脊椎動物の神経系は中枢神経系と末梢神経系の2つがあります。
これらは働きによってさらに分類分けされることになりますが、
ヒトの脳のつくりを区分しその特長と神経系の役割とをつなげて見ておきましょう。
ここも用語が多く問題になりやすいところなので繰り返し見ておいた方が良いですよ。

脊椎動物の神経系

脊椎動物の神経系は、
・中枢神経系
・末梢神経系
の2つからなり、ヒトも脊椎動物なので同じです。

中枢神経系は、脳と脊椎のことで、
末梢神経系は、中枢神経系とからだの部位とをつなぐ神経のことです。

末梢神経系には、
脳から出る「脳神経」と脊椎から出る「脊椎神経」とがあります。
さらに、
末梢神経系ははたらきによって、
「感覚神経」と「運動神経」をまとめた「体性神経系」と、
「交感神経」と「副交感神経」をまとめた「自律神経系」とに分けられます。

ヒトの中枢神経系

脊椎動物であるヒトも中枢神経系は脳と脊椎になります。
そのそれぞれの特長について見てみましょう。

ヒトの脳

ヒトの脳は、
「大脳」「間脳」「中脳」「小脳」「延髄」
の5つに分けられます。
大きな特長は、ヒトの脳は他の脊椎動物よりも大脳が発達していることです。

間脳、中脳、延髄を合わせて「脳幹」ともいいます。

ヒトの大脳は、左右の半球に分かれていて「脳梁(のうりょう)」と呼ばれる太い神経の束で連結されています。
外側を「大脳皮質」、内側を「大脳髄質」といいます。

大脳皮質は表面から数ミリの厚さの神経細胞体が集まった部分で、「灰白質」ともいいます。
ヒトの場合は「新皮質」と「辺縁皮質(へんえんひしつ)」で成り立ちます。
特に新皮質が発達しており、
視覚や聴覚などの感覚中枢の「感覚野」、
随意運動の中枢の「運動野」、
記憶、判断、思考など精神活動の中枢である「連合野」があります。
辺縁皮質は本能的な行動、欲求や感情にもとづく行動の中枢で、記憶に関わる「海馬(かいば)」もこれに含まれます。

大脳髄質は多くの神経繊維が通っていて、白色に見えるので「白質」といいます。
新皮質や辺縁皮質から出る神経繊維はここを通って脳幹などに連絡しています。

大脳の区分と特長とはたらき

大脳

外側:神経細胞の細胞体が集まった大脳皮質
内側:神経細胞の軸索が束になった髄質

新皮質:視覚・聴覚・運動・記憶などの中枢
辺縁皮質:食欲・性欲・感情などの中枢

脳幹

間脳
視床と視床下部に分かれていて、自律神経系の総合中枢で、代謝の調節や血糖量・体温・睡眠などの調節に関与している。

中脳
眼球運動・瞳孔調節・姿勢保持の中枢

延髄
呼吸運動・心臓の運動・消化器の機能調節の中枢

小脳

随意運動の調節・身体の平衡維持の中枢

それぞれのはたらきを覚えておくことが大切なのですが、
「脳の部位のはたらきは?」
という方向ではなく、
「このはたらきは脳のどこで制御?」
と覚える方がはやいかもしれませんよ。

ヒトの脊椎

脊椎の構造は延髄からのびて脊椎骨の中を通っている円柱状の構造で、
外側の皮質は神経繊維からできている白質で、
内側の髄質はニューロンの細胞体の集まりで灰白質となっていて、
⇒ ニューロンの種類と活動電位およびシナプスの神経伝達物質
これは大脳とは外側と内側が逆になっています。

脊髄からは背根と腹根と呼ばれる末梢神経が31の左右の対となって出ていて、
背根には感覚神経、腹根には運動神経と自律神経が通っています。

脊髄は感覚神経からの興奮を大脳に伝え、大脳から出された命令を運動神経に伝える経路となります。
発汗、排尿、排便、血管の伸縮や屈筋反射や膝蓋腱(しつがいけん)反射などの中枢ともなります。

反射

意志とは関係なく、大脳以外を中枢とした瞬時に起こる反応を「反射」といいます。
受容器で受容した刺激によって起こる興奮が、
大脳を経由せずに効果器へ伝えられるので、
素早い反応が起こるので危険から身を守るのに役立ちます。

膝蓋腱反射や屈筋反射は脊髄、
唾液分泌反射や咳、くしゃみなどは延髄、
瞳孔反射や姿勢保持の反射は中脳、
をそれぞれ中枢とします。

また、
「受容器」⇒「感覚神経」⇒「反射中枢」⇒「運動神経」⇒「効果器」
という反射における興奮の伝達系を「反射弓」といいます。

ヒトの末梢神経系

脳や脊髄などの中枢からでて、各器官まで達している神経を「末梢神経」といいます。

構造から大きく分けると、
脳から出る、「視神経」、「顔面神経」、「迷走神経」などの「脳神経」、
脊髄から出る、「感覚神経」、「運動神経」、「自律神経」などの「脊髄神経」、
に分けることができます。

はたらきで分けると、
受容器から中枢に外界の情報を伝える感覚神経や、
中枢からの命令を効果器に伝える運動神経などの、
脳に外界の情報を伝え、脳からの命令を効果器に伝える「体性神経」、

脊髄から分布して、興奮状態や緊張状態ではたらく「交感神経」や、
脳と脊髄の末端にある仙髄(せんずい)から分布していて、安静時にはたらく「副交感神経」などの、
意志とは無関係に筋肉や内臓、唾液腺などの腺にはたらく「自律神経」、

に分けることができます。

さて、覚えきれるでしょうか?
生物は理論的なことの前に覚えることが多いので、ある程度の時間は必要になりますからね。
一夜漬けでなんとかなると思わない方が良いですよ。

では、ちょっと質問してみます。
(こんな感じで覚えていけば少しは時間を短縮できるでしょう。)

反射的にからだの平衡を保つ中枢は脳のどこにあるでしょう?

⇒ 「小脳」です。

ひとみの収縮や姿勢保持などの中枢は脳のどこにあるでしょう?

⇒ 「中脳」です。

呼吸運動や心拍を調節する中枢は脳のどこでしょう?

⇒ 「延髄」です。

脳と脊髄はヒトの中枢神経系ですよ。

⇒ 筋肉の構造と筋収縮の仕組み(筋原繊維とフィラメント)

筋肉を動かしているのも脳です。