鉄は金属の中でアルミニウムの次に多く地殻に含まれている元素です。私たちの身の回りにもたくさん使われていますが製錬方法から単体と化合物の性質までを書いておきますので確認しておいて下さい。遷移元素なので酸化数が違う化合物があります。
鉄の単体
鉄の単体は \(\mathrm{Fe_2O_3}\) を主成分とする赤鉄鉱や、\(\mathrm{Fe_3O_4}\) を主成分とする磁鉄鉱を溶鉱炉で一酸化炭素や高温の炭素によって還元して得られます。
還元される段階に応じて不純物としての炭素などの割合が変わります。
4%くらい不純物を含んだ硬いけどもろい鉄を「銑鉄(せんてつ)」といい、
さらにこの銑鉄を転炉に移して酸素を送り込んで還元を進めて不純物が2%以下になった鉄を「鋼(こう)」といいます。(鋼は「はがね」とも呼ばれますのでどちらでも良いですよ。)これが鉄の「製錬」方法です。
鋼は不純物の炭素の割合によって用途が変わります。
\( \mathrm{Fe_2O_3\rightarrow Fe_3O_4\rightarrow FeO\rightarrow Fe}\)
の順で還元されているのですが反応式は
\( \mathrm{Fe_2O_3+3CO\rightarrow 2Fe+3CO_2}\)
とまとめた形でいいです。
※
ややこしいですが、銅の「精錬」と字が違いますので注意して下さい。w
※※
宮崎駿監督の映画で「たたら」というのが出てきたことがありますが覚えてますか?
そうです。『もののけ姫』に出てくる「たたら場」です。
あれは日本古来の製鉄所で、純度が98%以上の「玉鋼(たまはがね)」と呼ばれる高純度の鉄が得られ、日本刀の材料になるほどの鋼が得られる製鉄方法です。
興味がある人は調べて見ると良いですね。
鉄の単体は酸と反応して水素を発生します。
\( \mathrm{Fe+H_2SO_4\rightarrow FeSO_4+H_2\uparrow}\)
しかし、不動態となるため濃硝酸には溶けません。
※
鉄は空気中で酸化されて+3の酸化数になりやすいですが、
\( \mathrm{2Fe+3H_2SO_4\rightarrow Fe_2(SO_4)_3+3H_2\uparrow}\)
とはなりません。水素が発生している間は酸化が進まないので+3の鉄イオンはいないからです。
反応が終了した後に水に溶け込んだ酸素と酸化が進んで行くということになります。
鉄の化合物
鉄の酸化物
湿った空気中では「サビ」て赤褐色の酸化鉄(Ⅲ)になります。
強熱すると黒色の四酸化三鉄を生じます。
酸化鉄(Ⅲ)( \(\mathrm{Fe_2O_3}\) )は粗く表面に密着していないので内部を保護する役目はありません。
実際には酸化鉄自身が水を含んだ水和物の状態でいるので鉄のサビは内部までどんどん進行していくのです。(自触媒作用)
純粋な酸化鉄(Ⅲ)は「べんがら」と呼ばれる顔料や、研磨剤として使われますね。
四酸化三鉄( \(\mathrm{Fe_3O_4}\) )は「黒さび」の成分で、簡単に言えば「磁石」ですね。
鉄は酸化数+2と+3の化合物があり、+2の酸化数の鉄は空気中で酸化されて+3に変化しやすいです。
鉄イオンの反応
水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水などの塩基性水溶液との反応は
鉄(Ⅱ)イオンの場合
\( \mathrm{Fe^{2+}+2OH^-\rightarrow Fe(OH)_2\downarrow}\)
となり、緑白色の沈澱を生じる。
鉄(Ⅲ)イオンの場合
\( \mathrm{Fe^{3+}+3OH^-\rightarrow Fe(OH)_3\downarrow}\)
となり、赤褐色の沈澱を生じる。
純粋な \(\mathrm{Fe(OH)_2}\) は白色ですが、水溶液中で容易に酸化されて \(\mathrm{Fe(OH)_3}\) との混合物となるので緑白色に見えるのです。
\( \mathrm{4Fe(OH)_2+O_2+2H_2O\rightarrow 4Fe(OH)_3}\)
この反応が進行して赤褐色となっていきます。
鉄イオンの検出
\(\mathrm{Fe^{2+}}\) を含む水溶液にヘキサシアニド鉄(Ⅲ)カリウム水溶液を加えると「ターンブル青」と呼ばれる濃青色の沈澱が生じます。
(ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)カリウム: \(\mathrm{K_3[Fe(CN)_6]}\) )
\(\mathrm{Fe^{3+}}\) を含む水溶液にヘキサシアニド鉄(Ⅱ)カリウム水溶液を加えると「紺青(こんじょう)またはベルリン青」と呼ばれる濃青色の沈澱が生じます。
(ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)カリウム: \(\mathrm{K_4[Fe(CN)_6]}\) )
また、\(\mathrm{Fe^{3+}}\) を含む水溶液にチオシアン酸カリウム( \(\mathrm{KSCN}\) )水溶液を加えると血赤色になります。
このように検出には、
鉄(Ⅱ)には三価の錯塩、
鉄(Ⅲ)には二価の錯塩を用いる、ということになります。
鉄も遷移元素で身の回りに多い金属ですので情報が多いです。
もっと多くの化合物があるので覚えるのもたいへんですが、ここに書いてあることは何とか覚えておきましょう。
もちろん銅や銀などの遷移元素
も同様です。
幅広く、基礎的な知識を問う問題が多いので、基本的なことからですよ。