細胞の構造や機能は細かく見ると複雑です。
種類は大きく分けて原核細胞と真核細胞がありますが、2つの違いおよび構造と名称を確認しておきましょう。
非常に小さなモノなので細胞小器官を実際に目にすることはありません。
しかし、最近では細胞レベルでの名称も日常生活の中で出てきますので覚えておくといいでしょう。
もちろん、受験のための知識としては細胞の知識は欠かせません。

細胞

細胞は生命の最も小さな基本単位で、全ての生物は細胞からできています。
細胞膜で囲まれていて遺伝物質はDNA(デオキシリボ核酸)で細胞分裂によって自己複製して増えます。
複製により単細胞生物の場合は個体を増やし、多細胞生物では身体を成長させることになります。

自己複製することや基本的な構造や機能は全ての生物で共通していますが、大きく分けると核があるかないかで原核細胞と真核細胞に分けられます。
核があるかどうかは核膜があるかどうかと同じ意味になるので、
「原核細胞は核膜に包まれた核がなく、細胞小器官を持たない。」
「真核細胞は核膜で包まれた核を持っていて、細胞小器官を持つ。」
と分けることができます。

原核細胞

原核細胞は1~10 \(\mu m\) 程度の原始的な細胞です。
核膜で包まれた核を持っていませんし、ミトコンドリアや葉緑体といった細胞小器官も持っていません
DNAは核様体という領域に存在していますが、決まった存在箇所はなく偏在しています。
原核細胞は細胞膜の外側にアミノ酸を含む糖の一種であるペプチドクリカンという名の細胞壁を持っているのですが、
植物細胞の細胞壁はセルロースなのでペプチドクリカンは含まれません。

原核生物

からだが原核細胞でできている生物を原核生物といいます。
例としてラン藻と呼ばれるシアノバクテリアや細菌類がいますが、
最近では大きく、細菌類(バクテリア)と古細菌(アーキア)に分けられています。

分類学によると最近では、生物を細菌、古細菌、真核生物の3つに分ける「3ドメイン説」がとられるようになっています。
「ドメイン」の詳しい説明は『生物の系統と分類』のところでします。

真核細胞

真核細胞は原核細胞とは違って核膜で包まれた核を持っています。
核には、DNAがヒストンというタンパク質に巻き付いたクロマチン繊維という構造をした染色体が含まれています。
真核細胞の大きさは10~100 \(\mu m\) でだいたいですが原核細胞の10倍ぐらい。
といっても生物を学ぶ際にやっかいなのが大きさの感覚です。
教科書や参考書に載っている挿絵や顕微鏡写真は大きさは倍率が書いてあっても実際にどれくらいの大きさかはイメージできません。
だからイメージするだけの比較対象が必要なのです。
「 \(1\mu m\) というのは1mの1000000分の1です。」っていわれてイメージできますか?
「目に見えないくらい小さい」としかいいようがありませんよね。

細胞の大きさはそれぞれの個体でも違いますし、機能性の面から分類しても1つの生物個体内でも違います。
だから一概には言えないのですが、
真核細胞の大きさは、原核細胞が数十個集まったくらいの大きさ、くらいのイメージを持っておけば十分です。

また真核細胞はミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官を持っています

真核生物

真核細胞で身体ができている生物を真核生物といいます。
身体が細胞1つでできている「単細胞生物」と、
多数の細胞からできている「多細胞生物」があります。

単細胞生物を「原生生物」と分類するのですが、
真核生物は分類すると、「原生生物」、「植物」、「動物」、「菌類」になります。
分類については系統の単元で数多く出てくるのでそのときに集中して覚えておくと良いです。

真核生物の細胞の構造と機能

断面なので平面的ですが大まかな構造です。

この中身を少しだけ見ておきましょう。
1つひとつのはたらきについては別途詳しく見ます。

医学を見てもわかるように、人類は細胞レベルどころか臓器や臓器どうしの機能の解明はまだできていません。
できているなら世の中の難病というものはなくなり、医者も少なく、医療費もそれほどかかるものではなくなっているでしょう。
ましてやもっとミクロな細胞の中身についても全てが解明されているわけではありませんので進歩にともなう知識を少しずつでも追っていくと良いです。
ここで説明している生物の知識も10年、20年すればもっと詳しくなっているはずです。

「核」

遺伝情報を保持し転写するはたらきをもつっています。
内膜と外膜の二重膜構造の角膜で包まれた構造で内部に遺伝子の本体であるDNAと、ヒストンからできた染色体および1個から数個の核小体があります。
核膜には核膜孔と呼ばれる多数の小さな穴が空いていて、DNA情報が転写されたmRNAを細胞質に移動させる通路になっています。

