動物の配偶子には精子と卵があります。
いずれも減数分裂によって作られますが、すべての細胞が精子や卵になるわけではありません。
卵の分裂の過程においては消失するものもあります。
ここでは体細胞分裂との違いと配偶子形成の過程と受精のしくみを見ておきましょう。

精子の形成

精子の形成は雄(おす)の精巣で行われ、次のような過程をとります。
①まず「始原生殖細胞」(2n)の体細胞分裂によって「精原細胞」(2n)ができます。
その後、さらに体細胞分裂を繰り返して成熟して精子の元となる「一次精母細胞」となります。
②一次精母細胞(2n)は減数分裂を行って、
第一分裂によって「二次精母細胞」(n)となり、
第二分裂によって4個の「精細胞」(n)となります。

③精細胞は変形して運動性を持った「精子になります。

精細胞の変形の結果、先体と核を含んだ「頭部」、ミトコンドリアを含んだ「中片」、べん毛部分の「尾部」に分かれた構造となります。

卵の形成

卵(らん)の形成は雌(めす)の卵巣で行われ、次のような過程をとります。
①精子の場合と同様に「始原生殖細胞」(2n)の体細胞分裂によって「卵原細胞」(2n)ができます。
卵原細胞は体細胞分裂を繰り返し、増殖して卵細胞の栄養となる卵黄を蓄えて「一次卵母細胞」(2n)となります。

鶏卵の色によって栄養価が違うというのは間違いです。
餌によって卵黄の色は変わりますので色が黄色で濃いほど栄養価が高いというのは都市伝説です。w

③一次卵母細胞は減数分裂しますが、これが著しい不等分裂で、
第一分裂で細胞質に富んだ「二次卵母細胞」(n)と小さな「第一極体」(n)になります。
さらに、
④第二分裂によって、
二次卵母細胞は1個の大きな「」(n)と1個の「第二極体」に分裂し、
第一極体は2個の「第二極体」(n)に分裂するので、
1個の卵と、3個の極体ができることになります。

この極体はやがて退化して、消失します。

受精

単相(n)の精子が単相(n)の卵に進入し、精核と卵核が融合して複相(2n)の受精卵ができる過程を受精といいます。
簡単にいうと精子と卵などの配偶子が融合することを受精といいます。

ウニを例に挙げて受精の過程を見てみます。

精子での反応

ウニでは精子が卵の卵膜の外側にあるゼリー層に接触し、
ゼリー層にある糖質を受容するとその情報が先体胞に伝えられます。
ゼリー層の糖類の情報を受容した先体胞は、エキソサイトーシスを起こし、
精子の頭部にある「先体」からゼリー層を溶かすタンパク質分解酵素などが放出されます。
また、
精子の頭部の細胞質からアクチンフィラメントの束が出て、精子の頭部の細胞膜とともに先体突起を作ります。
この反応を「先体反応」といいます。

卵での反応

精子が卵の細胞膜に達して、
精子と卵の細胞膜が融合すると、
その部分の細胞膜付近にある表層粒が卵膜の内側に張り付き、その内容物が卵膜と細胞膜との間に放出されます。
これを「表層反応」といいます。

卵膜と細胞膜を接着していた構造が分解されることで卵膜が細胞膜から離れ、硬くなって「受精卵」となります。
このときできる受精膜によって受精卵にははの精子が進入できなくなります。
この現象を「多精拒否」といって多精受精を防いでいます。

進入した精子の頭部からは、「精核」と「中心体」が放出され、
中心体から微小管が伸びて「精子星状体」が形成され、
精核は卵核のもとに移動し、やがて精核と卵核が融合して受精が完了します。

受精の完了が引き金となり卵内ではタンパク質の合成やDNAの複製が始まり、卵割が始まります。
これを「卵の付活」といいます。

これからが「発生」となりますが、
受精の際、精子側で起こる先体反応、卵子側で起こる表層反応、
どちらも受精の際に起こるので単独では起こりません。

先体反応:卵のゼリー層に達すると、先体からゼリー層を溶かす酵素が放出され精子からは先体突起が伸びる。
表層反応:精子と卵の細胞膜が融合すると、表層粒の内容物が放出され、卵膜が細胞膜から離れて受精膜となる。

この2つは確認しておきましょう。

これから卵割や発生を見ていきますが、

⇒ 卵割の種類と体細胞分裂との違いおよびウニとカエルの発生の違い

⇒ 体細胞分裂と減数分裂の違いと分裂の過程

は確認しておくと良いです。

問題に取り上げられるのはこのページの配偶子の形成ですよ。

植物の配偶子形成は

⇒ 被子植物の配偶子形成と受粉(重複受精)および自家不和合性

配偶子形成は子孫を強く残す為の過程ですので見ておくと良いです。