平衡定数は平衡状態における反応物と生成物のモル濃度が変われば求まりますが固体を含む反応では少し事情が違います。どう違うのか?またモル濃度の代わりに分圧を利用した圧平衡定数というのもありますので少し触れておきます。

固体を含む反応の平衡定数

先に言ってしまうと、固体は平衡定数には無関係です。
反応式に(固)とか(s)と表示されている固体であるものは平衡定数には影響しないと考えて下さい。
例えば、熱した炭素と水蒸気を高温に保つと、
 
 \( \mathrm {C(s)+H_2O(g) \rightleftharpoons CO(g)+H_2(g)}\)

((s)は固体を、(g)は気体を意味します。)
の平衡状態になりますが、平衡定数 \(K\) は

 \( K= \displaystyle \mathrm {\frac{[CO][H_2]}{[H_2O]}}\)

となり、固体の炭素は関係しません。
(関係していないのではありませんが、固体は反応に十分すぎるほどの量が密に固まっているもので温度や圧力や体積には関係していないとして良い。)
このように固体の関わる平衡では固体の濃度を一定とみなし、平衡定数は気体の成分だけで表します。

圧平衡定数

気体の可逆反応では、濃度よりも圧力の方が測定しやすいので分圧を用いて平衡定数を表すことが多いです。
この平衡定数を「圧平衡定数」といい、記号は \(K_\mathrm{p}\) と表します。
例えば、

 \( \mathrm{N_2+3H_2 \rightleftharpoons 2NH_3}\)

の化学平衡では平衡状態での窒素と水素とアンモニアのそれぞれの分圧を、
 \(P_\mathrm{N_2} , P_\mathrm{H_2} , P_\mathrm{NH_3}\) とすると、平衡定数 \(K_\mathrm{p}\) は、

 \( K_\mathrm{p}=\displaystyle \frac{(P_\mathrm{NH_3})^2}{P_\mathrm{N_2} \cdot (P_\mathrm{H_2})^3}\)

と表されます。
ところで、今までのようにモル濃度で表した平衡定数は「濃度平衡定数」といいますが圧平衡定数と区別する場合は、記号を \(K_\mathrm{C}\) と表します。

ここで濃度平衡定数 \(K_\mathrm{C}\) と圧平衡定数 \(K_\mathrm{p}\) との間にどのような関係があるかというと、
気体の状態方程式 \(PV=nRT\) を変形して

 \( \displaystyle P=\frac{n}{V}RT\)

ここで \(\displaystyle \frac{n}{V}\) はモル濃度を表すので、
窒素の分圧 \(\displaystyle P_{\mathrm{N_2}}\) は、

 \( \displaystyle P_{\mathrm{N_2}}=\frac{n_{\mathrm{N_2}}}{V}RT=[\mathrm{N_2}]RT\)

となります。
同様に、水素の分圧 \(\displaystyle P_{\mathrm{N_2}}\) とアンモニアの分圧 \(\displaystyle P_{\mathrm{NH_3}}\) は

 \( \displaystyle P_{\mathrm{H_2}}=\frac{n_{\mathrm{H_2}}}{V}RT=[\mathrm{H_2}]RT\)

 \( \displaystyle P_{\mathrm{NH_3}}=\frac{n_{\mathrm{NH_3}}}{V}RT=[\mathrm{NH_3}]RT\)

これらを圧平衡定数の式に代入すると、

 \( \displaystyle K_\mathrm{p}=\frac{[\mathrm{NH_3}]^2(RT)^2}{[\mathrm{N_2}][\mathrm{H_2}]^3(RT)^4}=K_c(RT)^{-2}\)

という関係が成り立ちます。
もちろん平衡反応によって式は変わってきますよ。

単位はどうなっているかというと、
圧力の単位が \(\mathrm{P_a}\)(パスカル)なので \(\mathrm{P_a}\) の累乗となります。

 \( K_\mathrm{p}=\displaystyle \frac{(P_\mathrm{NH_3})^2}{P_\mathrm{N_2} \cdot (P_\mathrm{H_2})^3}\)

の場合、単位だけを見ると、

 \( K_\mathrm{p}=\displaystyle \frac{(\mathrm{Pa})^2}{\mathrm{Pa} \cdot (\mathrm{Pa})^3}=\frac{1}{(\mathrm {Pa})^2}=(\mathrm{Pa})^{-2}\)

圧平衡定数は計算式だけ見るとややこしいので後回しでも良いです。笑

固体が関係する平衡反応では固体は一定とみなし、平衡定数には関係しない。
それは覚えておいて下さいね。

平衡定数の復習は

⇒ 平衡定数の求め方と化学平衡の法則(質量作用の法則)

簡単な計算練習は

⇒ 平衡定数の計算問題を解く時の手順と計算方法

で復習しておいて下さい。

電離平衡や溶解平衡も似たような計算式となります。

⇒ 電離平衡と電離定数(電離度と水素イオン濃度の関係)

pH計算につながるところなので何度も確認しておくと良いです。