分子間にはいろいろな力が働いています。ファンデルワールス力もその1つですが、あまりむずかしく考えず化学の基礎としての用語を覚える事にましょう。分子は単独で存在しているのですが分子間力によって結晶もつくります。その仕組みも見てみましょう。
分子間力
無極性の分子は電荷を帯びていませんが、分子と分子が近づくと分子間に引き合う弱い力がはたらきます。
この引力を分子間力またはファンデルワールス力といいます。
分子構造が似たものを比べると分子量(分子の質量)が大きくなればなるほど分子間力が大きくなり融点や沸点は高くなります。
また、分子量が同じくらいの極性分子と無極性分子とを比べると極性分子の方が融点や沸点は高くなります。
これは極性分子では静電気的な引力がはたらき無極性分子よりも分子間力が強くなるためです。
※
ファンデルワールス力や極性分子間にはたらく極性引力や、
後で出てくる水素結合などの分子間にはたらく引力を総称して分子間力というのです。
分子間力とファンデルワールス力は同じものではありませんが、同じ意味で使われることもあります。
分子間力の強さと物質の状態
分子間力は弱い引力ですが、分子間力の大きさによって物質の常温での状態(常態)が変化します。
分子量が大きくなると分子間力も強くなるので分子量の大きいものほど常態は気体、液体、固体と状態が変わっていきます。
例えば、
空気の主成分である酸素( \(\mathrm {O_2}\) )や窒素( \(\mathrm {N_2}\) )は分子間力が弱いので常温で気体です。
ヘキサン( \(\mathrm {C_6H_{14}}\) )やヘプタン( \(\mathrm {C_7H_{16}}\) )は分子間力が中程度といえ常温で液体です。
分子間力の強いナフタレン( \(\mathrm {C_{10}H_8}\) )などは常温で固体です。
分子結晶
分子間力であるファンデルワールス力によって分子が規則正しく並んでできた結晶を分子結晶といいます。
二酸化炭素( \(\mathrm {CO_2}\) )の結晶であるドライアイスやヨウ素( \(\mathrm {I_2}\) )などのような結晶です。
分子結晶は弱い分子間力でできた結晶ですので融点は低く柔らかいという特徴があります。
また固体から気体に直接状態変化する昇華性を示すものも多いです。
ドライアイスをイメージすると分かり易いでしょう。
固体も液体も電気を通さないものが多いです。
ただし、常温での状態は上記の通りですが、酸素や窒素でもものすごく低温にすると液体にもなります。
これは熱運動がおさまり、分子間力が有効に働いて分子結晶となるということです。
昇華性を示すものが多いのも、少しの温度上昇で熱運動は一気に活発になるので分子間力を超えて結晶から飛び出すからです。
分子間力というのは、それくらい弱い力だということですね。
分子ほど小さいレベルでの引力なので当然ですが、
分子の表面積が「大きい分子」ほど分子間力は「強く」なり、
分子の表面積が「小さい分子」ほど分子間力も「小さく」なる、
というのも同じくらいの分子量で比べるといえることです。
今は分子の形をおおよそで良いので、
⇒ 共有結合の種類と構造式の書き方
や、
⇒ 共有結合の種類と分子の形と結晶
で分子の構造や形をイメージ出来るくらいにはしておく方が良いかもしれませんね。