銀も遷移金属の1つです。銅や金と同族で似た性質を持ちますが、銀が持つ特別な性質(感光性)や反応もあるので単体と化合物についてまとめてみます。銀のハロゲン化物は水に溶けずに沈澱するものが多いのでそのことも確認しておきましょう。

銀の単体

金の次に展性、延性に富んだ白色の金属で、『電気と熱の電導性が金属の中でも最も大きい物質』です。
塩酸や希硫酸には溶けませんが、酸化力のある硝酸や濃硫酸には溶けます。これは同族の遷移元素である銅と同じですね。
希硝酸の場合、一酸化窒素が発生します。

 \( \mathrm{3Ag+4HNO_3\rightarrow 3AgNO_3+2H_2O+NO\uparrow}\)

濃硝酸の場合、二酸化窒素が発生します。

 \( \mathrm{Ag+2HNO_3\rightarrow AgNO_3+NO_2\uparrow+H_2O}\)

銀の化合物

銀は常に酸化数が+1の化合物をつくります。

硝酸銀

( \(\mathrm{AgNO_3}\) )
無色の板状結晶で水に良く溶けます。
光に当てると分解し銀を遊離する性質(感光性)を持っています。

ハロゲン化銀

銀イオンとハロゲン化物イオンの化合物をハロゲン化銀といいます。
フッ化銀以外は水に溶けずに沈澱します。
 フッ化銀( \(\mathrm{AgF}\) ):水に溶ける。
 塩化銀( \(\mathrm{AgCl}\) ):白色沈澱
 臭化銀( \(\mathrm{AgBr}\) ):淡黄色沈澱
 ヨウ化銀( \(\mathrm{AgI}\) ):黄色沈澱
これらの沈澱に光を当てると黒色に変色します。
感光性を持っているからです。
そのため保存は褐色ビンを使います。

今ではデジタルカメラが主流なのでほとんど必要無くなりましたが、写真のフィルムはこの感光性を利用しています。

 \( \mathrm{2AgBr\rightarrow 2Ag+Br_2}\)

ハロゲン化銀のうち塩化銀はアンモニア水によく溶けますが、臭化銀やヨウ化銀はあまり溶けない、または溶けません。
※※
フッ化銀だけが水に溶けやすい理由は、電気陰性度の差で生じる結合の強さにあります。
電気陰性度はフッ素4.0、塩素は3.0、臭素は2.8で、銀は1.9です。

フッ化銀は電気陰性度の差が大きいのでイオン結合性が強く、一価のイオンどうしなのでクーロン力もそれほど強くはたらかないので水に良く溶けます。
しかし、他のハロゲンと銀では共有結合性が強くなるので水に溶けにくくなるということです。

銀イオンの反応

銀イオンを含む溶液に塩基性溶液を加えると褐色の酸化銀が沈澱します。
例えば水酸化ナトリウム水溶液や「少量の」アンモニア水を加えると

 \( \mathrm{2Ag^++2OH^-\rightarrow Ag_2O+H_2O}\)

となります。
酸化銀の沈澱は多量の、「過剰の」アンモニア水を加えると、錯イオンをつくり無色の溶液になります。
これも銅と同じですね。

 \( \mathrm{Ag_2O+H_2O+4NH_3\rightarrow 2[Ag(NH_3)_2]^++2OH^-}\)

 \(\mathrm{[Ag(NH_3)_2]^+}\) :ジアンミン銀(Ⅰ)イオン
銀イオンを含む水溶液に硫化水素を通じると、黒色の硫化銀が沈澱します。

 \( \mathrm{2Ag^++S^{2-}\rightarrow Ag_2S}\)

以上のように、銀も銅と似た性質がありますが、銀だけが持つ性質も出てきています。硝酸銀やハロゲン化銀は光で分解する感光性を持つことなどです。
錯イオンをつくることは遷移元素には共通した性質といっても良いですね。

銅の性質

⇒ 銅の単体と化合物 電解精錬とは?

と一緒に覚えてしまいましょう。

覚える事多いですが、1つひとつやって行くしかないのです。