2020年度に行われたセンター試験化学の問題と第3問の解説です。
第3問は無機物質の性質、定性分析や電気量の計算問題などです。
電気量のファラデー定数は与えられていますので、時間と電流とクーロンの関係を覚えているかどうかですね。


第\(\,3\,\)問の問題です。

⇒  2020度センター試験化学第3問の問題

第3問無機物と酸化物の性質と金属イオンの定性分析および電気量

第\(\,3\,\)問は無機化学の問題です。
無機物の性質、酸化物の性質、金属イオンの混合溶液の分離方法やニッケル水素電池の蓄電できる電気量の計算問題があります。

〔問1〕無機物質の性質

誤りを含むものを探します。

ニッケルとクロムの合金であるニクロムは、
 (\(\hspace{10pt}\mathrm{Ni:Cr=8:2}\hspace{10pt}\))
銅に比べて電気抵抗が大きい(電気が流れにくい)ので発熱しやすくドライヤーなどの熱線に使われます。

一般的に2つの金属が混じってできた合金は、
結晶構造の乱れが起こるので硬くはなりますが、
自由電子が動きにくくなるので電気や熱の伝導性は悪くなります。

\(\,\fbox{ 1 }\,\)の答え \(\,\underline{ ① }\,\)

他は正しいです。
②のアルミニウムの酸化皮膜は化学基礎でも出ていましたが、
(詳しくは聞かれていないけど)
被膜がアルミニウムの表面を緻密に覆うのでアルムニウムが酸化されないように見えますが、
すでに酸化されていて、それ以上酸化されにくいというだけです。

〔問2〕酸化物の性質

①銀イオン\(\,\mathrm{Ag^+}\,\)を含む水溶液に\(\,\mathrm{NaOH}\,\)を加えると黒色の\(\,\mathrm{Ag_2O}\,\)が沈殿します。

 \(\hspace{10pt}\mathrm{2Ag^++2OH\rightarrow Ag_2O\downarrow +H_0}\)

②銅イオン\(\,\mathrm{Cu^{2+}}\,\)を含む水溶液に\(\,\mathrm{NaOH}\,\)を加えると水酸化銅\(\,\mathrm{(Ⅱ)}\,\)が沈殿します。
これを加熱(かなり高温に)すると酸化銅に変化します。

 \(\hspace{10pt}\,\mathrm{CuSO_4+2NaOH\rightarrow Cu(OH)_2}\,\)
 \(\hspace{10pt}\mathrm{Cu(OH)_2\overset{ 650℃ }{\longrightarrow} CuO+H_2O}\)

③この反応では\(\,\mathrm{MnO_2}\,\)自体は変化しないので触媒として働いています。

 \(\hspace{10pt}\mathrm{2H_2O_2\overset{MnO_2}{\longrightarrow} 2H_2O+O_2}\uparrow\)

④\(\,\mathrm{SiO_2}\,\)はダイヤモンドに似た構造をしていて安定していますが、フッ化水素やフッ化水素酸には溶けます。

 \(\hspace{10pt}\mathrm{SiO_2+4HF(g)\,\rightarrow SiF_4\uparrow +2H_2O}\)

 \(\hspace{10pt}\mathrm{SiO_2+6HF(aq)\,\rightarrow H_2SiF_6 +2H_2O}\)

\(\,\fbox{ 2 }\,\)の答え \(\,\underline{ ③ }\,\)

〔問3〕金属イオンの定性分析

金属イオンが分離しやすい4つなので操作は2回で分離できます。
ただ、操作\(\,Ⅱ\,\)が同じなのでちょっと戸惑ったかもしれません。

⇒ 金属イオンの定性分析 分属と系統分析の方法

水溶液アには、
 \(\hspace{10pt}\mathrm{Ag^+\,,\,Al^{3+}\,,\,Pb^{2+}\,,\,Zn^{2+}}\)
が入っています。

操作\(\,Ⅰ\,\) 希塩酸を加える。

沈殿\(\,\mathrm{A}\,\)
 \(\hspace{10pt}\mathrm{AgCl}\,,\,\mathrm{PbCl_2}\)
ろ液\(\,\mathrm{B}\,\)
 \(\hspace{10pt}\mathrm{Al^{+3}\,,\,Zn^{2+}}\)

操作\(\,Ⅱ\,\) 過剰のアンモニア水を加える。

沈殿\(\,\mathrm{A}\,\)から出てくる沈殿\(\,\mathrm{C}\,\)とろ液\(\,\mathrm{D}\,\)は、
 沈殿\(\,\mathrm{C:PbCl_2}\,\)
 ろ液\(\,\mathrm{D:Ag[NH_3]_2^+}\,\)

