水素イオン濃度を求められないとpH計算ができません。
水酸化物イオン濃度も同様です。
そこで、pHの求め方は知っていても水素イオン濃度が求められないという場合があるといけないので、計算問題をいくつかやっておきましょう。
公式もありますが、使うのはできるだけ溶液の濃度と水のイオン積に絞って説明します。

水素イオンと水酸化物イオン濃度

問題を解く前に、ここで使う記号と条件を先に書き出しておきます。

  水素イオン濃度  : \( \mathrm{[H^+]}\)
 水酸化物イオン濃度 : \(\mathrm{[OH^-]}\)

と、この後は説明無しで表しますので覚えておいてください。

水のイオン積

また入試では水のイオン積は

 \(\mathrm{[H^+][OH^-]}=\color{red}{10^{-14}}\)

としてあつかいます。
これは25℃のときの値ですがこれ以外では対数計算ができないので、
問題に書いていなくても25℃だとしておきます。

「25 ℃だけで大丈夫?」
大丈夫です。でません。
そんなこと考えるヒマがあったらとっとと 25 ℃で水素イオン濃度が求められるようになりましょう。
それ以外の温度と水のイオン積指定が出るようないやらしい問題は捨てて下さい。笑
その問題を捨ててもいいように他の項目をしっかり勉強した方が良いです。
(理系で化学を重視する大学や難関大学を志望する人はしっかり本試験対策して下さい。)

問題を解いて行きましょう。

水素イオン濃度を求める問題

例題1

0.100 mol/Lの硫酸 7.0 mLに、0.080 mol/Lの塩化バリウム水溶液 10.0 mLを加えて良くかき混ぜた。
このとき、溶液中の水素イオン濃度を求めよ。

\(\mathrm{[H^+]}\) の単位は「mol/L」です。
先ずは 0.100 mol/Lの硫酸 7.0 mLに何モルの硫酸があるかを求めましょう。

0.100 mol/Lの硫酸は 1000 mL(=1L)あるときに 0.100 molの硫酸を含んでいます。
7.0 ml中には

 \( 0.100\times \displaystyle \frac{7.0}{1000}\, (\mathrm{mol})\)

ありますが硫酸は2価の酸なので水素イオンは2倍になります。

 \( 0.100\times \displaystyle \frac{7.0}{1000}\times 2 \,(\mathrm{mol})\)

これで硫酸が持っていた水素イオンのモル数が分かりました。

ところで、この反応は

 \( \mathrm{H_2SO_4+BaCl_2\rightarrow BaSO_4 +2HCl}\)

です。
沈澱はできますが水素イオン濃度は変化しません。
だから硫酸から出てきた水素イオンで濃度を計算すれば良いのです。

ただし、溶液は硫酸 7.0 mLに塩化バリウム 10.0 mLを加えたので 17.0 mLになっています。
この中に先計算した水素イオンが入っているので、
1000 mLに換算すれば水素イオン濃度が出ます。

水素イオン濃度を \(x\) として比例でおくと

 \( 17.0:0.100\times \displaystyle \frac{7.0}{1000}\times 2=1000:x\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}17.0\times x=1000\times 0.100\times \displaystyle \frac{7.0}{1000}\times 2\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} x=\displaystyle \frac{0.100\times 7\times 2}{17.0}≒ 0.082\)

 \(\mathrm{[H^+]\,≒\,0.082 (mol/L)}\)

1 L=1000 mL中の水素イオンのモル数が水素イオン濃度です。

例題2

0.1 mol/Lの塩酸 800 mLと 0.1 mol/Lの水酸化ナトリウム 200 mLとを混合し、1000 mLになったとすると、このときの溶液の水素イオンの濃度はいくらか求めよ。

\( \mathrm{HCl+NaOH\rightarrow NaCl+H_2O}\)

今度は反応して水素イオンは減りますが全部は反応しません。

0.1 mol/Lの塩酸 800 mL中の

 水素イオンの数は \(\displaystyle 0.1\times \frac{800}{1000}\)

0.1 mol/Lの水酸化ナトリウム 200 mL中の

 水酸化物イオンの数は \(\displaystyle 0.1\times \frac{200}{1000}\)

中和によって水素イオンは減るので

 \( 0.1\times \displaystyle \frac{800}{1000}-0.1\times \displaystyle \frac{200}{1000}\)

これは 1000 mL中の水素イオンの数になるので

 \( \mathrm{[H^+]=0.1\times \displaystyle \frac{800}{1000}-0.1\times \displaystyle \frac{200}{1000}= \underline{0.06}\,(mol/L)}\)

