イオンは水溶液中で自由に動けるので反応は進行しやすいです。イオンが反応するといっても実際には見えないし、結果として沈澱などは出てきますが反応の仕組みはどうなっているのか、反応式はどう書けば良いのか注意点とともに見てみましょう。

イオン反応式

化学反応式とは違い、反応に関するイオンだけの変化を表した式をイオン反応式といいます。
化学反応式では左辺と右辺の原子の数をそろえましたが、
イオン反応式では原子の数だけではなく電荷の総数も等しくなるように係数を合わせます。

例えば、
硝酸銀(\(\mathrm {AgNO_3}\))水溶液と塩化ナトリウム(\(\mathrm {NaCl}\))水溶液を混合し反応させると、
塩化銀(\(\mathrm {AgCl}\))の白色沈澱を生じます。
このときの化学反応式は

 \(\mathrm {AgNO_3} + \mathrm {NaCl} → \mathrm {AgCl}↓ + \mathrm {NaNO_3}\)

です。

これは水溶液中での反応なので沈澱物質以外はそれぞれ

 \(\mathrm {AgNO_3}\) は \(\mathrm {Ag^+}\) と \(\mathrm {NO_3^-}\)

 \(\mathrm {NaCl}\) は \(\mathrm {Na^+}\) と \(\mathrm {Cl^-}\)

のように反応前はイオンとして存在しています。

イオン反応式の書き方と注意点

このイオンを用いて化学反応式を置きかえると、

 \( \mathrm {AgNO_3} + \mathrm {NaCl} → \mathrm {AgCl}↓ + \mathrm {NaNO_3}\)

は、

 \( \mathrm {Ag^+}+\mathrm {NO_3^-}+\mathrm {Na^+}+\mathrm {Cl^-} → \mathrm {AgCl}↓+\mathrm {Na^+}+\mathrm {NO_3^-}\)

のように反応します。

 \(\mathrm {AgCl}\) は沈澱として出てきますが、
 \(\mathrm {Na^+}\) や \(\mathrm {NO_3^-}\) はイオンのまま水溶液中に存在しています。

そこで、
 \(\mathrm {Na^+}\) や \(\mathrm {NO_3^-}\) は反応に関係していない、
ということで省略してイオン反応式には書きません。

この反応のイオン反応式は、

 \( \mathrm {Ag^+} + \mathrm {Cl^-} → \mathrm {AgCl}↓\)

となります。

このイオン反応式を見ると左辺と右辺の電荷も等しくなっているのが確認できます。

ところが上の硝酸銀水溶液に銅板を浸すと銅板の表面に銀が引っ付いて現れます。
(「銀が析出(せきしゅつ)する」といいます。)

このときの反応は

 \(\mathrm {Ag^+}+\mathrm {NO_3^-}+\mathrm {Cu} → \mathrm {Ag}↓+\mathrm {Cu^{2+}}+\mathrm {NO_3^-}\)

ですが、反応に関係ない \( \mathrm {NO_3^-}\) を省略すると

 \( \mathrm {Ag^+} + \mathrm {Cu} → \mathrm {Ag}↓ + \mathrm {Cu^{2+}}\)

となりますが、電荷の総数は合っていません。
左辺は1価の銀の1つ、右辺は2価の銅の2つの電荷となっています。
これをそろえる為に銀イオンを2倍します。

すると正しいイオン式

 \(\color{red}{2}\mathrm {Ag^\color{red}{+}} + \mathrm {Cu} → 2\mathrm {Ag}↓ + \mathrm {Cu^{\color{red}{2+}}}\)

となるわけです。

イオン反応式は、化学反応式をイオンに分け、反応に関係ないものは省略する。

それだけですね。
イオン式などの知識は必要ですので

⇒ イオンの分類と価数とイオン式

を参考に確認しておきましょう。

化学反応は電子的な結合が原子ごとに変化することになるのですが、
その中でもイオンは電子的なかたよりが大きい場合なので反応性が増します。