卵割とは受精卵の初期の分裂をいいますが、体細胞分裂との違いはあるのでしょうか。
卵割は卵(生物)の種類によって様式が違いますので確認しておきましょう。
また、問題によく出てくるウニとカエルの発生の違いについても用語の確認とともに過程を追っていきましょう。

発生と卵割

発生というと『気体が発生する』のように何かが現れることを意味すると考えてしまうかもしれませんが、
生物では、
受精卵が体細胞分裂を繰り返し、親と同じ形、形態になるまでの過程を「発生」といいます。

受精卵から始まる発生初期の体細胞分裂は、特に「卵割」といいます。
これは通常の体細胞分裂とは違い、間期にDNAは複製するけど細胞が成長しないので、分裂の度に娘細胞は小さくなります。

卵割によって生じる細胞を「割球(かっきゅう)」といいます。

卵において、極体が放出された部分を「動物極」といい、反対側を「植物極」といいます。
(地球でいうと「北極」と「南極」のような感じです。)
両極の中間の面を「赤道面」といいます。

表面だけを指すのではなく、内部も含めていいますので「赤道面」です。

また、動物極側の半球を「動物半球」、植物極側の半球を「植物半球」といい、
動物極から植物極に向けての縦の卵割を「経割」、赤道面に沿った方向の卵割を「緯割」といいます。
地球の緯度、経度であてはめれば同じ方向性です。

卵の種類と卵割の様式

卵は発生に必要な栄養分を「卵黄」としてたくわえています。
卵は卵黄の量と分布によって分類されます。
また、卵黄は卵割を妨げるので卵黄の量や分布によって卵割様式も変わっています。

 等黄卵 

卵黄の量は少なくて、卵割の様式は「等割」です。
例:ウニや哺乳類

 端黄卵 

卵黄の量が割と多く「不等割」をするカエルやイモリと、

卵黄が非常に多く「盤割」をする鳥類や魚類やは虫類がいます。

 心黄卵 

卵黄の量は多く、卵割の様式は「表割」です。
例:昆虫やクモ

受精卵の体細胞分裂の初期段階にあたる卵割は、
「等割」「不等割」「盤割」「表割」の4種類がありますが、
等黄卵で等割するウニと、端黄卵で不等割するカエルのケースを見ておけば良いです。

ウニの発生

ウニの受精卵は卵黄が少なく均等に分布した小形の等黄卵です。
卵割の様式は等割で、受精卵から桑実胚までの卵割の様子は下の図のようになります。

受精卵から経割が起こり2細胞期となり、
2細胞期からまた経割が起こり4細胞期となり、
4細胞期から緯割が起こり8細胞期となります。

8細胞期までは各割球の大きさは同じですが、8細胞期から16細胞期に移るとき、動物極側では経割が起こり、植物極側では経割が起こり不均等な割球となります。
動物極側の中割球が8つ、
植物極側の大割球が4つ、
植物極の付近に小割球4つが存在します。
さらに卵割は進み細胞数が200前後の桑実胚(そうじつはい)となります。

桑実胚はさらに分裂して、胞胚腔をもつ胞胚になります。

胞胚期には、卵割腔大きく発達して胞胚腔になります。
この時期には受精膜を破ってふ化し、繊毛(せんもう)を使って水中に泳ぎ出すようになります。

原腸胚期には植物極で原口(げんこう)の陥入(かんにゅう)が起こり原腸ができ、外胚葉、中胚葉、内胚葉が分化します。
外胚葉は、表皮や神経系となり、
中胚葉は、骨片や筋肉となり、
内胚葉は、消化管になります。

プリズム幼生期には原口の反対側に口ができます。
この時期を幼生といいます。

プルテウス幼生期になると各肺葉からいろいろな器官が分化してきます。
プルテウス幼生はしばらく浮遊生活をしたあと、変態して管足やとげをもった生体のウニとなります。

カエルの発生

カエルの卵は端黄卵で、動物極側は黒色の色素粒が多く植物極側には少ないです。
精子は動物半球側から1個だけ進入することができます。
受精すると卵の表層全体が細胞質に対し約30度表層回転し、
卵の植物極に局在していた母性因子(ディシェベルドタンパク質)が、精子進入点の反対側(植物極側)にできる「灰色三日月環」(はいいろみかづきかん)の部分に移動します。

灰色三日月環ができた部分は後に胚の背側になります。

第一卵割は、精子が進入した点と、動物極と、植物極とを結んだ面で起こります。
(面は二点では定まらず、3点が決まれば固定されます。)

カエルの卵割は、受精卵が経割をして2細胞期、さらに経割をして4細胞期になります。
このとき植物極の卵割が遅れるのは卵黄が植物極に多いからです。

4細胞期から8細胞期への第三分裂(緯割)では赤道面より動物極よりで起こります。
そのため16細胞期を経て卵割を続け、桑実胚でも動物極側の割球は小さくなり、植物極側の割球は大きくなります。
この第三分裂からは「不等割」になります。

桑実胚はやがて「胞胚」となりますが、卵割球のすきまである卵割腔が発達して「肺胞腔」となります。
胞胚腔は動物極側にでき、取りまく細胞は数層の膜のようになっていて、植物極側には卵黄が多く存在しています。

赤道面より少し植物極側よりにできた原口から胚表面の細胞が流れ込んで「中胚葉」となり、
原腸を形成するとともに、胚をつくる細胞群は、外胚葉、中胚葉、内胚葉の3つに分化します。

さらに分化が進み「神経胚」ではだるま型になります。
胚の上面の外胚葉が肥厚(ひこう)し、「神経板」ができます。
この神経板は陥没して「神経管」と変化します。
やがて胚に尾芽ができはじめ尾芽胚(びがはい)となり、いろいろな器官が形成されます。

胚葉の分化と器官

胚葉が分化すると何になるか見ておきましょう。

外胚葉は、「表皮」と「神経管」になります。
表皮は、体表や口や鼻の上皮、目の水晶体(レンズ)、核膜となります。
神経管は、脳、脊髄、網膜や眼胞(がんぽう)となります。

中胚葉は、「脊索(せきさく)」「体節」「腎節」「側板」となります。
脊索はやがて退化します。
体節は、脊椎骨(せきついこつ)、骨格、骨格筋、皮膚の真皮(しんぴ)となります。

骨格筋(横紋筋)については
⇒ 筋肉の構造と筋収縮の仕組み(筋原繊維とフィラメント)
で取り上げていますので参考にして下さい。

腎節は、腎臓(じんぞう)、輸尿管(ゆにょうかん)になります。
側板は、内臓筋、心筋、血管、腹膜、腸間膜になります。

内胚葉は、「腸管」になります。
前部は、気管、肺、食道、胃、肝臓、膵臓になり、
中部・後部は、小腸、大腸、ぼうこうになります。

尾芽胚の横から見た断面図は

です。

ウニとカエルの発生の大きな相違点

卵割:
ウニは等割で、カエルは不等割

胞胚期:
ウニが胞胚腔は中央にあって大きく、胞胚腔をとりまく細胞は一層であるのに対し、
カエルは胞胚腔は動物極側にあって小さく、胞胚腔をとりまく細胞は複数層になっている。

原口陥入:
ウニは植物極から原口の陥入が起こるが、
カエルは赤道面のやや植物極に近いところから原口が陥入する。

発生ではたくさんの用語が出てきます。
ウニとカエルの発生は問題にされやすいので忘れないように何度も復習しておくと良いですよ。

受精の後の卵割ですので、
動物の配偶子形成(精子と卵の形成)の過程と受精
の復習は欠かせませんよ。