 \(\hspace{10pt}\mathrm{AgCl+2NH_3\rightarrow Ag[NH_3]_2^++Cl^-}\)

\(\,\fbox{ 3 }\,\)の答え \(\,\underline{ ② }\,\)

ろ液\(\,\mathrm{B}\,\)から出てくる沈殿\(\,\mathrm{E}\,\)とろ液\(\,\mathrm{F}\,\)は、
 沈殿\(\,\mathrm{E:Al(OH)_3}\,\)
 ろ液\(\,\mathrm{F:Zn^{2+}}\,\)

 \(\hspace{10pt}\mathrm{Al^{3+}+3OH^-\rightarrow Al(OH)_3}\)

沈殿\(\,\mathrm{A}\,\)に熱湯をかけると\(\,\mathrm{PbCl_2}\,\)は溶けるのですが、
操作\(\,Ⅱ\,\)はろ液\(\,\mathrm{B}\,\)にも共通の操作なので過剰のアンモニア水を加えることになります。
沈殿\(\,\mathrm{A}\,\)については聞かれていないので関係ありませんけどね。

答え \(\fbox{ 4 } \underline{ ① } \fbox{ 5 } \underline{ ② } \fbox{ 6 } \underline{ ④ }\)

〔問4〕カルシウムの化学反応

アルカリ土類金属は冷水と反応して水素を発生します。
 \(\hspace{10pt}\mathrm{Ca+2H_2O\rightarrow \color{red}{Ca(OH)_2}(\color{blue}{A})+H_2}\)
アルカリ土類金属の水酸化物は強塩基です。

石灰水に二酸化炭素を通じると炭酸カルシウムの沈殿を生じます。
 \(\hspace{10pt}\mathrm{Ca(OH)_2+CO_2\rightarrow \color{red}{CaCO_3}(\color{blue}{B})\downarrow +H_2O}\)

炭酸カルシウムの沈殿に過剰の二酸化炭素を通じると、
炭酸水素カルシウムを生じて溶けます。
 \(\hspace{10pt}\mathrm{CaCO_3+CO_2+H_2O \rightleftharpoons \color{red}{Ca(HCO_3)_2}(\color{blue}{C})}\)
これは可逆反応で加熱すると炭酸カルシウムが沈殿します。

炭酸カルシウムを\(\,1000\,\)℃くらいまで加熱すると熱分解します。
 \(\hspace{10pt}\mathrm{CaCO_3 \rightarrow \color{red}{CaO}(\color{blue}{D})+CO_2}\uparrow \)
生石灰(酸化カルシウム)に水を加えると水酸化カルシウムになります。
 \(\hspace{10pt}\mathrm{CaO+H_2O\rightarrow Ca(OH)_2}\)

\(\,\fbox{ 7 }\,\)の答え \(\,\underline{ ① }\,\)

〔問5〕ファラデー定数と電気量

\(\,\mathrm{1\,A}\,\)の電流が\(\,\mathrm{1}\,\)秒間流れたときの電気量が\(\,\mathrm{1\,C\,(A\cdot s)}\,\)です。

⇒ ファラデーの電気分解の法則 電気素量とファラデー定数

\(\,\mathrm{6.7\,\color{red}{kg}}\,\)の\(\,\mathrm{Ni(OH)_2}\,\)は式量が\(\,\mathrm{93}\,\)なので
 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{6.7\times 10^3}{93}\,(\mathrm{mol})\)

ファラデー定数\(\,\mathrm{9.65\times 10^4\,C/mol}\,\)は電子\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)の電気量なので、
\(\,\mathrm{6.7\,kg}\,\)の\(\,\mathrm{Ni(OH)_2}\,\)電気量は
 \(\hspace{10pt}\displaystyle 9.65\times 10^4\times \frac{6.7\times 10^3}{93}\\
\displaystyle =\frac{9.65\times 6.7}{93}\times 10^7(\mathrm{C})\)

ただし、これは\(\,\mathrm{A\cdot s\,(\,秒\,)}\,\)なので時間\(\,\mathrm{(\,h\,)}\,\)に換算すると、
 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{9.65\times 6.7}{93}\times 10^7\times \color{blue}{\frac{1}{3600}}\\
≒1.9\times 10^3\,(\mathrm{A\cdot h})\)

\(\,\fbox{ 8 }\,\)の答え \(\,\underline{ ④ }\,\)

第\(\,3\,\)問はここまでです。

⇒ 2020年度センター試験化学の問題(第4,5,6,7問)と解説

第\(\,4\,\)問、第\(\,5\,\)問は有機化学です。
長くならないようにまとめて解説します。
(それほど長くならなかったので選択問題も一緒にまとめました。)

⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説

無機化学も広い範囲から出題されるので覚えることが多いですが、
基本中心であることは変わりません。