2019年(平成31年)度センター試験化学基礎の第2問の解答解説です。
第2問は物質量、気体の発生、中和滴定、酸化数と量的な問題がありますが内容は基本的なものばかりです。
大学入学共通テストに名前が変わっても化学基礎は同じ形で残りますので、対策も変えなくていいです。

2019年度センター試験化学基礎の問題

問題と正答は大学入試センターで発表されていますので確認してください。

⇒ 2019年度センター試験化学基礎の問題

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2019年度センター試験化学基礎第2問の解説

第2問は問1から問6まであります。

問1


 \(\,\mathrm{CO}\,\)の式量は \(\,12+16=\color{blue}{28}\,\)
 \(\,\mathrm{N_2}\,\)の式量は \(\,14\times 2=\color{blue}{28}\,\)

\(\,2\,\)種類とも同じ式量の気体だから混合比に関係なく
同じ体積・圧力・温度であれば質量は同じです。

一方、

 \(\,\mathrm{NO}\,\)の式量は \(\,14+16=\color{red}{30}\,\)

なので、同じ条件で同じ体積なら、
\(\,\mathrm{CO}\,,\,\mathrm{N_2}\,\)の混合気体の方が\(\,\mathrm{NO}\,\)よりも質量は小さくなります。


モル濃度が\(\,\mathrm{0.01\,mol/L}\,\)の\(\,\mathrm{CaCl_2}\,\)水溶液というのは
 溶液\(\,\mathrm{1\,L}\,\)中に\(\,\mathrm{0.01\,mol}\,\)の\(\,\mathrm{CaCl_2}\,\)
が含まれているということです。

この溶液が\(\,\mathrm{2L}\,\)あるので\(\,\mathrm{CaCl_2}\,\)は
 \(\displaystyle 0.01\times \frac{2}{1}=0.02\,\mathrm{mol}\)
含まれています。

\(\,\mathrm{CaCl_2}\,\)の溶液では\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)の\(\,\mathrm{CaCl_2}\,\)から\(\,\mathrm{2\,mol}\,\)の\(\,\mathrm{Cl^-}\,\)が出てくるので、

\(\,\mathrm{Cl^-}\,\)の物質量は

 \(\displaystyle 0.02\times \frac{2}{1}=0.04\,\mathrm{mol}\)


水とメタノールは式量が

 \(\,\mathrm{H_2O=18\,,\,CH_3OH=32}\,\)

なので
 \(\,\mathrm{H_2O=18\,g}\,\)
 \(\,\mathrm{CH_3OH=32\,g}\,\)

の物質量は同じ\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)です。

 \(\,\mathrm{\color{red}{H_2O}}\,\)は\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)中に\(\,\mathrm{\color{red}{2\,mol}}\,\)の\(\,\mathrm{H}\,\)原子
 \(\,\mathrm{\color{blue}{CH_3OH}}\,\)は\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)中に\(\,\mathrm{\color{blue}{4\,mol}}\,\)の\(\,\mathrm{H}\,\)原子

を持っています。

両方\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)あるとき水素原子の数は等しくありません


炭素\(\,\mathrm{C}\,\)を完全燃焼させる、つまり酸化です。

 \(\,\mathrm{C+O_2 \rightarrow  CO_2}\,\)

 \(\,\mathrm{C:O_2:CO_2=1:1:1}\,\)
で反応するので、
燃焼させるに使われた\(\,\mathrm{O_2}\,\)と発生する気体\(\,\mathrm{CO_2}\,\)は同じ物質量発生します。

誤りを含むものは以上のことから1つ。
 答え \(\color{black}{\fbox{ ③ }}\)

問2

まずは反応式を見ておきましょう。

 \(\,\mathrm{Zn+2HCl \rightarrow ZnCl_2+H_2\uparrow}\,\)

亜鉛\(\,\mathrm{Zn}\,\)と同じ物質量の水素\(\,\mathrm{H_2}\,\)が発生します。

塩酸\(\,\mathrm{HCl}\,\)はたくさんあるので亜鉛\(\,\mathrm{Zn}\,\)の量で限界が出ます。
グラフで見ると\(\,(\,V_1\,,\,V_2\,)\,\)のときに\(\,\mathrm{Zn}\,\)は反応しきったということです。

