}\)水溶液)に二酸化炭素を通じると生じます。

 \( \mathrm{Ca(OH)_2+CO_2\rightarrow CaCO_3+H_2O}\)

この炭酸カルシウムに二酸化炭素を過剰に通じると炭酸水素ナトリウムとなって溶け出します。

 \( \mathrm{CaCO_3+CO_2+H_2O\rightleftharpoons Ca(HCO_3)_2}\)

鍾乳洞はこの正反応、鍾乳石は逆反応が長い年月かかって出来たものです。

硫酸カルシウム

(\(\mathrm{CaSO_4}\))

硫酸カルシウムは天然では二水和物\(\mathrm{CaSO_4\cdot 2H_2O}\)(セッコウ)として産出されます。
白色の結晶です。
これを<穏やかに>加熱して水和物の一部を取り除くと半水和物の「焼きセッコウ」になりますが、水を適量混合して放置すると少しだけ体積を増して再びセッコウにもどって固まります。これが骨折箇所などを保護、固定するギプスの原料と反応です。

 \( \displaystyle \mathrm{CaSO_4\cdot\frac{1}{2}H_2O+\frac{3}{2}H_2O\rightarrow CaSO_4\cdot 2H_2O}\)

ちなみに焼きセッコウを加熱しすぎると無水物となり「チョーク」になります。笑

硫酸バリウムの性質

硫酸バリウム(\(\mathrm{BaSO_4}\))

白色の粉末です。
水に溶けないので、
硫酸イオン(\(\mathrm{SO_4^{2-}}\))の検出や、
逆にバリウムイオン(\(\mathrm{Ba^{2+}}\))の検出に使われます。

またこの硫酸バリウムはX線を通しません。
胃酸でも分解されないので消化器(消「火」器ではありませんよ。w)
のX線撮影の造影剤として使われているんですね。

アルカリ土類金属塩の溶解度はややこしいです。
この先は基本が身についてからでいいと思いますので細かい説明はここまでにしてまとめておきます。

 塩化物:水に溶けます。
 水酸化物:水に少し溶けます。
 炭酸塩:水に少し溶けます。
 硫酸塩:\(\mathrm{CaSO_4}\) は極めて溶けにくい。\(\mathrm{BaSO_4}\) は溶けない。

アルカリ金属と同じように

⇒ アルカリ金属単体の性質と化合物の製法『アンモニアソーダ法』

細かいところが割と多いです。
「え~い、覚えてしまえ!」、ってくらいの勢いで少し時間をかけて取り組んだ方が良いかもしれませんね。