ヒトは光合成を行うことはできません。
つまり無機物を有機物に変えるはたらきをヒトは持っていないということです。
葉緑体をもつ植物が光合成を行うのですが、
ここでは植物が光合成を行う場所と光合成の色素の種類について確認しておきましょう。

光合成とは

光エネルギーを利用して緑色植物などが二酸化炭素と水からデンプンなどの有機物をつくるはたらきを光合成といいます。
有機物とは炭素を含む物質をいいますが、一酸化炭素や二酸化炭素は無機物として分類されますので、無機物としての炭素化合物から有機物を生成するということです。
これはヒトではできません。

光合成ではクロロフィルなどの光合成色素が太陽の光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを利用してまずATPがつくられます。
次に、そのATPを利用して二酸化炭素( \(\mathrm{CO_2}\) )からデンプンなどの有機物が合成されます。

19世紀、つまり1800年代、
『光合成の材料は「二酸化炭素」と「水」であり、光合成の結果デンプンなどの有機物ができ、酸素( \(\mathrm{O_2}\) )が放出される。
また、
光合成の場は葉緑体であり、赤色光と青色光が利用される。』
ということが解明されていました。

20世紀(1900年代)になるとさまざまな実験が行われています。
とくに緑色植物に関する実験が多いですが細かなことまでわかるようになりました。

光合成のさまざまな解明実験

 ロビン・ヒルの実験 

二酸化炭素がない状態で葉っぱをすりつぶした液に、
電子を受け取りやすいシュウ酸鉄(Ⅲ)を入れ、光を照射すると酸素が発生した。
この反応をヒル反応といいますが、これは二酸化炭素がなくても酸素が発生するということの確認になります。
(シュウ酸鉄(Ⅲ)は還元されてシュウ酸鉄(Ⅱ)になります。)

 サムエル・ルーベンの実験 

酸素の同位体(中性子数が異なる元素) \(\mathrm{^{18}O}\) を含む水と二酸化炭素を別々のクロレラに与えると、
水( \(\mathrm{H- ^{18}O-H}\) )だけを与えた場合は、 \(\mathrm{^{18}O_2}\) が発生したが、
二酸化炭素( \(\mathrm{C^{18}O_2}\) )だけを与えた場合は、 \(\mathrm{^{18}O_2}\) は発生しなかった。

これらから光合成で発生する酸素は水に由来することがわかりました。
つまり、
光合成の際に発生する酸素は二酸化炭素の酸素から発生しているのでは無く、水から発生しているということですね。

 カルビンとベンソンの実験 

緑藻に炭素の同位体( \(\mathrm{^{14}C}\) )からなる二酸化炭素を取り込ませて光合成を行わせて、反応の経過時間とともに同位体の炭素がどの物質に取り込まれているかをペーパークロマトグラフィー法で追跡すると、経過時間によって同位体の炭素の取り込まれる生成物質が異なることから、回路状の反応経路となっていることを突き止めました。
この反応経路を解明に寄与した2人の名前を入れて「カルビン・ベンソン回路」といいます。
カルビンとベンソンは別人ですが回路名は1つの回路を示します。
回路の詳細は「光合成の仕組み」で改めて説明します。

光合成の場

光合成は緑葉(りょくよう)の棚状(さくじょう)組織や海綿(かいめん)状組織の細胞に含まれる葉緑体で行われます。
葉緑体は二重幕で包まれた直径数μmの細胞小器官です。

内膜の内部に「チラコイド」という扁平(へんぺい)な袋状構造を持っており、
この間を埋める液状部分を「ストロマ」といい、
チラコイドが重なった部分を「グラナ」といいます。

光合成の色素

緑葉の光合成色素には、青緑色の色素であるクロロフィルa、緑色のしきであるクロロフィルb、橙色の色素であるカロテン、黄色の色素のキサントフィルなどがあります。

光の波長と吸収率の関係を示したグラフを吸収スペクトルといいます。
光合成色素は主に、波長400~500nmの青色光と波長630~680nmの赤色光を吸収しますが、その間の緑色の波長や残りの波長の光は反射したり透過するため葉っぱは緑色に見えるのです。
光の波長と光合成速度の関係を示したグラフを作用スペクトルといい、吸収スペクトルと作用スペクトルのグラフはほぼ一致します。

まとめ

 緑葉の光合成の材料は二酸化炭素と水である。
 光合成は葉緑体で行われる。
 葉緑体は柵状組織と海綿状組織に多い。
 緑葉の光合成で排出される気体は酸素である。
 光合成で排出される酸素は反応系の水に由来する。
 緑葉が持つ光合成色素は、クロロフィルa、b、カロテン、キサントフィルである。
 光合成色素が最もよく吸収する波長の光は青色と赤色である。
 光の波長と吸収率の関係を示したグラフを吸収スペクトルという。
 光の波長と光合成速度の関係を示したグラフを作用スペクトルという。

以上です。

⇒ 光合成の仕組みと化学反応式(カルビン・ベンソン回路)

次は、光合成の仕組みについて詳しく見て見ることにします。