気体の状態は標準状態なので
\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)の気体は種類に関係なく\(\,\mathrm{22.4\,L}\,\)となります。
亜鉛\(\,\mathrm{Zn}\,\)は\(\,\mathrm{0.020\,mol}\,\) なので発生する水素\(\,\mathrm{H_2}\,\)も\(\,\mathrm{0.020\,mol}\,\)です。

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
\mathrm{V_2}&=&22.4\times \frac{0.020}{1}\\
&=&0.448\\
&≒&\underline{ 0.45 }\,\mathrm{L}\,\end{eqnarray}\)

このときに必要だった塩酸\(\,\mathrm{HCl}\,\)は\(\,2\,\)倍の\(\,\mathrm{0.040\,mol}\,\)です。

塩酸\(\,\mathrm{HCl}\,\)の濃度は\(\,\mathrm{2.0\,mol/L}\,\)なので、
 \(\,\mathrm{1\,L}\,\)中に\(\,\mathrm{0.2\,mol}\,\)の塩酸、\(\,x\,\mathrm{L}\,\,\)中に\(\,\mathrm{0.040\,mol}\,\)の塩酸
という比例式を立てると
 \(\,\mathrm{1L:2.0mol}=x\,\mathrm{L}:0.040\,\mathrm{mol}\,\)

これを解くと、
 \(\begin{eqnarray}
1:2.0&=&x:0.040\\
2.0x&=&0.040\\
x&=&\underline{ 0.020 }\mathrm{L}
\end{eqnarray}\)

と求めることができます。

比例関係のあつかいになれていれば、

 \(\begin{eqnarray}
2.0\times \frac{x}{1}&=&0.040\\
x&=&\underline{ 0.020 }\mathrm{L}
\end{eqnarray}\)

でも良いですよ。

答え \(\color{black}{\fbox{ ② }}\)

問3

酸と塩基で中和した正塩の水溶液が塩基性を示した、ということなので、

 弱酸+強塩基の塩

\(\,\mathrm{HCl\,,\,H_2SO_4}\,\)は強酸なので正塩は酸性か中性、と考えれば

 \(\,\mathrm{H_3PO_4+NaOH}\,\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ⑤ }}\)

問4

酢酸は弱酸で一部が電離しています。

 \(\mathrm{CH_3COOH \rightleftharpoons CH_3COO^-+H^+}\)

\(\,\mathrm{0.10\,mol/L}\,\)の濃度の水酸化ナトリウム水溶液の\(\,\mathrm{pH}\,\)は

 \(\,\mathrm{[OH^-]=1.0\times 10^{-1}}\,\)

から

 \(\,\mathrm{pOH=-\log_{10}10^{-1}=1}\,\)

よって

 \(\,\mathrm{pH=14-1=13}\,\)

\(\,\mathrm{5.0\,mol/L}\,\)の水酸化ナトリウム水溶液\(\,\mathrm{10\,mL}\,\)を\(\,\mathrm{500\,mL}\,\)に希釈すると、

\(\,\mathrm{1\,L}\,\)中に\(\,\mathrm{5.0\,mol}\,\)溶けているうちの\(\,\displaystyle \frac{10}{1000}\,\)を取り出すので

 \(\displaystyle \mathrm{5.0\times \frac{10}{1000}\,mol}\,\) の水酸化ナトリウム含んでいて、

その\(\,\mathrm{10\,mL}\,\)を\(\,\mathrm{500\,mL}\,\)に希釈するので\(\,\mathrm{1000\,mL}\,\)に換算すると

 \(\hspace{10pt}\displaystyle 5.0\times \frac{10}{1000}\times \frac{1000}{500}\\
\displaystyle =5.0\times \frac{10}{500}\\
=0.10 \mathrm{mol/L}\)

\(\,\mathrm{0.10\,mol/L}\,\)の水酸化ナトリウム水溶液\(\,\mathrm{10\,mL}\,\)中の水酸化ナトリウムの物質量

 \(\,\displaystyle 0.10\times \frac{10}{1000}=\color{blue}{\frac{1}{1000}\,\mathrm{mol}}\,\)

酢酸水溶液の濃度が\(\,\mathrm{0.20\,mol/L}\,\)であるとき\(\,\mathrm{20\,mL}\,\)中の酢酸の物質量

 \(\displaystyle 0.20\times \frac{20}{1000}=\color{red}{\frac{4}{1000}\,\mathrm{moL}}\)

