ほとんどの化学反応は可逆反応ですが、可逆反応と不可逆反応との違いは何か知っていますか?また化学平衡の状態とはどういう状態かを知っておきましょう。この平衡状態を理解すれば溶液などの平衡状態も納得がいくと思います。

可逆反応とは

可逆反応の例で良く出てくる反応なのでですが、水素とヨウ素とを密閉容器に入れ高温にするとヨウ化水素が生成して、水素とヨウ素とヨウ化水素が混在した状態になります。

 \(\mathrm{H_2+I_2 \,\rightleftharpoons \,2HI}\) ・・・①

逆にヨウ化水素だけを容器に入れてもその一部が水素とヨウ素になります。

 \(\mathrm{2HI \,\rightleftharpoons \,H_2+I_2}\) ・・・②

このように左から右、右から左へと両方に進む反応を可逆反応(かぎゃくはんのう)といい、
記号「 \(\color{red}{\rightleftharpoons}\) 」を用いて反応式を表します。
左から右に進む反応を「正反応」、
右から左に進む反応を「逆反応」、
といいます。
(「逆反応」は正反応に対する反応だからといって負反応とはいいませんよ。)

それぞれの反応式における左右ですので①と②では正反応が違います。
①の反応ではヨウ素が生成する方向が正反応となり、
②の反応ではヨウ化水素が分解される方向が正反応となりますので注意して下さい。

不可逆反応とは

可逆反応と違い一方向だけに進む反応を不可逆反応といいます。
反応熱の大きい燃焼、気体を発生し外部に出ていく反応、沈澱を生じる反応などが不可逆反応になります。

詳しくいうと、密閉された容器の中では反応物と生成物が共存しているのでほとんどの化学反応は後で出てくる平衡状態となるので可逆反応だといって良いです。逆反応が起こるかどうかは活性化エネルギーを超えることができるかどうかなので、反応熱が大きな反応ほど起こりにくくなりますが、発生した気体を逃がしたり沈澱を取り除かず閉じ込めておけば逆の反応も起こり得るということなのです。

⇒ 活性化エネルギーの求め方と触媒による活性化状態の変化

化学平衡

可逆反応では正反応と逆反応との両方の反応が起こっています。

 \( \mathrm{H_2+I_2 \rightleftharpoons 2HI}\)

で水素とヨウ素だけを入れた密閉容器で加熱すると、正反応が始まり勢いよくヨウ化水素が生成しますが、しばらくするとヨウ化水素の一部は逆反応によって水素とヨウ素にもどります。
正反応の速度を\(v_1\)、逆反応の速度を\(v_2\)とすると、
最初は\(v_1\)の方が大きいですが、だんだんと\(v_1\)が小さくなり、逆に\(v_2\)が大きくなってきます。
そして、\(v_1=v_2\) となると見かけ上反応が止まったかのようになります。
この状態を「平衡状態」(または「化学平衡の状態」)といいます。

平衡状態では反応物の濃度と生成物の濃度はどちらも一定となります。
上の反応では水素濃度(\(\mathrm{[H_2]}\))、ヨウ素濃度(\(\mathrm{[I_2]}\))、ヨウ化水素の濃度(\(\mathrm{[HI]}\))が一定になるということです。

平衡状態では反応が止まっているのではなくて、正反応の速度と逆反応の速度が同じになっている状態で、「見かけ上」止まって見えるだけです。

温度を変えなければ正反応と逆反応を入れかえても平衡状態は変わりません。
例えば、450℃で水素とヨウ素を同量(同じモル)反応させてヨウ化水素を生成させるといずれ平衡状態となりモル比は、おおよそ1:1:8となります。

 \( \mathrm{H_2+I_2 \,\rightleftharpoons\, 2HI}\)

 \( \mathrm{[H_2]:[I_2]:[HI]=1:1:8}\)

逆にヨウ化水素を分解して平衡に達したときも同じモル比になります。

 \( \mathrm{2HI \rightleftharpoons H_2+I_2}\)

 \( \mathrm{[HI]:[H_2]:[I_2]=8:1:1}\)

この数字は覚える必要はありませんが、可逆反応において右から始めても左から始めても化学平衡の状態は同じだということは覚えておきましょう。

化学平衡の法則と平衡定数は計算問題を含めた方が良いので別のところに書いておきます。
平衡定数の求め方は

⇒ 平衡定数の求め方と化学平衡の法則(質量作用の法則)

を参考にして下さい。

先ずは平衡の意味を覚えておいて下さいね。