中和して数が変わるときも反応後の 1000 mL中の水素イオンの数を求めれば良いのです。

今の問題の求める濃度を逆にしてみます。

水酸化物イオン濃度を求める問題

例題3

0.1 mol/Lの塩酸 800 mLと 0.1 mol/Lの水酸化ナトリウム 200 mLとを混合し、1000 mLになったとする。
このときの溶液の水酸化物イオンの濃度はいくらか求めよ。

水のイオン積を思い出して下さい。

⇒ 水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度と水のイオン積

2つの変数の積が一定です。

積が \(10^{-14}\) という一定の値になるので、
水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の関係は反比例です。

 \(\mathrm{\color{red}{[H^+]}\color{blue}{[OH^-]}}=10^{-14}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt}\displaystyle \mathrm{\color{red}{[H^+]}}=\frac{10^{-14}}{\mathrm{\color{blue}{[OH^-]}}}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt}\displaystyle \mathrm{\color{blue}{[OH^-]}}=\frac{10^{-14}}{\mathrm{\color{red}{[H^+]}}}\)

簡単にいうと、一方が増えると他方が減る、ということです。

気をつけなければならないのは

 \(10^{-a}\) は \(a\) が大きくなれば値は小さくなっています。

 \(10^{-2}\,> \,10^{-7}\, >\,10^{-13}\)

分かりますよね。

 \( 10^{-2}=\displaystyle \frac{1}{10^2}=0.01\)

 \( 10^{-7}=\displaystyle \frac{1}{10^7}=0.0000001\)

 \( 10^{-13}=\displaystyle \frac{1}{10^{13}}=0.0000000000001\)

です。

こんな数を書くのはメンドウなので指数があるのですが一応確認しました。

問題に戻りましょう。
先程水素イオン濃度は求めたのですが、違う問題としてもう一度考えます。

問題に戻りましょう。
先程水素イオン濃度は求めたのですが、違う問題としてもう一度考えます。

 \( \mathrm{HCl+NaOH\rightarrow NaCl+H_2O}\)

中和して水酸化物イオンは減りますが溶液の中にないわけではありません。
この場合だと水素イオンに比べて圧倒的に少ないですが存在しているのです。

このように水素イオンが多い場合は水素イオンから逆に求めることになります。
水のイオン積を利用するのです。

0.1 mol/Lの塩酸 800 mL中の

 水素イオンの数は \(\displaystyle 0.1\times \frac{800}{1000}\)

0.1 mol/Lの水酸化ナトリウム 200 mL中の

 水酸化物イオンの数は \(\displaystyle 0.1\times \frac{200}{1000}\)

中和によって水素イオンは減るので

 \( 0.1\times \displaystyle \frac{800}{1000}-0.1\times \displaystyle \frac{200}{1000}\)

これは 1000 mL中の水素イオンの数になるので

 \( \mathrm{[H^+]=0.1\times \displaystyle \frac{800}{1000}-0.1\times \displaystyle \frac{200}{1000}=\displaystyle \frac{6}{100}\,(mol/L)}\)

この値が水素イオン濃度で、水のイオン積から

 \( \mathrm{[H^+][OH^-]}=10^{-14}\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}\mathrm{[OH^-]=\displaystyle \frac{10^{-14}}{[H^+]}}\)

これに水素イオン濃度を代入します。

\( \mathrm{[OH^-]=\displaystyle \frac{10^{-14}}{[H^+]}}\\ \\
=\displaystyle \frac{10^{-14}}{\displaystyle \frac{6}{100}}=\displaystyle \frac{10^{-14}\times 10^2}{6}\\ \\
≒ 0.17\times 10^{-12}=\underline{1.7\times 10^{-13}}\) (mol/L)

指数の処理は良いですよね。

 \( 0.17\times 10^{-12}=1.7\times 10^{-13}\)

0.17 に 10 をかけたので、\(10^{-12}\) には \(10^{-1}\) をかけた( 10 で割った)

 \( 0.17\times \underline{10} \times 10^{-12}\times \underline{10^{-1}}\)

ということです。

何がポイントかというと

 \(\mathrm{[H^+][OH^-]}=10^{-14}\)

を使うということです。

ここまでできたらpHが求められるようになります。

⇒ pHの値を求める計算(水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度)

⇒ pHの求め方(公式の利用と計算問題)練習とlogの確認

水素イオン濃度は求められるようになっておきましょう。