なので中和していない。

中和しているとすれば酢酸の濃度を\(\,x\,\mathrm{mol/L}\,\)とすると

 \(\displaystyle 0.10\times \frac{10}{1000}=x\times \frac{20}{1000}\,\)

が成り立つはずで、

 \(\begin{eqnarray}
0.10\times 10&=&x\times 20\\
x&=&\frac{1}{20}\\
&=&\underline{ 0.05 } \mathrm{mol/L}
\end{eqnarray}\)

よって誤りを含むものは④

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

問5

実験を安全に進めるための注意点です。

 『においを嗅ぐときは手であおぎよせる。

これは空気で薄めて、かすかなにおいでも感じられる程度から始めるということです。
例えば、クロロホルム\(\,\mathrm{CHCl_3}\,\)は強力な麻酔作用があるのでティッシュに吸い込ませたクロロホルムを吸い込むと少量でもクラッとします。
非常に危険ですので絶対やらないようにしてください。

硝酸』に限らず薬品が手についたときは、大量の水で洗い流すのが普通です。
(例外はありますが普通に実験で使うものは水で洗い流します。)
特に硝酸は強酸なのですぐに洗い流しましょう。

実験で使う試料はあらかじめ性質を調べておいてから使うようにしましょう。

濃塩酸』は塩化水素の濃い水溶液です。
揮発性が高いので換気を良くして取り扱います。

濃硫酸』を希釈するときは、
 濃硫酸に水を注ぐ
のではなく
 水の中に濃硫酸を少しずつ加える
が正解です。

濃硫酸に水を加えると、濃硫酸に水が浮いた状態になるので溶解熱により水が沸騰して濃硫酸を飛び散らかす危険性があります。

液体の入った試験管を加熱
すると液体や気体の吹き出す方向は試験管の口です。
(または試験管ごと破裂)

人に向けるというのは常識的におかしい。
もちろん自分にも向けない。

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

問6

酸化と還元です。

 \(\,\mathrm{A \rightarrow A^+ (+1)}\,\)
 \(\,\mathrm{A^{2+} \rightarrow A^{4+} (+2)}\,\)
 
と電荷が\(\,\mathrm{+}\,\)側に変化したときは酸化、

 \(\,\mathrm{B \rightarrow B^{-2} (-2)}\,\)
 \(\,\mathrm{B^{2+} \rightarrow B^+ (-1)}\,\)

と電荷が\(\,\mathrm{-}\,\)側に変化したときは還元です。

臭素と水素の反応は
 
 \(\,\mathrm{Br_2+H_2 \rightarrow 2HBr}\,\)

臭素は \(\,0 \rightarrow -1\,\) と酸化数は減少し還元されています。

『誤りを含むもの』なので

答え \(\color{black}{\fbox{ ① }}\)

あ、
めんどくさいから省略したと思ったでしょう?

 \(\mathrm{2H^+ \rightarrow H_2}\)

酸化数は\(\,+1\,\rightarrow\,0\,\)に\(\,\color{red}{-1}\,\)変化しているので還元。

 \(\mathrm{2Na+2H_2O \rightarrow 2NaOH+H_2}\)

酸化数は\(\,0\,\rightarrow\,+1\,\)に\(\,\color{red}{+1}\,\)変化しているので酸化。
ナトリウムやアルカリ金属は空気中の水とも反応するくらい激しく反応するので、石油中で保存します。

鉛蓄電池

 \(\displaystyle \mathrm{Pb+PbO_2+2H_SO_4 \overset{放電}{\underset{蓄電}\rightleftharpoons}  2PbSO_4+2H_2O}\,\)

\(\,\mathrm{PbO_2 \rightarrow 2PbSO_4}\,\)

\(\,+4 \rightarrow +2\,\)と\(\,\color{red}{-2}\,\)変化しているので還元されています。

以上です。

化学の解説はもっと簡単に済ませようと思います。笑
共通テストに向けての対策も変わりません。

幅広く基礎の復習、が一番の対策です。

⇒ 2019年度センター試験化学基礎の第1問の解答解説

第\(1\)問から見直してみてください。

⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説

例年難しいことは聞いていません。幅広い基本を問われています。