可逆反応では温度を一定にすると平衡状態になり平衡定数が定まります。平衡定数の求め方は化学平衡の法則で求まりますが計算練習問題を取り上げて実際に求めてみましょう。手順と計算方法の確認にもなりますのでしっかり見ておいて下さい。

化学平衡の法則(質量作用の法則)

復習になりますが化学平衡の法則(質量作用の法則)を先ずは確認しておきます。
温度を一定にして平衡状態にすると

 \( a \mathrm{A}+b\mathrm{B} \rightleftharpoons c\mathrm{C}+d\mathrm{D}\)

の平衡定数は

 \( \displaystyle K=\frac{[\mathrm {C}]^c[\mathrm {D}]^d}{[\mathrm {A}]^a[\mathrm {B}]^b}\)

という関係式で表されます。これが化学平衡の法則です。
具体的な例で見ると、

 \( \mathrm{H_2+I_2 \rightleftharpoons 2HI}\)

の平衡状態における平衡定数は、

 \( \displaystyle \mathrm{\frac{[HI]^2}{[H_2][I_2]}}=K\)

となりますね。
平衡定数において注意する点は、左辺の反応物が分母、右辺の生成物が分子、という約束です。

平衡定数を求める練習問題

では、練習問題を解いてみましょう。
簡単な例題で示しますので自分でやって見るということが大切になります。
数学や化学では問題集の解答を見て「自分で解いた気にならない」ことが一番の注意点ですよ。

【練習問題】
温度を一定に保てる体積5Lの容器を用い、水素とヨウ素を1.0molずつ入れて平衡状態にしたところヨウ化水素が1.5mol生じた。 この反応の平衡定数を求めよ。

平衡定数を求めるには気体のモル濃度が必要です。
でも、その前に水素とヨウ素は反応した分だけ減っているということを忘れないで下さい。
反応物は水素( \(\mathrm{H_2}\) )1.0mol、ヨウ素( \(\mathrm{I_2}\) )1.0mol。
生成物はヨウ化水素( \(\mathrm{HI}\) )1.5mol。
反応式は \(\mathrm{H_2+I_2 \rightleftharpoons 2HI}\) です。

ここで水素とヨウ素は同じ量反応します。
反応した水素とヨウ素の量を \(x\) (mol)とすると、ヨウ化水素は \(2x\)(mol)生成したことになります。
 反応式 \(\mathrm{H_2 \ +\ I_2 \ \rightleftharpoons \ 2HI}\)
 反応前 \(1.0 \ +\ 1.0 \ \rightleftharpoons \ 0\)
 反応後 \((1.0-x) \ +\ (1.0-x) \ \rightleftharpoons \ 2x\)
という状態になっていて、平衡状態でのヨウ化水素が1.5molなので、
 \(2x=1.5\) から \(x=0.75\)
つまり0.75molの水素とヨウ素が反応して1.5molのヨウ化水素が生成したということになります。

最終的に平衡状態では、
5Lの容器に水素0.25mol、ヨウ素0.25mol、ヨウ化水素1.5molが存在し平衡状態となっています。
このときのそれぞれのモル濃度は、

 \(\displaystyle \mathrm{[H_2]=\frac{0.25}{5}} , \displaystyle \mathrm{[I_2]=\frac{0.25}{5}} , \displaystyle \mathrm{[HI]=\frac{1.5}{5}}\)

よって平衡定数 \(K\) は

 \(\displaystyle K=\mathrm {\frac{[HI]^2}{[H_2][I_2]}}=\displaystyle \mathrm {\frac{(\frac{1.5}{5})^2}{(\frac{0.25}{5})(\frac{0.25}{5})}}=\frac{1.5^2}{0.25^2}=36\)
(単位は無しです。)

繁分数となっている
 
 \( \displaystyle K=\displaystyle \mathrm {\frac{(\frac{1.5}{5})^2}{(\frac{0.25}{5})(\frac{0.25}{5})}}\)

の計算が苦手な人も多いと思いますが、割り算は逆数のかけ算なので、

 \( \displaystyle K=\frac{(\frac{1.5}{5})^2}{(\frac{0.25}{5})(\frac{0.25}{5})}\\ \\
=\displaystyle (\frac{1.5}{5})\times (\frac{1.5}{5}) \div (\frac{0.25}{5}) \div (\frac{0.25}{5})\\ \\
=\displaystyle \frac{1.5}{5}\times \frac{1.5}{5} \times \frac{5}{0.25} \times \frac{5}{0.25}=36\)

とすれば良いだけですが数学というか算数の延長になるのでここでは省略します。笑

このように平衡状態でのモル濃度が分かれば平衡定数は求まります。
しかし、問題には反応前と反応後の物質量で問題に数値が与えられることが多いので平衡状態でのそれぞれのモル濃度を求める必要が出てきます。
ということで手順を書いてまとめておきますので確認しておいて下さい。

平衡定数の求め方の手順まとめ

 ①化学反応式を書く。
 ②反応前の物質量を問題から読み取り書き出す。
 ③問題の条件から平衡状態での物質量を求めて書き出す。
(文字を使って表すと分かり易い)
 ④平衡状態のモル濃度を書き出す。
 ⑤平衡定数の式を書き出し④の値を代入して計算する。

平衡定数の式は、反応物(左辺)が分母に来ることは忘れないで下さい。

間違えないように

⇒ 平衡定数の求め方と化学平衡の法則(質量作用の法則)

ここは必ず読み直しておきましょう。

逆に平衡定数が分かっていて濃度を求める問題も多いです。
①~⑤の順序が変わるだけなのでいくつか練習しておくといいですよ。
特に、①~③の作業を手抜きするとさっぱり分からなくなるのでここはいつも書き出すようにしておいた方が良いです。