2018年(平成30年)度センター試験化学の過去問第5問は必答、第6,7問(選択問題)の解説です。
第5問は高分子、第6問は樹脂、第7問はタンパク質と酵素についてですが、どちらを選んでも大差はないでしょう。
第7問の計算問題は意味が取りづらかったかもしれません。
第6問と第7問は見た目ではどちらを選択するか迷うところですね。
2018年(平成30年)度センタ試験化学の問題(第5問から第7問)
問題はこちら(大学入試センターにもあります。)
⇒ 2018年平成30年度センター試験化学第5問から第7問の問題
でも、計算問題もやってみるとたいしたことは無いんですよ。
2018年センター試験化学第5問の解説
第5問は必答問題なのでちゃちゃっと済ませます。
問1
ビニロンは京大の桜田先生です。
ポリビニルアルコールのアセタル化です。
「ポリ酢酸ビニル」
ポリは「たくさんの」
酢酸は「酢酸 \(\mathrm{CH_3COOH}\) 」
ビニルは「ビニル基 \(\mathrm{H_2C=CH-}\) 」
酢酸ビニルはビニルアルコールと酢酸のエステルです。
\( \mathrm{H_2C=CH-0-CO-CH_3}\)
この炭素間の二重結合が開いて次々につながったものがポリ酢酸ビニルなので、
カルボキシ基 \(\mathrm{-COOH}\) はありません。
ちなみにポリエチレンテレフタラート
\( \mathrm{(-O-CO-C_6H_4-CO-O-CH_2-CH_2-)}_n\)
はペットボトルの「PET」です。
1:②
問2
アミロースは直鎖状の構造をしていますが、結合角度の違いによってらせん構造をしています。
デンプンはアミロースとアミロペクチンの混合物で、水溶液はヨウ素デンプン反応を示します。
アミロースは濃青色、アミロペクチンは赤紫色に呈色します。
2:③
第6問(選択問題)の解説
問1
熱硬化性樹脂についてです。
合成樹脂の中で熱を加えると軟化する熱可塑性樹脂と、熱を加えても軟化せずに逆に硬化してしまう熱硬化性樹脂があります。
ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポチメタクリル樹脂などは、
ビニル基の重合体で直鎖状のポリマーとなるので熱可塑性樹脂となります。
一方で、
フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などは立体的な網目構造をもつ熱硬化性樹脂となります。
1:①
問2
重合度と炭素数の計算問題です。
ヘキサメチレンジアミン
\( \mathrm{H_2N-(CH_2)_6-NH_2}\)
を見たとき「6.6-ナイロン」かなとも思いましたが違いました。笑
簡単な計算で確認できますのでやってみましょう。
\( \mathrm{(-CO-(CH_2)}_x-\mathrm{CO-NH-(CH_2)-NH-)_n}\)
平均重合度: \(100\)
平均分子量: \(2.82\times 10^4\)
ということなのでこの高分子は100個つながっています。
各原子が繰り返し単位に
\( \mathrm{C}:(8+x)\)
\( \mathrm{N}:2\)
\( \mathrm{O}:2\)
\( \mathrm{H}:2x+14\)
個ずつあるのでその平均分子量は、
\( 100\{12\cdot (8+x)+14\cdot 2+16\cdot 2+1\cdot (2x+14)\}\)
これが問題に与えられた平均分子量に等しくなるので、
\( 100\{12(8+x)+28+32+(2x+14)\}=2.82\times 10^4\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 12(8+x)+28+32+(2x+14)=2.82\times 10^2\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 96+12x+28+32+2x+14=282\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 14x=112\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \underline{x=8}\)
2:③
第7問(選択問題)の解説
問1
タンパク質についてです。
「変性」は知っているでしょう。
熱を加えて一度変性した(もとの性質を失った)タンパク質はもとの性質には戻りません。
タンパク質は立体構造をしていて熱によって(だいたい60℃以上)その立体構造が壊れるので元に戻れないのです。
1:⑤
問2
インベルターゼはスクロース(ショ糖)の分解酵素です。
分解後の還元性を示すもの、示さないもののmol数がありますが、
どれが還元性を示すのか、それがわからないと溶けない問題です。
スクロース → グルコース + フルクトース
このうち還元性を示すのは「グルコース」と「フルクトース」です。
「スクロース」は還元性を示しません。
「一部のスクロース」が加水分解されたのでスクロースは残っていることを見逃さないでください。
数式として求めることもできますが、小学生でもわかるようにしましょう。
還元性を示す糖類が \(3.6\) なので、
グルコースとフルクトースを合わせると \(3.6\) ということです。
これはスクロースが分解されて出来たものなので、
分解されたスクロースは半分の \(1.8\) だったということになります。
還元性を示さない物質(A)から、2つの還元性を示す物質(B,C)ができるからですね。
さらに、還元性を示さないスクロースは \(4.0\) 残っているので、
加水分解する前の「もとのスクロース水溶液」には合わせて
\( 1.8+4.0=\underline{5.8}\) (mol)
2:④
2018年センター試験化学の問題はここまでです。
対策の仕方は特別にはありません。
⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説
共通テストになっても基本を広い範囲で繰り返すことです。