「リボソーム」

タンパク質の合成を行います。
細胞質基質中に移動したmRNAにリボソームが結合しmRNAの塩基配列情報をアミノ酸配列に翻訳してタンパク質を合成します。

「小胞体」

タンパク質などの輸送通路になります。
粗面小胞体と滑面小胞体があり、
粗面小胞体は表面にリボソームが付着していて合成されたタンパク質などの物質の輸送通路となります。
滑面小胞体は表面にリボソームは付着しておらず脂質成分の合成などに関係しています。

「ゴルジ体」

タンパク質などの分泌です。
一重の膜からできている袋状構造でリボソームで合成されたタンパク質を小胞体から受け取って濃縮し、これを小胞に包んで細胞外に分泌しやすい状態にします。
酵素、ホルモン、粘液の分泌細胞で発達しています。
タンパク質の「修飾」というはたらきをもっているといわれますが、DNA情報によって合成され小胞体から送られてきたタンパク質などに鎖状の糖をくっつけたりするので「修飾」といわれます。

ゴルジという人が発見したからゴルジ体。ゴルジ装置と呼ばれることもあります。

「リソソーム」

細胞内の不要物の分解をします。
内部に分解酵素を含んでいて細胞内の不要物を分解(細胞内消化)する小胞です。

「ミトコンドリア」

細胞内の呼吸をしています。
内外2枚の膜で囲まれており独自のDNAを持っているので細胞内で分裂、増殖することができます。
大きさは \(0.5\mu m\) くらいで糸状または粒状で、グルコースなどを分解して生命活動に必要なエネルギーを呼吸によって生み出します。
エネルギーはATP(アデノシン三リン酸)として取り出します。
機能面の詳しい説明は別にしますが、ほとんどの動植物に存在しています。

独自のDNAを持つということはDNA鑑定できるということです。
人間だけではなく、動植物の特定もできるということですね。

「葉緑体」

植物細胞に含まれていて、光エネルギーを利用し光合成を行います
構造は内と外の2枚の幕で囲まれ独自のDNAを持っていて、細胞内で分裂、増殖することができます。
大きさは長径が5~10 \(\mu m\) で厚さ2~3 \(\mu m\) で、内部に扁平(へんぺい)な袋状のチラコイドがあり、このチラコイドが積み重なったものがグラナと呼ばれるものです。
このチラコイドの膜に光合成色素のクロロフィルなどが含まれています。

光合成については
⇒ 光合成を行う場所と光合成に必要なものと色素の種類
を参考にして下さい。

「液胞」

細胞内の老廃物やアントシアンなどの色素の貯蔵をしています。
内部に細胞液を満たした一重の膜で包まれた袋状の構造をしていて、成長した植物細胞で大きく発達しているのが見られます。
老廃物や色素などは細胞液に含まれているのでそれをためているところです。

次からは細胞の形成、維持に関する小器官になります。
繰り返しますが詳しくは別に説明するので各名称に目を通しておく程度で良いです。

「細胞骨格」

細胞全体の構造を支える役目をしています。
細胞内を葉緑体などが流れるように見える「原形質(細胞質)流動」にも関係しています。

「中心体」

細胞分裂のときに、紡錘糸の起点となります。
中心小体と微小管とで構成されますが中心小体の構造が特徴的なので分かり易いです。

中心体は、微小管3本がセットになって、それが9つ環状の束のようになった構造をした中心小体からなっています。

「細胞膜」

細部内への物質の出入りの調節と細胞内への情報を伝達するはたらきをします。
細胞の外側を包む膜です。

「細胞壁」

植物細胞の形態保持や保護がはたらきです。
植物細胞の細胞膜の外側にある丈夫な壁で、セルロースとペクチンが主な構成成分となっています。
細胞壁には小さな穴(孔)が空いておりこの孔でとなりの細胞とつながっていて、これを『原形質連絡』といいます。

以上簡単に細胞内の小器官と機能を説明しましたが、一度には理解しづらいです。
1つひとつ細胞小器官の機能や構造を見ていきながら理解することが目標となりますが先ずは名称だけでも覚えておきましょう。

細胞は平面構造ではありません。
立体的で大きさの比較がしにくい複雑な構造をしていますので、教科書の細胞の写真などを見ながら少しでもイメージできるようにしていて下さい。

細胞全体でもミクロな世界ですが、1つひとつの小器官の構造や構成物質はさらにミクロな世界へと入ります。
肉眼では見えない世界の話なので論理的に整理する必要が出てきます。
しっかり復習していきましょう。

⇒ 細胞で合成されるタンパク質の立体構造と役割および変性と失活

さて、タンパク質合成はどこで行われるのでしょう?
このページに答があったのですが、読み過ごしていませんか?

生物では、「覚えること」が対策ですよ。