化学反応式は反応物と生成物の係数で数を調整するのですが、係数にはどういう意味があるのか気体反応の法則を含めた量的関係について見てみましょう。
反応前の反応物と、反応後の生成物を矢印で結び、原子の総数を変えずに書くということに多くの説明は必要無いでしょう。
化学反応式の例
化学反応式の係数がどのような意味を持つのか量的関係を見ていくのですが、
先ずは化学反応式の例をあげておきます。
プロパン( \(\mathrm {C_3H_8}\) )の燃焼は説明しましたので、
⇒ 化学変化と化学反応式の作り方(係数の決め方)
今回はエタン( \( \mathrm {C_2H_6}\) )を例に取り上げます。
炭化水素は燃焼(激しい酸化)して二酸化炭素(\(\mathrm {CO_2}\))と水(\(\mathrm {H_2O}\))になります。
この燃焼の反応式の係数を合わせると、
\( \mathrm {2 C_2H_6 + 7 O_2 \hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt}4CO_2+6 H_2O}\)
という反応式になりますのでこの化学反応式について考えてみましょう。
化学反応式の書き方の詳しくは
⇒ 化学変化と化学反応式の作り方(係数の決め方)
でも説明していますがここでも簡単に補足しておくと、
炭化水素が燃えると \(\mathrm{H_2O}\) と二酸化炭素 \(\mathrm{CO_2}\) ができます。
このとき酸素が必要で係数を考えずに出てくる物質だけ書くと、
\( \mathrm{C_2H_6+O_2\hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt} CO_2+H_2O}\)
となります。
次にエタンが持つ炭素の数の分だけ二酸化炭素が出てくるので
\(\mathrm{C_2H_6+O_2\hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt} \color{red}{2}CO_2+H_2O}\)
エタンにある水素の半分水が発生します。
\( \mathrm{C_2H_6+O_2\hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt} 2CO_2+\color{red}{3}H_2O}\)
ここまでは炭素と水素の数はあっています。
すべての物質で係数はそろっていませんがまだそろえなくても良いです。
残るは酸素ですが、右辺の酸素の数の合計は
\( 2\times 2+3\times 1=4+3=7\)
だから無理矢理酸素の個数を合わせると
\(\displaystyle \mathrm{C_2H_6+\color{red}{\frac{7}{2}}O_2\hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt} 2CO_2+3H_2O}\)
反応式は整数係数で書くことになっているので全体を2倍します。
\( \mathrm{\color{red}{2}C_2H_6+\color{red}{7}O_2\hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt} \color{red}{4}CO_2+\color{red}{6}H_2O}\)
化学反応式の量的意味
反応物であるエタンと酸素、生成物である二酸化炭素と水の総原子数は変わらない。
これは化学反応式の説明
⇒ 化学変化と化学反応式の作り方(係数の決め方)
でも説明しています。
係数の意味は、
エタン2分子と酸素7分子が反応し、
二酸化炭素4分子と水分子6分子が生成するということです。
\( \mathrm{2C_2H_6+7O_2\hspace{7pt}\rightarrow \hspace{7pt} 4CO_2+6H_2O}\)
物質量でも同じことがいえます。
エタン2molと酸素分子7molが反応し、
二酸化炭素4molと水分子6molが生成するということでもあるのです。
つまり分子の数的な比(物質量の比)は一定だということですね。
質量でも比は一定になりますが、係数の比ではありません。
エタノール2gと酸素が7g反応するわけではありませんので注意して下さい。
分子量はエタノール30、酸素32、二酸化炭素44、水18なので
反応物の質量比は、
エタノール 30×2=60
酸素 32×7=224
このとき生成物は、
二酸化炭素 44×4=156
水 18×6=108
の質量比で反応します。
エタノール60gと酸素224gが反応し、
二酸化炭素156gと水108gが発生するということですね。
とにかく、物質量の比であることを意識しておけば問題ありません。
物質量を質量に換算することはできるでしょう?
分子量や式量にmolをかければ出てきます。
\((質量)=(式量)\times (物質量)\)
化学反応式における気体の量的関係
気体の体積も物質量に比例します。
なのでエタンと酸素が反応する体積の比も2:7です。
このとき二酸化炭素の体積も係数に比例するので、
反応するエタンと酸素と生成する二酸化炭素の比は2:7:4という整数比で表せます。
気体反応において体積比が整数で表せることを気体反応の法則といいます。
標準状態では1molの気体は22.4Lなので、
これらの比に22.4を乗じた体積比で反応し生成するということです。
水は、標準状態では液体になっていると考えられるので気体としては体積は考えません。
(6モルの水なので液体としては108mLの体積です。)
まとめ
化学反応式における係数は、
反応する物質も生成する物質も物質量(mol)の比になっています。
だから物質量から質量や体積への換算さえできれば問題ありません。
ただし、化学反応式では反応の速さは分かりません。
それと反応物と生成物との間には、
反応前と反応後とで原子全体の総和での質量変化はしていない、
質量保存の法則
⇒ 質量保存の法則や定比例、倍数比例などの基本法則
が成り立っているということを忘れないで下さい。
何度も言いますが、化学反応式は整数比で表せるので、
反応物と生成物の分子式や組成式が書けるかどうかが問題になってきます。
物質名と化学式はできるだけ覚えて行きましょう。
物質量や気体の体積の復習は、
⇒ 物質量とmol(モル)とアボガドロ定数
や
⇒ アボガドロの法則 気体の体積と物質量
でしておくといいでしょう。