2019年(平成31年)度に行われたセンター試験化学の第2問の解説です。
第2問は結合エネルギー、溶解度積が小さい平衡定数の計算や溶解熱と比熱から上昇温度の計算があります。
比例計算で答えは出てきますが、内容を理解できていないと計算すらできませんので差は出たところでしょう。

正解は大学入試センターにあります。

⇒ 2019年度センター試験化学の問題

第\(\,2\,\)問

問\(\,1\,\)

過酸化水素\(\,\mathrm{H-O-O-H}\,\)を原子まで分解して結合エネルギーを計算します。

 \(\,\mathrm{H_2O_2 \rightarrow H_2+O_2}\,\)

これが \(\,イ \rightarrow ア\,\) です。

さらに

 \(\,\mathrm{H_2 \rightarrow 2H}\,\)
 \(\,\mathrm{O_2 \rightarrow 2O}\,\)

に分解したのがさらにその上の状態です。

 \(\,\mathrm{H_2}\,\)の結合エネルギー \(\,436\,\)

 \(\,\mathrm{H-H}\,\)を切り離し\(\,\mathrm{2H}\,\)とするエネルギー

 \(\,\mathrm{O_2}\,\)の結合エネルギー \(\,498\,\)

 \(\,\mathrm{O-O}\,\)を切り離し\(\,\mathrm{2O}\,\)とするエネルギー

 \(\,\mathrm{H_2O_2}\,\)中の\(\,\mathrm{O-O}\,\)の結合エネルギー \(\,144\,\)

 \(\,\mathrm{H-\color{red}{O-O}-H}\,\)の\(\,\mathrm{\color{red}{O-O}}\,\)を切り離すエネルギー

と考えましょう。

結合エネルギーは共有結合を切断するのに必要なエネルギー

⇒ 結合エネルギーと反応熱

それほど難しい話ではないのですがエネルギーの総和は変わらないということを考えて、
\(\,A\,\)状態のエネルギーを\(\,[\,A\,]\,\)などと表すことにします。

 \(\,\mathrm{H_2+O_2 \rightarrow H_2O_2}\,\)

生成熱が\(\,136\,\)なので

 \(\,\mathrm{[\,H_2+O_2\,]-[\,H_2O_2\,]}=\color{red}{+136} ・・・①\)

結合エネルギーの数値から

 \(\,\mathrm{[\,2H\,]-[\,H_2\,]=+436}\,\)

 \(\,\mathrm{[\,2O\,]-[\,O_2\,]=+498}\,\)

なので

 \(\begin{eqnarray}
\,\mathrm{[\,2H+2O\,]-[\,H_2+O_2\,]}&=&436+498\\
&=&\color{red}{934} ・・・②
\,\end{eqnarray}\)

①②から
 \(\,\mathrm{[\,2H+2O\,]-[\,H_2O_2\,]=934+136=1070}\,\)

これは
 \(\,\mathrm{H_2O_2}\,\)状態と\(\,\mathrm{2H+2O}\,\)状態のエネルギーの差
を意味しています。

 \(\,\mathrm{H\color{blue}{-}O\color{red}{-}O\color{blue}{-}H}\,\)

の持つエネルギーは、
 
 2つの\(\,\mathrm{O\color{blue}{-}H}\,\)と1つに\(\,\mathrm{O\color{red}{-}O}\,\)

で、
 \(\,\mathrm{O-O}\,\)の結合エネルギーは \(\,144\,\)

なので\(\,\mathrm{O-H}\,\)の結合エネルギーを\(\,x\,\)とすると

 \(\begin{eqnarray}
2x+144&=&1070\\
2x&=&1070-144\\
&=&926\\
x&=&\underline{ 463 }
\end{eqnarray}\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ⑤ }}\)

アとイの上下を確認しないとミスします。笑

エネルギーを上から見ましたが、

 \(\,\mathrm{H-O-O-H}\,\)

が持っているエネルギーから考えても良いです。

 \(\,\mathrm{O-O=144}\,\)
 \(\,\mathrm{H-O}=x\,\)

とすると

 \(\,\mathrm{H_2+O_2 \rightarrow H_2O_2}\,\)

の生成熱が\(\,136\,\)なので

 \(\begin{eqnarray}
2x+144&=&136+436+498\\
2x&=&1070-144\\
&=&926\\
x&=&463
\end{eqnarray}\)

単なる方程式の説明に時間かけすぎました。

次行きます。

問\(\,2\,\)

 平衡 \(\,\mathrm{A \rightleftharpoons B}\,\)

