速さと速度の違いを知っておくことは基礎物理のはじめですね。
速さ、速度は良く聞くけどどう違うのかが説明され混乱するのではないでしょうか。
もちろん定義があって約束されているのですがあまり深く考えなくて良いです。
何故かというと、物理がわかっている人が先を見すぎて説明しているのでわかりにくくしているだけです。

速さとは?

速さを定義すると
 \(\LARGE{\color{red}{速さ=\frac{移動距離}{経過時間}}}\)
です。

数学で二点間の距離と言えば最短距離を意味しますが、
ここがあいまいに感じるところです。
ここでは「直線を移動したとみなす距離」のことです。

例えば、
400mトラックの陸上競技場で、
400m走はゴールラインがスタート地点になりますから、
スタートからゴールラインまでの距離はほぼ0です。
(走りレーンにもよりますけど。)
しかし、実際には「直線で400m移動した」とみなします。

つまり、
これから考える移動、運動は直線運動に限って考えておけば良いということです。
ここで速さと速度の違いがわかれば、いろいろな運動に使えるようになります。
ですが、ここでは直線運動とみなして考えてください。

小学生で速さを
 \(\LARGE{\color{red}{速さ=\frac{道のり}{時間}}}\)
としたでしょう?あれでいいのです。

そもそも教科書にもある「ピッチャーの球速」、
が「速さ」とありますが、ピッチャーの投げたボールは直線的には動いていません。
投げたボールが直線で動くほどのピッチャーなら大リーグで大活躍しているでしょう。

速さとは移動したとみなせる距離を時間で割っただけの大きさを表しているのです。

速さは大きさなので負の数はありません。
だから「+」という符号もつけません

例題1

300mを20sで走る人の速さは何m/sか求めよ。

物理で使う記号・単位の意味を出てくる度に少し説明しておきます。
これは国際的に決められていることで数学と同じような共通の意味を持つ記号です。
 m:メートル
 s:秒
 m/s:「メートル毎秒」または「メートル・パー・セカンド」と読みます。

速さの求め方は
 \(\LARGE{速さ=\frac{移動距離}{経過時間} }\)
なので

 \( \displaystyle \frac{300}{20}=15(m/s)\)

が求める速さです。

これをちょっと覚えておいてください。

速度とは?

速さは直線運動する物体の移動距離と時間とで求まる大きさでした。

一方、速度とは速さに方向性を加えて考えたものです。

例えば、
数学の数直線と同じように、原点から右を正の方向とすると、
右に5m/sの速さで動く物体の「速度」は、
 \(\color{red}{+5}\mathrm{m/s}\)
のように符号がつきます。

同じ右に \(5\mathrm{m/s}\)の速さで動く物体でも、
軸を逆にとれば、(原点より左側を正の方向とすれば)
この物体の速度は、
 \(\color{red}{-5}\mathrm{m/s}\)
と表します。

速度を答える時は「正の向き」と「速さ」を答えなければなりません。

ただし、問題に向きが書かれている場合や、
一般的に正の方向を書かなくても通じる場合は書かないときもあります。
例えば、スタートからゴールの方向が決まっている場合などです。

例題2

高速道路を東に向けて走っている車の速さは秒速20m/sであった。
この車の速度はいくらか答えよ。

「東を正の方向とすると+20m/s」
または
「西を正の方向とすると-20m/s」

ということになります。

直線運動に限って考えれば良いので、
速度には方向性があるというところが速さとの違いです。

※(読み飛ばして良いところです。笑)
ベクトルの話が出てくるようですが気にしなくて良いですよ。
物理基礎の段階でベクトルや微分を持ち出している時点で順番を間違えています。
「方向性を持った線分の長さ」=「ベクトルの大きさ」
が速さと同じ意味になると理解できれば良いですが、今のところ気にしなくて良いです。
ベクトルや微分がわかるなら、移動距離は速さを積分すれば良いとわかるはずなので、覚えなければならない公式がかなり減るはずです。笑

もうおわかりだとは思いますが、
速さ」とは「速度の大きさ」です。

 速度は 方向と符号が必要
 速さには 方向も符号も必要無い
ということです。

ちょっと補足しておきます。
車の速さは普通なら「時速」で表しますね。

物理であつかう単位は世界基準だとm(メートル)とs(秒)ですが、
1000倍を意味するk(キロ)という接頭辞を用いて表すこともあります。

20m/sは時速に直すと、
1時間は3600秒なので

 \( \mathrm{20(m/s)=20\times 3600(m/h)=72000(m/h)=72(km/h)}\)

となります。

\(\mathrm{h}\) は「時間」(hour)を意味します。
「km/h」の読み方は「キロメートル・毎時」で良いです。

変位や加速度をやる前に単位換算の練習をしておいた方が良いかもしれませんね。

速さを求める公式

いずれ公式を並べることになりますが、
ここで出てきた等速直線運動における公式を示しておきます。

 速さ: \( v\)
 移動距離: \( x\)
 経過時間: \( t\)
とすると

 \(\displaystyle \color{red}{v=\frac{x}{t}}\) または \( \color{red}{x=vt}\)

上の公式は小学生でも知っている「み・は・じ」です。
下の変形したものは、
 一定の速さで直線運動する物体の移動距離は、
「速さ×時間」になるというものです。

移動距離は文字が変わることもありますが、
速さと時間はこれから同じ文字を使うことになりますので覚えておくと良いです。

ここだけではなく教科書から問題集に至っても余程でない限り記号は変わりません。
なので覚えていないと先に進んでも意味がつかめないまま公式をながめることになります。

⇒ 単位量の種類一覧(力学編)と速さの単位換算・変換例(物理基礎)

公式に使われる文字の意味は忘れないでください。

いずれ出てくる加速度にも方向性があります。

⇒ 加速度とは?求め方と公式と単位の読み方とマイナスがある注意点

マイナス(-)がつくのは速度だけではありません。