呼吸基質の種類は炭水化物、タンパク質、脂質と分けて考えることができます。
ここではタンパク質と脂肪の分解の反応系を示しておきます。
また、呼吸によって発生する二酸化炭素と消費する酸素の割合を示す呼吸商についてもみておきましょう。

代謝のひとつ、異化である呼吸について、炭水化物であるグルコースの分解は、
「解糖系⇒クエン酸回路⇒電子伝達系」
の順に反応系が進むというのは

⇒ 呼吸(解糖系・クエン酸回路・電子伝達系)で必要な酵素としくみ

で説明しています。

ここではタンパク質と脂質について分解の反応系を説明します。

タンパク質の分解

タンパク質は加水分解されてアミノ酸となります。
脱アミノ反応でアミノ基をアンモニアとして遊離しますが、
アンモニアは毒性が強いので血液を介して肝臓に運ばれ、
オルニチン回路(尿素回路)によって毒性の低い尿素に変えられ排出されます。
残りの部分はピルビン酸などの有機物となってクエン酸回路に入ることになります。

脂肪の分解

タンパク質はアミノ酸が構成成分だというのはよく知っているのではないでしょうか。
でも、「脂肪」と聞いても構成成分は何か?すぐに答えられ無い人も多いでしょう。
化学の範囲になりますがちょっとだけ説明しておきます。

今ではいろいろなところで使われるので脂肪とは明確に「これ」とは言えません。
一般的には身体についた脂(あぶら)と考えられますよね。
その通りです。
体内の脂質を一般的に脂肪と呼ぶのでそれで良いのですが、
脂肪とはグリセリンと脂肪酸のエステルと考えて問題ありません。
(グリセリンの水酸基と脂肪酸のカルボキシ基から水が抜けて結合した物質)
だから分解すると構成物質であるグリセリンや脂肪酸の関連物質が出てきます。

体内では加水分解され脂肪酸とモノグリセリドになります。

モノグリセリドは解糖系に運ばれ分解されます。

脂肪酸は \(\beta\) 酸化の過程で端から炭素数2の化合物として切り取られ、
これにコエンザイムAが結合してアセチルCoAとなり、
クエン酸回路に入って二酸化炭素と水に分解される。

\(\beta\) 酸化というのは脂肪酸を酸化してアセチルCoAを生成する代謝のことです。

タンパク質と脂肪のいずれにしてもクエン酸回路に入るので、
体内の分解反応はどれも同じ回路、反応系に通じているということですね。

呼吸における反応系を簡単に見なおしておきましょう。

 炭水化物 ⇒ グルコース ⇒ ピルビン酸 
 ⇒ アセチルCoA ⇒ クエン酸回路 ⇒ 電子伝達系

 タンパク質 ⇒ アミノ酸 ⇒種々の有機酸 
 ⇒(ピルビン酸、アセチルCoAクエン酸回路) ⇒ 電子伝達系

 脂肪 ⇒ モノグリセリド(⇒解糖系)+脂肪酸(⇒アセチルCoA
 ⇒ クエン酸回路 ⇒ 電子伝達系

呼吸基質として炭水化物、タンパク質、脂肪とあり、似たような代謝をしますが違っている点もあります。
呼吸商というもので比較してみましょう。

呼吸商

呼吸で発生する二酸化炭素と消費した酸素の体積比を呼吸商といいます。
(発生する二酸化炭素)÷(消費する酸素)

 \(\displaystyle \color{red}{\mathrm{RQ=\frac{CO_2}{O_2}}}\)

呼吸商 \(\mathrm{RQ}\) は上の式で計算されますが体積比はモル比に比例するので、反応式の係数で理論的に計算することができます。

炭水化物(グルコース)の場合の反応式

 \(\mathrm{C_6H_{12}O_6+6H_2O+\color{red}{6\,O_2} \rightarrow \color{red}{6\,CO_2}+12H_2O}\)

 \(\displaystyle \mathrm{RQ=\frac{\color{red}{6}}{\color{red}{6}}=1.0}\)

タンパク質(ロイシン)の場合の反応式

 \(\mathrm{2C_6H_{13}O_2N+\color{red}{15\,O_2} \rightarrow \color{red}{12\,CO_2}+10H_2O+2NH_3}\)

 \(\displaystyle \mathrm{RQ=\frac{\color{red}{12}}{\color{red}{15}} ≒ 0.75}\)

脂肪(トリステアリン)の場合の反応式

 \(\mathrm{2C_{57}H_{110}O_{6}+\color{red}{163\,O_2} \rightarrow \color{red}{114\,CO_2}+110H_2O}\)

 \(\displaystyle \mathrm{RQ=\frac{\color{red}{114}}{\color{red}{163}} ≒ 0.7}\)

「何がわかるの?」と思いますよね。
基質の炭素の数が比較しにくいので、
酸素の消費に対する二酸化炭素の発生の比を見ようとしているのです。
消費する酸素の量と発生する二酸化炭素の量を測定すればどの基質を多く使っているかがわかります。

高校の生物としての呼吸商は計算式を覚えるまででかまいません。
分母に酸素の体積、というのは覚えておきましょう。

炭水化物を基質にする呼吸

⇒ 呼吸(解糖系・クエン酸回路・電子伝達系)で必要な酵素としくみ

は同時に見ておく必要性はありますよ。

さらに同化について

⇒ 光合成を行う場所と光合成に必要なものと色素の種類

人は分解しかできないのか、知っておくと良いです。