塩(えん)とは酸の陰イオンと塩基の陽イオンが結びついた中和反応において水とともにできる産物です。
塩を加水分解する(水に溶かす)とその水溶液の性質は構成する物質によって変わります。反応式とともに見てみましょう。

塩の加水分解

塩を水に溶かすと、弱酸や弱塩基のイオンが水と反応してもとの弱酸や弱塩基にもどり、塩の水溶液が酸性や塩基性を示します。
この現象を塩の加水分解といいます。

加水分解された塩の水溶液の性質は、塩を構成している酸や塩基の強さによって変わります。

塩とは

塩の性質を見ていく前に塩とは何かの確認をしておきましょう。
例えば、塩酸と水酸化ナトリウムを反応させると
 \(\hspace{4pt}\mathrm{HCl+NaOH \rightarrow NaCl + H_2O}\)
のように中和反応が起こります。
このときの\(\,\mathrm{NaCl}\,\)のように、
中和反応により水とともに生成する物質をといいます。 

塩の構成による水溶液の性質

 強酸強塩基でできている塩は、加水分解せず中性を示します。

 強酸+弱塩基でできている塩は、加水分解して酸性を示します。

 弱酸+強塩基でできている塩は、加水分解して塩基性を示します。

あれ?と思った人は場合分けが出来ていますね。笑
そうです。
弱酸と弱塩基の組み合わせがありませんが、この場合酸性、塩基性がはっきり決まりません。
だいたいは中性となりますが酸性、塩基性の若干の違いで変わってきます。

加水分解の反応と反応式

塩は水に溶かすとイオンに別れます。
電離したイオンのうち完全に電離していない状態になる物質もあります。
電離度が小さい物質ですね。
そのため電離した水のイオンに偏りが出てきてそれが酸性、塩基性を示すというわけです。

例えば酢酸ナトリウム(\(\mathrm {CH_3COONa}\))を水に溶かすと、
酢酸ナトリウムは完全に電離しますが、水はわずかに電離しています。

 \(\mathrm {CH_3COONa} → \mathrm {CH_3COO^-} + \mathrm {Na^+}\)

 \(\mathrm {H_2O} → \mathrm {H^+} + \mathrm {OH^-}\)

ここで出てきたイオンのうちナトリウムイオンと水酸化物イオンは結合しにくいのでイオンのままでいますが、
酢酸イオンは水素イオンと結合しやすくて、酢酸にもどるものが出てきます。

 \(\mathrm {CH_3COO^-} + \mathrm {H^+} \rightleftharpoons \mathrm {CH_3COOH}\)

この反応は平衡状態にあると言いますが、
右にかたより、酢酸でいる分子が酢酸イオンになるものより多くなります。
(酢酸は電離しにくい物質なのです。)

つまり、
酢酸ナトリウムを水に溶かすと酢酸イオンができますが、
その酢酸イオンは水の水素イオンと結合し酢酸にもどる、
ということです。

この結果、

 \( \mathrm {CH_3COONa}+\mathrm {H_2O} \rightarrow \mathrm {CH_3COOH}+ \mathrm {Na^+}+ \mathrm {\color{red}{OH^-}}\)

という反応式で表され、\( \mathrm {\color{red}{OH^-}}\) が多い状態ができます。
このため水溶液は塩基性を示すことになるのです。

 \( \mathrm {CH_3COO^-}\,+\,\mathrm {H^+}\,\rightleftharpoons\,\mathrm {CH_3COOH}\)

の「 \(\rightleftharpoons\) 」は“平衡”を意味していて、一方的でなくて、どちらにも移動するということです。

電離度の小さい酢酸では、完全に電離して酢酸イオンになるのでなく、
酢酸の状態にもどっているものも多くあるということで、
水の中の水素イオンが水酸化物イオンより少ない状態になるということですね。

これらの反応は日本語で物質を見ると分かりにくいので、できるだけ反応式を書いて考えるようにすると良いです。

弱酸、弱塩基の遊離

弱酸の塩にそれよりも強い酸(強酸)を加えると弱酸が遊離します。
(もとの塩から弱酸が離れて別に酸を作るということです。)

例えば、
酢酸ナトリウム(\(\mathrm {CH_3COONa}\))の水溶液に酢酸より強い酸の塩酸を加えると、

 \(\mathrm {CH_3COONa}\,+\,\mathrm {HCl}\,\rightarrow\,\mathrm {CH_3COOH}\,+\,\mathrm {NaCl}\)

の反応が起こり、酢酸ができます。
(実験室でこの反応をさせると臭いで分かります。)

より強い酸を加えることで酢酸に引っ付く水素イオンが増えるということですね。

水素イオンが増えると平衡状態にある酢酸は酢酸イオンを減らし、
酢酸になろうとすることが理由です。

 \( \mathrm {CH_3COOH}\,\rightleftharpoons\,\mathrm {CH_3COO^-}\,+\,\mathrm {H^+}\)

の反応が左に偏るのです。

これは化学平衡で詳しく説明しますが、上の酢酸の平衡で、
 右辺の水素イオンを増やすと、
左辺に平衡が移動します。
(左辺の物質が増えるということです。)

あまり気にすることはありませんが、
\(\,\mathrm{NaCl}\,\)は水溶液中では電離していて、
 \(\hspace{4pt}\mathrm{Na^+\,,\,Cl^-}\)イオンとして別々に存在しています。

化学平衡はまだ先で良いです。
ただし、強い酸として塩酸、硫酸、硝酸
 \(\hspace{4pt}\mathrm{HCl\,,\,H_2SO_4\,,\,HNO_3}\)
は覚えておきましょう。

中和反応と塩の性質はしっかり復習しておきましょう。

⇒ 中和反応によってできる塩の性質と種類

次は中和反応における量の関係です。

⇒ 中和反応の量的関係と中和の公式

中和というのは酸と塩基が量的に等しい状態です。