酸化と還元は必ず同時に起こっているというのは記事にしました。広い意味で電子の受け渡しが酸化と還元の定義とできる事も分かりました。今回は酸化数の表し方を電子の動きから見てみましょう。これが分かれば酸化還元反応の見分け方は原子レベルで理解できます。
酸化数の決め方
単体や化合物の中で原子がどのくらい酸化や還元されているかを示す数を酸化数といいます。
酸化・還元されていると表現していますが、
化合物中の原子の酸化数を見る時は、その化合物だけで見ればよく、変化は気にしなくて良いです。
単体の原子の酸化数は0とします。
水素分子(\(\mathrm {H_2}\))や酸素(\(\mathrm {O_2}\))や銅(\(\mathrm {Cu}\))の酸化数は0です。
単原子イオンの酸化数はその原子の電荷の価数を酸化数とします。
ナトリウムイオン(\(\mathrm {Na^\color{red}{+}}\))の酸化数は+1です。
酸素イオン(\(\mathrm {O^{\color{red}{2-}}}\))の酸化数は-2です。
化合物中では、
水素原子の酸化数を+1
酸素原子の酸化数を-2
とすれば他の原子の酸化数を計算することができます。
例えば、硫化水素(\(\mathrm {H_2S}\))は水素の酸化数を+1と考えれば硫黄(\(\mathrm {S}\))の酸化数が-2です。
水素2つ(+1×2)と結合し、全体で0価なので硫黄は-2。
酸化数は算用数字の1,2,3にプラスマイナスをつけて表せば良いですよ。
ローマ数字も使いますが気にしなくて良いです。
化合物中の水素の酸化数+1は高校卒業まで変えなくて良いです。
(単体は0です。)
しかし、化合物中の酸素の酸化数をすべて-2とすると全体の酸化数が合わなくなることがあります。
例えば過酸化水素(\(\mathrm {H_2O_2}\))の酸素の酸化数は-1です。
このように酸化数の取り方の基準は絶対的なものではありませんので注意が必要ですが、
あまり深く考えると分からなくなるので、w
全体での価数を見て合わせていく、という方が簡単ですね。
各原子の酸化数の総和は0
化合物中の各原子の酸化数の総和は「0」になります。
例えば、
塩素酸カリウム(\(\mathrm {KClO_3}\))の各原子の酸化数の総和も0なので、塩素の酸化数が求まります。
カリウムは+1,酸素は-2(×3)、これに塩素が加わって0になるので、塩素の酸化数は+5です。
\(+1-2\times 3+5=0\)
これって周期表からでは出せませんよね。
このように酸化数の基準は決まっているわけではありませんが、
化合物全体で0になるということは覚えておきましょう。
多原子イオンの場合、各原子の酸化数の和はその多原子イオンの電荷と等しくなります。
例えば硫酸イオン(\(\mathrm {SO_4^{2-}}\))の酸化数の総和は、
硫酸イオンの電荷が2-なので、イオン全体の酸化数は-2です。
この場合酸素の酸化数は-2とすると、4つの酸素があるので酸素だけで-8。
それに硫黄の酸化数が加わって-2になるので硫黄の酸化数は+6です。
このように酸化数は算数で求まりますので、分子やイオン全体の電荷に注目しておくと良いです。
酸化反応か還元反応かの見分け方
酸化数が求められるようになれば物質中の原子の酸化数を見ればその原子が酸化されているのか、還元されているのかが分かるようになります。
原子の酸化数が増加する反応は酸化反応です。
(+の値が増えることです。)
原子の酸化数が減少する反応は還元反応です。
(+の値が減ることです。)
酸化数が変化していない反応は酸化でも還元でもありません。
少し例を見ればすぐに分かるようになると思います。
\(2 \mathrm {H_2}\,+\,\mathrm {O_2} → 2\mathrm {H_2O}\)
水素の酸化数は 0 → +1 なので酸化
酸素の酸化数は 0 → -2 なので還元
(もちろん酸化還元は同時に起こっています。)
\( \mathrm {Zn}\,+\, \mathrm {H_2SO_4} → \mathrm {ZnSO_4}\,+\, \mathrm {H_2}\)
亜鉛の酸化数は 0 → +2 なので酸化
水素の酸化数は +1 → 0 なので還元
硫酸イオンの酸化数は -2 → -2 なので酸化でも還元でもない。
硫酸イオン自体が酸化還元反応に関係していないので、
その構成元素の硫黄も酸素も酸化還元には関係していません。
構成原子に着目し酸化数の変化を見れば酸化されているのか、還元されているのか、酸化還元に関係ないのかが分かるようになります。
酸化還元の定義
⇒ 酸化還元反応 定義と電子の授受で書いていますが、酸素や水素の動きで酸化還元を見るより、電子の動きで、各原子の酸化数でみた方が早いでしょう?
反応式を書いて、原子の1つひとつに酸化数を書けば間違いありませんよ。
ということで先に進みましょう。
他の物質を酸化するか、還元するか、どちらかをしやすい物質があるのです。