空気中に大量に存在する窒素ですが無機物の窒素化合物と有機物としての窒素化合物は別物です。
有機物の窒素化合物は生物にとって非常に重要ですが、動物と植物で窒素同化と窒素固定の方法は違っています。
タンパク質の元となるアミノ酸も窒素化合物なのでしくみを見ておきましょう。

植物の窒素同化

アミノ酸、タンパク質、DNA、RNA、ATPやクロロフィルなどは窒素を含む有機化合物で有機窒素化合物と呼ばれます。
植物が体外から取り入れた硝酸イオンなどの無機化合物からタンパク質などの有機窒素化合物を合成することを「窒素同化」といいます。

植物は硝酸イオンやアンモニウムイオンなどを根から吸収し葉に運んで、
硝酸イオンを硝酸還元酵素と亜硝酸酵素を使ってアンモニウムイオンに還元した後、
グルタミン酸に合成します。
合成したグルタミン酸のアミノ基をアミノ基転移酵素を使っていろいろな有機化合物に転移させて、
20種類のアミノ酸に合成します。

アミノ酸とは1つの分子中にアミノ基( \(\mathrm{-NH_2}\) )とカルボキシル基( \(\mathrm{-COOH}\) )をもっている化合物のことです。
これらの2つの官能基を同じ炭素にもつアミノ酸を \(\alpha -\)アミノ酸といいますが、天然のタンパク質を加水分解するとすべて \(\alpha -\)アミノ酸が得られます。
この \(\alpha -\)アミノ酸の種類が20種類あるということです。

これらのアミノ酸をペプチド結合させてタンパク質や核酸、ATP、クロロフィルなどの有機窒素化合物を合成します。

植物の窒素固定

細菌などのからだに空気中の窒素( \(\mathrm{N_2}\) )を取り込んでアンモニウムイオンに還元する過程を「窒素固定」といいます。
窒素固定できたアンモニウムイオンを利用して窒素同化を行い、必要な有機窒素化合物を合成します。

窒素固定を行うニトロゲナーゼという酵素をもち、窒素固定を行う細菌を「窒素固定細菌」といいます。
根粒菌、アゾトバクター、クロストリジウム、シアノバクテリアなどがあります。

根粒菌はマメ科の植物に根粒をつくり「共生」すると、
窒素固定でつくったアンモニウムイオンをマメ科植物に供給し、
マメ科植物からは光合成でできた有機物をもらいます。
マメ科植物が窒素源の少ないやせた土地で生育できるのはこの共生があるからです。

根粒菌は共生生活をしますが、アゾトバクターやシアノバクテリアやクロストリジウムは独立生活をしています。

動物の窒素同化

動物は窒素有機化合物(タンパク質)を食物として取り込み、
消化することでアミノ酸に分解し、
アミノ酸に分解した後DNAやRNA、ATPといったタンパク質に合成しなおします。
動物はアミノ酸自体を合成できないので必須アミノ酸は食物から取り入れる必要があります。

まとめ

植物の窒素同化の材料となる無機窒素化合物はアンモニウムイオンた硝酸イオンである。
窒素固定とは空気中の窒素からアンモニウムイオンをつくることである。
根粒菌は植物と共生生活をしたとき窒素固定を行う。
動物は窒素同化の材料を食物から得ている。

地中での窒素固定

生物の遺体排出物
⇒(微生物などによる分解)→ アンモニウムイオン
⇒(亜硝酸菌)→ 亜硝酸イオン
⇒(硝酸菌)→ 硝酸イオン

根粒菌による窒素固定 → アンモニウムイオン

葉による窒素同化

硝酸イオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン
→ グルタミン酸 → タンパク質、核酸、クロロフィル

窒素同化と窒素固定は意味が違います。
動物は空気中の窒素を有機化合物に取り込む窒素固定はできません。
窒素同化も全てができる訳ではありませんので、
動物は有機窒素化合物を食物から取り入れるしかない、と考えて良いのです。

動物は炭酸同化と同様に窒素同化は植物に依存しています。

⇒ 光合成細菌の光合成と化学合成細菌による炭酸同化の反応式

有機物を構成する主元素である炭素、
生命維持に重要な役割をもつタンパク質に必要な窒素、
ヒトはどちらも植物や細菌などに依存しているということです。