慣性の法則とは、簡単に言えば今の状態を保とうとする性質のことです。
この法則は日常でもよく目にしているし体感もしているのですが気がつきにくいです。
いくつか具体例をあげておきますので、物理であつかう力の関わりとつなげられるようにしましょう。
慣性の法則とは?
物体にはそのときの運動状態を保とうとする性質があると考えられています。
動いている物体はそのままの運動を続けるし、
静止している物体は静止したままの状態を続けるということです。
この性質を「慣性」といいます。
物体は外部から力がはたらかない限りそのままの運動状態を続けるということです。
ただし、外部から力がはたかないというのは、見かけ上力がはたらいていない場合も含みます。
別の言い方をすれば、外部からの力がつり合っている(合力の大きさが0)場合も状態は変わりません。
この外部から力がはたらかないとき、
静止している物体はいつまでも静止を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。
これを「慣性の法則」といいます。
※
会って話をしたわけではないのでわかりませんが、
ガリレオが気づき、ニュートンが法則化した、ということのようです。
慣性の法則は「運動の第一法則」ですが、これも作用反作用と同様に別にまとめて説明します。
日常みる慣性の法則の具体例
電車に乗る機会がある人は感じていると思いますが、
電車が停車して乗り込んだ後、発車すると進行方向と反対に倒れそうになります。
これは乗り込んだ後人も電車も止まっている状態で、
電車が動いても人の足は電車とともに前に進もうとしますが、
体は止まった状態を続けようとしているからです。
電車に乗る機会がない人は自動車に乗ったときのことを考えてみてください。
発車するときの慣性は感じにくいでしょう。
シートに押しつけられるような加速は自動車では感じにくいですからね。
しかし、急ブレーキがかかったときシートベルトをしていなかったら前に飛び出していただろうって経験ありませんか?
あれは今まで自動車と一緒に移動していたところに、自動車が静止しようと減速したためです。
人は今までの運動を続けようとしますから、自動車が静止しようとしたら前に進もうとしている人は飛び出していくような動きになるのです。
速度は増しているのではありません。
自動車が減速した分、相対的に前に進んでいるように感じるのです。
後ろの席でも、シートベルトはしておくべきですね。
バスなどはシートベルトの義務はありませんが、安全な速度で急な加速をしない、急な減速をしないという約束があるからだけなので、もしものためにもつり革や手すりを持っておくと安全性は増します。(絶対はありません。)
他にも、
テーブルクロスの上に食器などをのせて、さっとクロスだけを抜き取る「テーブルクロス引き」見たことありませんか?
あれも慣性の法則を利用した芸です。
テーブルにのっている物体は静止しています。
テーブルクロスを引いてもそのままの状態を続けようとする慣性の法則があるので、
乗っている物体に力が加わらないように引けば物体は動かないからです。
テーブルクロスをテーブル面にまっすぐ引くのがコツでしょうか。
テーブルではやったことないのでわかりませんが、
理論上摩擦を起こさせないようにする方がうまくいくはずです。
テーブルクロスの上に乗っているものは重くて接地面が小さいもの、
クロスは摩擦の起こりにくいなめらかなものを使う、
が素人がテーブルクロス引きをうまくやるコツでしょう。たぶん。笑
コインぐらいならやったことあるけど、
ハンカチの上より下敷きの上の方がうまくいった。
テーブルクロス引きが日常かどうかは別として、
日常で見る慣性の法則はまだまだありますが、
力がはたらかない限り物体は今の状態を保とうとします。
つまり、力ともいえる加速度がない限り運動の状態は変わらないということです。
慣性の法則の理解度問題
慣性の法則はおおよそ理解できましたか?
慣性には他にも性質がありますが、今は難しいことより感じだけでもつかんでおきましょう。
ここで1つ質問です。
そのおもりを同じ強度の糸で下側に結び、下から引っ張ります。
(1)ゆっくり引っ張ると糸はどこで切れるでしょう。
(2)素早く引くと糸はどこで切れるでしょう。
(1)ゆっくり引いた場合
おもりの重力と、引っ張った力を支えることになるので上の糸が切れます。
(2)素早く引いた場合
おもりをつるして静止しているので、
素早く引いたときはおもりに静止しようとする慣性がはたらくので下の糸が切れます。
ゆっくりと素早くってどれくらいの差?
などという疑問はもたないでください。
ゆっくりというのは速さを感じないくらいゆっくりで、
素早くというのは目に見えないくらい速く、ということです。
物理では「なめらかな面」というのは摩擦がないことを表します。
それと同じだと考えておいてください。
次は運動の法則や運動方程式について説明します。
運動方程式を使えるようになると力が式で表せるようになります。