化学繊維にはナイロン66やナイロン6などのポリアミドがあることは説明しました。
ここではポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル系とビニロンなどのポリビニル系の合成繊維についてまとめておきます。

ポリエステルとは

ポリエステル系合成繊維はその名の通り、分子内にエステル結合(\(\mathrm{-O-CO-}\))をもっている高分子です。
代表的な物質にPETがあります。
(「ペットボトル」の「PET」です。)
反応物質さえ覚えれば難しくはありませんので合成方法なども見ておきましょう。

ポリエチレンテレフタラート(PET)

2つのカルボキシル基をもつ
 テレフタル酸(\(\mathrm{HO-CO-C_6H_5-CO-OH}\))
と、
 2つのヒドロキシ基をもつ
 エチレングリコール(\(\mathrm{HO-(CH_2)_2-OH}\))
とを、縮合重合させるとポリエチレンテレフタラートが合成されます。

 \( n\mathrm{HO-CO-C_6H_5-CO-OH}\\ \\
+\,n\,\mathrm{HO-(CH_2)_2-OH}\\ \\
\,\rightarrow \, \mathrm{-\left\{CO-C_6H_5-CO-O-(CH_2)_2-O\right\}-_n}\)

このとき、\((2n-1)\)分子の水が生成します。
PETはペットボトルのペットと同じものです。
このPETのようにエステル結合を主鎖にもつ高分子を「ポリエステル」と呼びます。

ポリエチレンテレフタラートは親水基がないので水を吸収しませんし、
しわになりにくいのでペットボトルや衣類に使用されます。

以前はコストがかかりすぎるのでリサイクルが難しいといわれていたのですが科学の進歩と環境を配慮し、
リサイクルが盛んに行われるようになりました。
ゴミの分別には協力しましょう。笑

エチレングリコールは組成式を見れば分かりますが、1,2-エタンジオールのことです。
フタル酸はベンゼンのパラ位に2つのカルボキシ基がついた芳香族です。
 \( \mathrm{-C_6H_5-}\) はベンゼン環の部分を示します。
※※
テレフタル酸はエチレングリコールとは反応しにくいですが、
テレフタル酸にメタノールを反応させてテレフタル酸ジメチルエステルとしておいて、
触媒を用いてエチレングリコールと反応させるとエステルの交換反応が起こりPETが生成しやすくなります。
このときは水ではなくメタノールが生成します。
※※※
脂肪族のアジピン酸とエチレングリコールとでもポリエステルの合成は可能ですが、
軟化点が低く強度も低いため実用的ではありません。

ビニロン

ビニル化合物を付加重合して得られる合成繊維をポリビニル系合成繊維といいます。
少しややこしい合成になりますがビニロンの合成方法と特徴を説明しておきます。

触媒を用いてエチレンと酢酸を酸素の存在する空気中で反応させて、
先ず酢酸ビニル(\(\mathrm{CH_2=CH(OCOCH_3)}\))を合成します。

それからこの酢酸ビニルを付加重合させてポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とし、
水酸化ナトリウムなどでけん化し、ポリビニルアルコールを生成させます。

ポリビニルアルコールはPVAと略されることが多いです。
「けん化」を忘れた人は
⇒ エステル結合の示性式と構造式とエステルの加水分解
で復習してください。

PVAは水に溶けやすいので、水溶性のまま糸状にした後、
ホルムアルデヒドを用いてアセタール化すると水に溶けないビニロンになります。
ビニロンにはヒドロキシ基がたくさんあるので吸湿性に優れています。

※※
ビニロンは京都大学の桜田一郎先生が開発した国産初の合成繊維です。

アクリル繊維

アクリロニトリル(\(\mathrm{H_2C=H(CN)}\))を付加重合させるとアクリル繊維が得られます。
シアノ基が開くのではなくエチレン部分の二重結合が開き付加重合します。
アクリロニトリルは名前が覚えにくいので何度も見ておくと良いですね。

他にもイソシアネート基(\(\mathrm{-N=C=O}\))をもつ化合物を重合したウレタンなどもあります。
ウレタンはイソシアネート基の反応性の高さからいろいろな特性を持つ化合物を生成できるのでいろいろな分野に使われています。
興味があれば調べて見ると良いですよ。

簡単にまとめて見ましたが、詳しく説明するともっと長くなります。

合成繊維は、
 縮合重合でできるポリアミド系のナイロン、ポリエステル系のPETなどがあり、
 付加重合でできるポリアクリル系のアクリル繊維、ポリビニル系のビニロンなどがあるということですね。

ナイロンやPET(ポリエチレンテレフタラート)などの復習は

⇒ 天然繊維と化学繊維(ナイロンなどの合成繊維)の種類と化学合成

を参考にどうぞ。ナイロンは良く問題になります。