において

 \(\,\mathrm{A \rightarrow B}\,\)
の反応速度は
 \(\begin{eqnarray}
v_1&=&k_1[\,\mathrm{A}\,]\\
&=&5.0\times [\,\mathrm{A}\,] \end{eqnarray}\)

 \(\,\mathrm{B \rightarrow A}\,\)
の反応速度は
 \(\begin{eqnarray}
v_1&=&k_1[\,\mathrm{B}\,]\\
&=&1.0\times [\,\mathrm{B}\,] \end{eqnarray}\)

⇒ 反応速度式と比例定数(反応速度定数)

これは平衡状態での反応速度です。

\(\,\mathrm{A}\,\)を\(\,\mathrm{1.2\,mol}\,\)溶かすと平衡になりますが、
平衡状態での\(\,\mathrm{A}\,\)のモル濃度を\(\,x\,\)とすると、

 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
& \mathrm{A}濃度 & \mathrm{B}濃度 \\ \hline
 平衡前 & 1.2 & 0 \\ \hline
 平衡後 & \color{red}{x} & \color{red}{1.2-x} \\ \hline
\end{array}\)

平衡状態では正反応と逆反応の速度は同じになっているので、

 \(\,v_1[\,\mathrm{A}\,]=v_2[\,\mathrm{B}\,]\,\)

よって
 \(\begin{eqnarray}
5.0x&=&1.0(1.2-x)\\
&=&1.2-x\\
5.0x+1.0x&=&1.2\\
6.0x&=&1.2\\
x&=&\underline{ 0.20 }
\end{eqnarray}\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ① }}\)

⇒ 反応の速さと反応速度の求め方

復習するなら求め方からです。

問\(\,3\,\)

難溶性物質の溶解度積の計算です。

⇒ 水に溶けにくい塩の溶解平衡と溶解度積

溶解度の低い物質では固体は十分にあるので、溶解しているイオンの積だけを考えます。

 \(\,[\mathrm{Ag}^+][\mathrm{Cl}^-]=K_{\mathrm{sp}}\,\)

温度が一定なら\(\,K_{\mathrm{sp}}\,\)も一定なので

溶液中の\(\,[\mathrm{Ag}^+]\times [\mathrm{Cl}^-]\,\)が\(\,K_{\mathrm{sp}}\,\)以上になったとき沈殿が出てきます

反比例で表されているグラフは軸を
 \(\,[\mathrm{Ag}^+]-[\mathrm{Cl}^-]\,\)
としたグラフです。
縦の \(\displaystyle \frac{K_{sp}}{\mathrm{Ag}^+}\) は\(\,[\mathrm{Cl}^-]\,\)を表しています。

それは良いですが、この反比例は積(比例定数)が一定で、\(\,K_{sp}\,\)を表していることは気がつきましょう。

 \(\displaystyle [\mathrm{Ag}^+]\times \frac{K_{sp}}{[\mathrm{Ag}^+]}=K_{sp}\)

グラフを読み取ると\(\,(\,1\,,\,1.8\,)\,\)から

 \(\begin{eqnarray}
K_{sp}&=&1.0\times 10^{-5}\times 1.8\times 10^{-5}\\
&=&\color{blue}{1.8\times10^{-10}}
\end{eqnarray}\)

このことから
 \(\,[\mathrm{Ag}^+]\times[\mathrm{Cl}^-]>\color{blue}{1.8\times10^{-10}}\,\)
となるとき沈殿が生成します。

気をつけたいのは溶液を混合すると体積が変化するので濃度が変わることです。

この問題では『同体積ずつ混合』するので濃度は\(\,\displaystyle \frac{1}{2}\,\)になります。

ア 
 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
 イオン濃度 & [\mathrm{Ag}^+] & [\mathrm{Cl}^-] \\ \hline
 混合前 & 1.0 & 1.0 \\ \hline
 混合後 & \color{red}{0.5} & \color{red}{0.5} \\ \hline
\end{array}\)

 \(\hspace{10pt} [\mathrm{Ag}^+][\mathrm{Cl}^-]\\
=\color{red}{0.5}\times 10^{-5}\times \color{red}{0.5}\times 10^{-5}\\
=\color{blue}{0.25}\times 10^{-10} < K_{sp}\)
 
イ 
 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
 イオン濃度 & [\mathrm{Ag}^+] & [\mathrm{Cl}^-] \\ \hline
 混合前 & 2.0 & 2.0 \\ \hline
 混合後 & \color{red}{1.0} & \color{red}{1.0} \\ \hline
\end{array}\)

