光合成は緑葉植物の葉緑体で行われるということは知っているでしょう。
しかし、細菌のなかには葉緑体を持たないのに光合成を行う光合成細菌や、無機物の酸化によるエネルギーで化学合成を行う化学合成細菌もいます。
ここでは緑葉植物以外で光合成が行われている炭酸同化について反応式とともに確認しておきましょう。

光合成細菌とは

紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌などは原核生物は葉緑体は待っていませんが、光合成を行うので光合成細菌と呼びます。
これらの細菌は葉緑体は持っていないのですが、
細胞内に光合成色素として「バクテリオクロロフィル」を持っています。
バクテリオクロロフィルとは葉緑体にあるクロロフィルに似た構造をしていてる細菌が持っているクロロフィルです。

葉緑体のチラコイド膜の上には光化学系Ⅰ、Ⅱと呼ばれる光エネルギーを捕集する2つの反応系がありますが、
(参照:光合成の仕組みと化学反応式および呼吸との関係
紅色硫黄細菌は光化学系Ⅱ、緑色硫黄細菌は光化学系Ⅰに似た光化学系を持っています。

光合成細菌による光合成では、電子伝達系に電子を供給する物質として水ではなくて、
硫化水素( \(\mathrm{H_2S}\) )を使いますので結果として周囲に硫黄( \(\mathrm{S}\) )が析出します。

反応式は

 \(\mathrm{6CO_2\,+\,12H_2S\,+\,} 光エネルギー\\ \\
 \mathrm{\rightarrow  C_6H_{12}O_6\,+\,6H_2O\,+\,12S}\)

シアノバクテリアの光合成

ネンジュモなどのシアノバクテリアも葉緑体を持っていませんが、
細胞内に光合成色素としてクロロフィルaを持っていて、
光化学系Ⅰ、Ⅱを使って緑葉と同じような光合成をします。

電子伝達系に電子を供給する物質はで、緑葉の光合成と同じように酸素を発生します。

反応式は

 \(\mathrm{6CO_2\,+\,12H_2O\,+\,}光エネルギー\\ \\
 \mathrm{\rightarrow  C_6H_{12}O_6\,+\,6H_2O\,+\,6O_2}\)

これらのことからシアノバクテリアは緑色植物と近い種類のバクテリアであることがわかります。

ここまでは光エネルギーを利用した光合成を行う細菌やバクテリアの反応です。

光合成細菌は、
 \(\mathrm{CO_2} ⇒ 光エネルギー + \color{red}{バクテリオクロロフィル} ⇒ \mathrm{C_6H_{12}O_6}\)

シアノバクテリアは、
 \(\mathrm{CO_2} ⇒ 光エネルギー + \color{red}{クロロフィルa} ⇒ \mathrm{C_6H_{12}O_6}\)

です。

化学合成細菌

化学合成という言葉は化学と生物では違った意味で使われます。
生物では、無機物を酸化する際に生じる化学エネルギーを利用して炭酸同化することを化学合成といいます。

化学合成細菌とはその化学合成をする細菌のことをいいます。
アンモニウムイオンから亜硝酸イオンをつくる亜硝酸菌
亜硝酸イオンから硝酸イオンをつくる硝酸菌
硫化水素を酸化する硫黄細菌や鉄イオンを酸化する鉄細菌などがあります。

化学合成細菌の行う反応式例

亜硝酸菌
 \(\mathrm{2NH_4^-\,+\,3O_2}\,\\ \\
\hspace{7pt}\rightarrow  \mathrm{2NO_2^-\,+\,2H_2O\,+\,4H^+} + 化学エネルギー\)

 \(\mathrm{6CO_2+12H_2O\,+\,}化学エネルギー\\ \\
\hspace{7pt}\mathrm{\,\rightarrow  C_6H{12}O_6+6H_2O+6O_2}\)

硝酸菌
 \(\mathrm{2NO_2^-+O_2 \rightarrow  2NO_3^-+} 化学エネルギー\)

 \(\mathrm{6CO_2+12H_2O+} 化学エネルギー \\ \\
\hspace{7pt}\mathrm{\rightarrow  C_6H{12}O_6+6H_2O+6O_2}\)

亜硝酸菌と硝酸菌は土の中や水のなかでアンモニウムイオンから硝酸イオンをつくるので「硝化菌(硝化細菌)」といいます。
この「硝化作用」は生態系全体においての窒素循環に非常に重要な役割をしています。

アンモニウムイオンは有機物の分解で生じますが有毒です。
この有毒物質であるアンモニウムイオンは亜硝酸菌や硝酸菌の持つ硝化作用によって毒性の低い硝酸イオンに変えられます。
硝酸イオンは植物の窒素同化の材料として利用されるので硝化菌は窒素循環に非常に重要なはたらきをしているのです。

深海に住む化学合成細菌

深海、つまり深い海の底では光は届かず真っ暗ですが、その深海の一部に熱水噴出孔と呼ばれるマグマの熱で暑くなった水が噴き出しているところがあります。
深海の熱水噴出孔付近に生息しているシロウリガイやチューブワームは体内に硫黄細菌を共生させて、硫黄細菌が生成した有機物を利用して生きています。

硫黄細菌は硫化水素(\( \mathrm{H_2S}\) )を酸化するときに生じる化学エネルギーを利用して有機物を生成しているのです。

反応式

 \(\mathrm{2H_2S+O_2}\\ \\
\hspace{7pt} \rightarrow  \mathrm{2S+2H_2O+}化学エネルギー\)

 \(\mathrm{2S+3O_2+2H_2O}\\ \\
\hspace{7pt} \rightarrow  \mathrm{2H_2SO_4+}化学エネルギー\)

 \(\mathrm{6CO_2+12H_2O+}化学エネルギー\\ \\
\hspace{7pt}\mathrm{\rightarrow  C_6H_{12}O_6+6H_2O+6O_2}\)

まとめ

光合成細菌が持つ光合成色素はバクテリオクロロフィルである。
光合成細菌には、緑色硫黄細菌や紅色硫黄細菌がある。
光合成細菌は硫化水素を電子供給源としている。
シアノバクテリアがもつ光合成色素はクロロフィルaである。
シアノバクテリアの1つにネンジュモがある。
シアノバクテリアは水を電子供給源としている。
化学合成に使われるエネルギー源は無機(化合)物である。

以上です。

葉緑体をもつ生物の光合成について
⇒ 光合成を行う場所と光合成に必要なものと色素の種類
⇒ 光合成の仕組みと化学反応式(カルビン・ベンソン回路)
緑葉の光合成の復習は優先的にやっておきましょう。

⇒ 動物と植物の窒素同化と窒素固定

同化には炭酸同化以外にもあります。