相手を酸化する物質を酸化剤、還元する物質を還元剤といいます。
酸化と還元は同時に起こっているという話は何度かしました。
酸化剤は相手を酸化すると同時に還元されているともいえます。
主な酸化剤と還元剤の反応を見ておきましょう。
酸化剤と還元剤
酸化剤を定義すると、
「相手の物質を酸化する物質で、それ自身は還元される物質。」
となります。
電子を受け取りやすい、と定義すると簡単です。
還元剤を定義すると、
「相手の物質を還元する物質で、それ自身は酸化される物質。」
で、
電子を放出しやすい物質、とするのが明快です。
\( \mathrm {CuO}\,+\,\mathrm {H_2} → \mathrm {Cu}\,+\,\mathrm {H_2O}\)
において、\(\mathrm {CuO}\) は \(\mathrm {H_2}\) を酸化しています。
つまり \(\mathrm {CuO}\) は酸化剤です。
が、同時に \(\mathrm {CuO}\) は \(\mathrm {H_2}\) に還元されているともいえます。
つまり
\(\mathrm {H_2}\) は還元剤です。
銅原子自体の酸化数をみると銅原子は還元されていますが、
酸化銅という物質が水素分子を酸化している酸化剤なので間違えないようにして下さい。
化学反応式の中で酸化剤としてはたらいているか、還元剤としてはたらいているかは反応の内容で決まります。
同じ物質でも酸化剤となっている場合と還元剤となっている場合がありますので要注意です。
主な酸化剤
オゾン: \(\mathrm {O_3}\)
\(\mathrm {O_3}\,+\,2 \mathrm {H^+}\,+\,2 \mathrm {e^-} → \mathrm {O_2}\,+\,\mathrm {H_2O}\)
塩素: \(\mathrm {Cl_2}\)
\(\mathrm {Cl_2}\,+\,2\mathrm {e^-} → 2 \mathrm {Cl^-}\)
過マンガン酸カリウム: \(\mathrm {KMnO_4}\)
酸性中 \(\mathrm {MnO_4^-}+8 \mathrm {H^+}+5\mathrm {e^-} → \mathrm {Mn^{2+}}+4 \mathrm {H_2O}\)
中性・塩基性中 \(\mathrm {MnO_4^-}+2\mathrm {H_2O}+3\mathrm {e^-} → \mathrm {MnO_2}+4 \mathrm {OH^-}\)
二クロム酸カリウム: \(\mathrm {K_2Cr_2O_7}\)
酸性中 \(\mathrm {Cr_2O_7^{2-}}+14 \mathrm {H^+}+6 \mathrm {e^-} → 2 \mathrm {Cr^{3+}}+7\mathrm {H_2O}\)
過酸化水素: \(\mathrm {H_2O_2}\)
酸性中 \(\mathrm {H_2O_2}+2\mathrm {H^+}+2\mathrm {e^-} → 2 \mathrm {H_2O}\)
中性・塩基性中 \(\mathrm {H_2O_2}+2\mathrm {e^-} → 2 \mathrm {OH^-}\)
二酸化硫黄: \(\mathrm {SO_2}\)
\( \mathrm {SO_2}+4 \mathrm {H^+}+4 \mathrm {e^-} → \mathrm {S}+2 \mathrm {H_2O}\)
主な還元剤
水素: \(\mathrm {H_2}\)
\( \mathrm {H_2} → 2\mathrm {H^+}+2 \mathrm {e^-}\)
硫化水素: \( \mathrm {H_2S}\)
\( \mathrm {H_2S} → \mathrm {S}+2 \mathrm {H^+}+2 \mathrm {e^-}\)
ヨウ化カリウム: \( \mathrm {KI}\)
\(2\mathrm {I^-} → \mathrm {I_2}+2\mathrm {e^-}\)
過酸化水素: \(\mathrm {H_2O_2}\)
\(\mathrm {H_2O_2} → \mathrm {O_2}+2 \mathrm {H^+}+2 \mathrm {e^-}\)
二硫化硫黄: \(\mathrm {SO_2}\)
\(\mathrm {SO_2}+ 2 \mathrm {H_2O} → \mathrm {SO_4^{2-}}+4 \mathrm {H^+}+2 \mathrm {e^-}\)
などですが、ちょっとよく見てください。
過酸化水素や二硫化硫黄のように酸化剤にも還元剤にも入っている物質があります。
酸化剤としてはたらく物質でも反応の相手がそれよりも強い酸化力を持っている場合は還元剤としてはたらきます。
\(\mathrm {2{MnO_4^-}+5{H_2O_2}+6{H^+}} → \mathrm {2{Mn^{2+}}+5{O_2}+8{H_2O}}\)
この反応では過マンガン酸カリウムが酸化剤、過酸化水素が還元剤としてはたらいています。
逆に還元剤としてはたらく物質でも反応の相手がそれよりも強い還元力を持っている場合は酸化剤としてはたらきます。
\( \mathrm {2{H_2S}+{SO_2}} → \mathrm {2{H_2O}+3{S}}\)
この反応では硫化水素が還元剤、二酸化硫黄が酸化剤としてはたらいています。
このように反応する相手物質によって酸化剤か還元剤かの判断をしなければなりません。
酸化や還元は原子ごとに見ますが、
「酸化剤」「還元剤」というのは物質ごとに見ますので、注意しておきましょう。
覚える事が多くなってくるところですが、必要最低限、物質名を覚えて、後は反応式を書く。
それで対処できる範囲で進める方が良いです。
化学基礎をやっている今の段階で完全に理解しようとか、すべてを覚えようとするときついですからね。
がんばれる人はすべて覚えても良いですが、酸化数を見られるようになっておけば十分ではないでしょうか。
次に出てくる半反応式は重要ですが、先ずは酸化数ですよ。
⇒ 酸化と還元 酸化数の表し方と反応の見分け方
どちらも少し時間をかけた方が良いでしょう。
何度も何度も繰り返須縄が1番です。