 \(\hspace{10pt} [\mathrm{Ag}^+][\mathrm{Cl}^-]\\
=\color{red}{1.0}\times 10^{-5}\times \color{red}{1.0}\times 10^{-5}\\
=\color{blue}{1.0}\times 10^{-10} < K_{sp}\)

ウ 
 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
 イオン濃度 & [\mathrm{Ag}^+] & [\mathrm{Cl}^-] \\ \hline
 混合前 & 3.0 & 3.0 \\ \hline
 混合後 & \color{red}{1.5} & \color{red}{1.5} \\ \hline
\end{array}\)

 \(\hspace{10pt} [\mathrm{Ag}^+][\mathrm{Cl}^-]\\
=\color{red}{1.5}\times 10^{-5}\times \color{red}{1.5}\times 10^{-5}\\
=\color{magenta}{2.25}\times 10^{-10} > K_{sp}\)

エ 
 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
 イオン濃度 & [\mathrm{Ag}^+] & [\mathrm{Cl}^-] \\ \hline
 混合前 & 4.0 & 4.0 \\ \hline
 混合後 & \color{red}{2.0} & \color{red}{2.0} \\ \hline
\end{array}\)

 \(\hspace{10pt} [\mathrm{Ag}^+][\mathrm{Cl}^-]\\
=\color{red}{2.0}\times 10^{-5}\times \color{red}{2.0}\times 10^{-5}\\
=\color{magenta}{4.0}\times 10^{-10} > K_{sp}\)

オ 
 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
 イオン濃度 & [\mathrm{Ag}^+] & [\mathrm{Cl}^-] \\ \hline
 混合前 & 5.0 & 1.0 \\ \hline
 混合後 & \color{red}{2.5} & \color{red}{0.5} \\ \hline
\end{array}\)

 \(\hspace{10pt} [\mathrm{Ag}^+][\mathrm{Cl}^-]\\
=\color{red}{2.5}\times 10^{-5}\times \color{red}{0.5}\times 10^{-5}\\
=\color{blue}{1.25}\times 10^{-10} < K_{sp}\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ② }}\)

⇒ 水に溶けにくい塩の溶解平衡と溶解度積

確認しておくと良いです。

問\(\,4\,\)

電気分解です。

\(\,\mathrm{a}\,\)はイオン化傾向だけですね。

⇒ イオン化傾向(イオン化列)と反応性 金属の酸化還元

\(\,\mathrm{Cu}\,\)よりもイオン化傾向が大きい金属がイオンとして溶液中に存在しています。

答え \(\color{black}{\fbox{ ③ }}\)

金\(\,\mathrm{Au}\,\)や銀\(\,\mathrm{Ag}\,\)は陽極泥に混じるので陽極泥が銅の精錬で副産物として貴重なことが分かります。

⇒ 銅の単体と化合物 電解精錬とは?

\(\,\mathrm{b}\,\)

ファラデー定数による計算問題です。

⇒ ファラデーの電気分解の法則 電気素量とファラデー定数

電流を流した時間を\(\,t\,\)として比例計算すれば
銅イオン\(\,\mathrm{Cu^{2+}}\,\)は\(\,2\,\)価のイオンなので

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
9.65\times 10^4\times \frac{0.384}{64}\times 2&=&0.965\times t\\
10^5\times \frac{0.384}{64}\times 2&=&t\\
t&=&\underline{ 1.2\times 10^3 }
\end{eqnarray}\)

銅\(\,\mathrm{0.384\,g}\,\)は\(\,\mathrm{Cu=64}\,\)だから

 \(\displaystyle \frac{0.384}{64}\,\mathrm{mol}\)

なので必要なクーロンは銅イオンが\(\,2\,\)価であることを考えて

 \(\displaystyle 9.65\times 10^4\times \frac{0.384}{64}\times 2\)

これが流した電流(クーロン)に等しければ良いので、

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
0.965\times t&=&9.65\times 10^4\times \frac{0.384}{64}\times 2\\
t&=&1.2\times 10^3
\end{eqnarray}\)

としているだけです。

答え \(\color{black}{\fbox{ ② }}\)

問\(\,5\,\)

熱化学方程式の問題には違いありませんが、温度を表す関係式を作るだけです。

 \(\,\mathrm{NH_4NO_3(固)+aq=NH_4NO_3\,aq-26kJ}\,\)

この熱化学方程式の熱量は\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)の溶解熱です。
\(\,\mathrm{aq}\,\)は多量の水を意味しています。

