細胞膜の構造は非常に小さな世界なのでモデルで観た方が分かり易いです。
選択的透過性を持っていますが、物理的な受動輸送と細胞の機能的な能動輸送など、
細胞内外の物質の出入りについてポンプの種類とともにまとめておきます。

生体膜の構造

細胞膜や細胞小器官の膜は、基本的な構造が同じなのでまとめて生体膜と呼ばれます。
この膜は、リン脂質とタンパク質などからできています。

リン脂質部分の分子構造は水になじみやすい親水性を示す部分と、水になじみにくい疎水性を示す部分を持っていて、生体膜ではリン脂質構造が二層になっています。
この二層はお互いに疎水基(疎水性)側を内側に重なった構造をしており、その間にタンパク質がはまり込んだ構造となっています。
言葉で見るとわかりにくいですがモデルとしては

といった感じです。
青い部分は塩基とリン酸で親水性を示し、黄色っぽい部分はグリセリンや脂肪酸でできていて疎水性を示します。
この二層でできた膜の厚みが \(\mathrm{10 \mu m}\) 以下になるので分かりづらいですよね。
さらにこれは縦にスライスしたものなので膜としてはこれが立った状態で連なったものとなります。

塩基とリン酸で親水性を示す部分を頭部、グリセリンと脂肪酸で示す部分を尾部ということもあります。

生体膜を構成するリン脂質やタンパク質の分子は位置が固定されず、膜内を比較的自由に動き回っているので、この膜のモデルを「流動モザイクモデル」といいます。
この構造によって生体膜には柔軟性があるのです。

細胞膜のはたらき

細胞内外の物質が自由に拡散するのを防ぎ、
細胞膜で囲まれた内側に独自の代謝系をつくる。

膜を通じて膜の内外での物質の輸送を行う。

外部からの情報を受容し、細胞間の情報(シグナル)伝達に関係する。

などが細胞膜のはたらきとなります。

細胞膜を構成するタンパク質のはたらき

膜貫通タンパク質

細胞膜を貫通しているタンパク質を「膜貫通タンパク質」といい、水やイオンなどの物質の出入りの調節、ホルモンの受容および細胞間接着のはたらきをします。

周辺タンパク質

細胞を支えているタンパク質である細胞骨格とともに膜の形態を維持するはたらきをしています。

糖タンパク質

糖を側鎖の一部に持つタンパク質を糖タンパク質といいます。
細胞表面に付いたタンパク質には糖が付いているものが多く、この糖によって細胞の区別をする標識となります。

細胞膜と物質の出入り

受動輸送

物質は濃度の違いによって拡散します。
この化学変化をともなわない濃度勾配による細胞膜内外の物質の輸送を受動輸送といいます。

選択的透過性

細胞膜は全ての物質を通すわけではなく、特定の物質だけを通します。
これを選択的透過性といいます。

細胞膜のリン脂質部分を通過できるのは小さな分子である酸素や二酸化炭素、または疎水性の分子です。
アミノ酸や糖やイオンはリン脂質部分を透過できないので、膜を貫通した輸送タンパク質部分を通過します。
輸送タンパク質には、チャネル担体ポンプがありますが、ポンプ以外での輸送は基本的に受動輸送になります。

水分子はアクアポリンというチャンネルを通過します。
(チャンネルとは「水路」や「通路」を意味します。)
また \(\mathrm{Na^+}\) (ナトリウムイオン)や \(\mathrm{K^+}\) (カリウムイオン)などの特定のイオンを通すチャンネルもあります。

アミノ酸やグルコースなどの大きな分子を運ぶ「担体」と呼ばれるタンパク質もあります。

能動輸送

受動輸送の際には濃度勾配に従って物質を輸送しますが、濃度勾配に逆らって物質を輸送することを能動輸送といいます。
ATPのエネルギーを使ってポンプが行います。

ナトリウムポンプは細胞膜にあり、濃度勾配に逆らって、\(\mathrm{Na^+}\) を細胞内部から外部へと排出し、\(\mathrm{K^+}\) を取り込むタンパク質でできたポンプです。

食作用と飲作用

ある程度以上の大きさをもつ分子や細胞膜を通過できない物質は、細胞膜にくっつき小胞を形成し細胞膜と融合することで細胞の内外をできるします。
細胞膜との融合で細胞内に取り込むことをエンドサイトーシスといい、大きな分子、粒子を取り込む場合を食作用(しょくさよう)、液体などの取り込みを飲作用(いんさよう)といいます。
逆に細胞膜との融合で細胞外への分泌をエキソサイトーシスといいます。

タンパク質はリボソームで合成されますが、粗面小胞体の膜タンパク質を通って小胞体内に入って折りたたまれます。
次に、小胞で包まれゴルジ体に移動し、濃縮されます。
その後、ゴルジ体から放出されて分泌小胞となり細胞膜に移動してエキソサイトーシスで放出されるのです。

細胞膜の構造と物質の出入りについての基本はこれくらいでいいでしょう。

一度で覚えきれるものではありません。
繰り返し復習することが大切ですよ。

後は1つひとつ細胞内のはたらきを知りながら

⇒ 細胞(原核細胞と真核細胞)の内部構造と細胞小器官の名称および機能

でまとめている細胞全体がつながると良いですね。