アルカリ金属は周期表1族元素で水素を除いた金属元素をいいますが、元素名と単体と化合物の性質を見ておきましょう。アルカリ金属やハロゲンなどのように族に名前がついているものは試験に良く出ますよ。アンモニアソーダ法(ソルベー法)についても説明しておきます。

アルカリ金属の単体

水素は金属ではありませんので、水素を除く周期表の1族の金属元素をアルカリ金属といいます。
 リチウム(\(\mathrm{Li}\))
 ナトリウム(\(\mathrm{Na}\))
 カリウム(\(\mathrm{K}\))
 ルビジウム(\(\mathrm{Rb}\))
 セシウム(\(\mathrm{Cs}\))
 フランシウム(\(\mathrm{Fr}\))
(「ひどい!」リッチな彼はルビーをせしめてフランスへ)
覚え方はどうでも良いですが(笑)、カリウムは周期表20までの元素になるので上から3番目までは必ず覚えておいた方が良いです。

アルカリ金属は他の金属に比べると融点が低く、アルカリ金属どうしで比べても原子番号が大きくなるにつれて金属結合が弱くなり融点が低くなります。
また金属という割に柔らかくナイフで切れます。
切り口は銀白色で光沢のある切り口ですがすぐに酸化されて金属光沢はなくなります。
イオン化傾向が大きく1価の陽イオンになりやすく還元剤と使用することが多いです。
これも原子番号が大きいほど傾向は強くなります。
反応性が強く水と反応して水素を発生し水酸化物になります。
この水酸化物は強い塩基性を示します。
ナトリウムやカリウムは空気中の水蒸気とも、もちろん水中でも反応しますので石油中で保存します。
アルカリ金属に限りませんが炎色反応を示すので色によって金属元素の特定が可能となります。
リチウムは「赤色」、ナトリウムは「黄色」、カリウムは「紫色」です。

⇒ 物質の成分元素の検出 沈殿と炎色反応

イオン化傾向と炎色反応の色は覚えておいた方がいいですよ。

アルカリ金属の化合物

アルカリ金属の中でも最も代表的なナトリウムの化合物について示しておきます。

水酸化ナトリウム

(\(\mathrm{NaOH}\))

水酸化ナトリウムは塩化ナトリウム水溶液を電気分解し、陰極付近の溶液を濃縮することで得られます。(イオン交換膜法)
無色半透明の固体で、水に良く溶け、空気中の水を吸収する潮解性(結晶の表面が濡れてくる現象です)を持っていて、強い塩基性を示します。
二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムになります。

 \( \mathrm{2NaOH+CO_2\rightarrow Na_2CO_3+H_2O}\)

少しややこしいのが、
炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの酸性度(塩基性の強さ)などの性質の違いです。
 「炭酸ナトリウム」は水に良く溶け、強い塩基性を示します。
 「炭酸水素ナトリウム」は水に少し溶けて、弱い塩基性を示します。
どちらも強酸を加えると熱分解して二酸化炭素が発生しますが、炭酸ナトリウムは強酸を加えずに加熱しても二酸化炭素は発生しません。
(炭酸水素ナトリウムは二酸化炭素が発生します。)

炭酸ナトリウム10水和物(\(\mathrm{Na_2CO_3\cdot 10H_2O}\))を空気中に長時間放置しておくと粉末状にボロボロとくずれてきますが、このように結晶水が失われ結晶が壊れて粉末状になることを「風解」といいます。

水の出入りで見れば「潮解」と反対の意味に使われます。結晶水の離脱は水蒸気圧に関係していますので密閉容器では起こりません。

炭酸ナトリウム

(\(\mathrm{Na_2CO_3}\))

工業的製法の1つに名前がついているものがあるので紹介しておきます。

炭酸ナトリウムの製法「ソルベー法」(アンモニアソーダ法)

先ず反応経路を簡単に示します。

飽和した塩化ナトリウム水溶液に十分なアンモニアを吸収させて二酸化炭素を通じると炭酸水素ナトリウムの沈澱を生じます。

 \( \mathrm{NaCl+NH_3+CO_2+H_2O\rightarrow NaHCO_3\downarrow +NH_4Cl}\)

炭酸水素ナトリウムの沈澱をろ別し、加熱すると炭酸ナトリウムが得られます。

 \( \mathrm{2NaHCO_3\rightarrow Na_2CO_3+CO_2\uparrow +H_2O}\)

この反応で二酸化炭素は半分は回収できますが、
不足分を石灰石を熱分解することで補います。

 \( \mathrm{CaCO_3\rightarrow CaO+CO_2\uparrow}\)

この反応で生成した酸化カルシウムは水と反応させて水酸化カルシウムとした後、最初の反応で生成した塩化アンモニウムと反応させてアンモニアを回収します。
 
 \( \mathrm{2NH_4Cl+Ca(OH)_2\rightarrow CaCl_2+2NH_3\uparrow +2H_2O}\)

中間生成物を除くと、

 \( \mathrm{2NaCl+CaCO_3\rightarrow Na_2CO_3+CaCl_2}\)

石灰石と塩化ナトリウムという安価な原料から、反応途中で出てくる二酸化炭素やアンモニアを徹底的に利用することで無駄なく、経済的で、かつ、化学的法則や性質をふんだんに活用し、炭酸ナトリウムを生成できる方法をアンモニアソーダ法といいます。
工業的な装置を作り出し、工業化を可能とした人物の名前から「ソルベー法」ともいわれいます。

上の反応式を覚えておけば問題ありません。
が、化学的法則がどのように活用されているのか簡単にですが説明しておきます。
先ずアンモニアを十分吸収させている点ですが、二酸化炭素の溶解度を増やしています。
さらに混在したイオンの組合せのうち溶解度の小さな炭酸水素ナトリウムが沈澱しますが、これを取り除くことでさらに反応を進めることにもなります。
炭酸カルシウムは水に不溶なので本来なら最後の反応式は左に進行するはずが、アンモニアを混在させることにより右への反応を可能としています。
何よりアンモニアや二酸化炭素が再利用できる経路であることから効率が非常に良いですよね。
※※
塩化カルシウムは用途が少なく、塩化アンモニウムは化学肥料などでも利用出来るので、塩化アンモニウムの発生段階で取り除く製法もとられています。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)、
 「アンモニアを利用したソーダ灰(炭酸ナトリウム)の生成方法」
覚えておいて下さい。

ここはアルカリ金属の話がメインなので

⇒ 元素の周期律と周期表 周期と族の違い

周期表は確認しておきましょう。

次はアルカリ土類金属ですね。

⇒ アルカリ土類金属単体の性質とその化合物

ここは塩の性質(溶解度など)が少しややこしいです。

考えるより、覚えた方がはやいかもしれません。w