文字が多いので整理しましょう。

 \(\,\color{red}{25}\,\)℃の水\(\,\color{red}{V}\,〔\,\mathrm{mL}\,〕\)
 \(\,\mathrm{NH_4NO_3}\,\)は\(\,\color{red}{m}〔\,\mathrm{g}\,〕\,\)
 水の密度は\(\,\color{red}{d}〔\,\mathrm{g/cm^3}\,〕\,\)
 水溶液の比熱を\(\,\color{red}{c}〔\,\mathrm{J/g\cdot K}\,〕\,\)
 \(\,\mathrm{NH_4NO_3}\,\)のモル質量は\(\,\color{red}{M}〔\,\mathrm{g/mol}\,〕\,\)

水の比重を\(\,1\,\)としてくれていれば楽だったのにね。笑

水の比重が\(\,\color{red}{d}\,\)で、水の体積が\(\,\color{red}{V}\,\)なので水の質量は\(\,\color{blue}{Vd}\,\)です。

これに質量\(\,\color{red}{m}\,\)の\(\,\mathrm{NH_4NO_3}\,\)が溶けるので、
溶液の質量は\(\,\color{blue}{Vd+m}\,\)になります。

\(\,\mathrm{NH_4NO_3}\,\)は\(\,1\,\mathrm{mol}\,\)溶けるときに
 \(\,\mathrm{26〔\,kJ\,〕=\color{red}{2.6\times 10^4}〔\,J\,〕}\,\)
吸熱します。

\(\,\mathrm{NH_4NO_3}\,\)はモル質量\(\,\color{red}{M}〔\,\mathrm{g/mol}\,〕\,\)で、
\(\,\color{red}{m}〔\,\mathrm{g}\,〕\,\)溶けるので物質量は\(\displaystyle \color{blue}{\frac{m}{M}}〔\,\mathrm{mol}\,〕\)

このとき溶解熱(吸収する熱量)は
 \(\,\color{blue}{2.6\times 10^4\times \frac{m}{M}}\,\)

この溶液の比熱は\(\,\color{red}{c}〔\,\mathrm{J/g\cdot K}\,〕\,\)で、
容積の質量は\(\,\color{blue}{Vd+m}\,\)なので、
\(\,1\,\mathrm{K}\,\)温度を変化させるのに\(\,\color{blue}{c(Vd+m)}\,\)の熱量が必要です。

\(\,\color{blue}{c(Vd+m)}\,\)で\(\,1\,\mathrm{K}\,\)の変化をするとき、
\(\,\color{blue}{2.6\times 10^4\times \frac{m}{M}}\,\)では?

という比例式で解けば変化する温度\(\,x\,\)が求まります。

 \(\begin{eqnarray}
c(Vd+m):1&=&2.6\times 10^4\times \frac{m}{M}:x\\
c(Vd+m)\times x&=&2.6\times 10^4\times \frac{m}{M}\\
x&=&2.6\times 10^4\times \frac{m}{M}\times\frac{1}{c(Vd+m)}\\
&=&\frac{2.6\times 10^4\,m}{c(Vd+m)M} ・・・\color{red}{★}
\end{eqnarray}\)

これは吸熱なのでこの変化する温度分\(\,25\,\)℃から引きます。

 \(\displaystyle \underline{ 25-\frac{2.6\times 10^4\,m}{c(Vd+m)M} }\,\)

\(\,\color{red}{★}\,\)は比例式でなくても比例関係に慣れていれば

 \(\hspace{10pt}\displaystyle 1\times \frac{2.6\times 10^4\times \frac{m}{M}}{c(Vd+m)}\\
\displaystyle =\frac{2.6\times 10^4\,m}{c(Vd+m)M}\)

から

  \(\displaystyle \underline{ 25-\frac{2.6\times 10^4\,m}{c(Vd+m)M} }\,\)

で良いですよ。

答え \(\color{black}{\fbox{ ② }}\)

⇒ 発熱反応と吸熱反応の熱化学方程式の作り方

熱化学方程式よりも比例計算に慣れることを優先した方が良いと思います。

⇒ 便利な比例関係式の作り方(出会えた方は超ラッキー)

中学の数学です。

センター試験の化学は続き問題がほとんどありません。
\(1\)問\(1\)問は単独で解けますので、共通テストになっても基本を広く復習することが対策でいいです。

ただ、解説する方は結構たいへんです。笑

⇒ 2019年度センター試験化学の第3問(無機化学)の解説

問3は例年通り無機化学です。

⇒ 2019年度センター試験化学の第1問の解説(共通テスト対策)

問\(1\)から見直しておくと良いです。

すべてこのサイトから説明できる問題です。