硫黄の化合物を硫化物といいますが硫酸と硫化水素について製法と性質を見てみましょう。特に硫酸は性質が少し複雑で、扱い方も気をつけなければならないところもあります。硫酸の製法は接触法という名前がついているので覚えておきましょう。

硫酸

(\(\mathrm{H_2SO_4}\))

硫酸の製法(接触法)

硫黄を燃焼させて二酸化硫黄を生成させ、酸化バナジウムを触媒として酸化して三酸化硫黄とします。

 \(\displaystyle \mathrm{2SO_2+O_2 \rightarrow 2SO_3}\) (触媒:\(\mathrm{V_2O_5}\))
この三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させて発煙硫酸とし、これを希硫酸で薄めて濃度調整する硫酸の工業的製法です。

 \( \mathrm{SO_3+H_2O}\)

原料となる気体を固体の触媒と接触させて反応を進行させるので「接触法」といいます。

発煙硫酸とは濃硫酸に三酸化硫黄を過剰に吸収させたもので三酸化硫黄の蒸気を常に出しているのでそう呼ばれています。
濃硫酸以上に濃い硫酸といえて、希硫酸で薄めるというより過剰の三酸化硫黄を吸収して希硫酸の濃度が濃くなると考えれば良いです。

濃硫酸の性質

無色で粘性のある液体(ねばりけのある液体)で密度が大きな液体です。
沸点が高く不揮発性の酸です。
濃硫酸は水分子とも水素結合するので吸水性が強く、乾燥剤に使われます。
糖類などの有機化合物に対して脱水作用を示します。
水に加えると多量の熱を発生して希硫酸になります。

水に濃硫酸を少しずつ加えて薄めます。
逆に濃硫酸に水という薄め方はしません。
発熱が大きいので加えた水が沸騰し硫酸が飛び散るくらい危険だからです。
このことは濃硫酸をあつかう注意点なので覚えておいた方が良いと思いますよ。

濃硫酸と希硫酸の性質の違い

どちらも酸ですが酸性の強弱と酸化力が違ってきます。
濃硫酸は、弱酸性で加熱すると酸化作用があります。
希硫酸は、強酸性で酸化力はありません。
濃硫酸は水をほとんど含んでなくて、希硫酸は薄いけど水が多いので水素イオンとなる原料が多く酸性度は増すんですね。
酸性度と酸化力とは違いますので注意して下さい。
ここもややこしいところです。w

硫化水素の製法と性質

(\(\mathrm{H_2S}\))

硫化水素は火山ガスや温泉などに含まれている有毒な気体です。
タンパク質(硫黄を構成元素として持つ)を含む卵が腐ったときにもわずかですが発生しますね。
硫化鉄(Ⅱ)に希塩酸か希硫酸を加えると生成します。

 \( \mathrm{FeS+2HCl\rightarrow FeCl_2+H_2S\uparrow}\)

硫化水素は無色で、腐卵臭のする有毒な気体です。
水に少しだけ溶けて弱酸性を示します。
還元作用は強く硫黄を生成します。
金属イオンと反応して有色の金属硫化物の沈澱を生じます。
(この金属イオンとの沈澱は「系統分離」の際の重要ポイントです。)

硫黄についてはこれくらいで良いと思いますが、
濃硫酸と希硫酸の違いについて確認しておきます。

亜鉛に希硫酸を反応させると気体が発生します。
銅に濃硫酸を反応させても気体が発生します。

しかし、発生する気体はそれぞれ違います。
それぞれ発生する気体は何か?

希硫酸は酸性が強いので水素が発生します。

 \( \mathrm{Zn+H_2SO_4\rightarrow ZnSO_4+H_2\uparrow}\)

濃硫酸は酸化力が強いので酸化剤としてはたらき二酸化硫黄が発生します。

 \( \mathrm{Cu+2H_2SO_4\rightarrow CuSO_4+SO_2\uparrow +H_2O}\)

硫黄の性質は二酸化硫黄の性質から始まります。

⇒ 周期表16族の酸素と硫黄の単体と化合物の性質

で確認しておいて下さい。

硫黄の化合物は酸化剤としても還元剤としても、弱酸としても強酸としてのはたらきもあります。
ややこしいので濃硫酸と希硫酸の違いから覚えておくようにするといいでしょう。

濃硫酸の取り扱いには十分ご注意下さい。