2019年(平成31年)度に行われたセンター試験化学の第3問の解説です。
第3問は無機化学分野の問題です。
教科書の基本から広い範囲で質問されますが、物質名と化学式が覚えられていないと理論的にはきびしいところかもしれません。

正解は大学入試センターにあります。

⇒ 2019年度センター試験化学の問題

各問題付近にある(⇒ リンクはこのサイト内の解説です。)

第\(\,3\,\)問

無機物質の性質です。

希ガスであるアルゴン\(\,\mathrm{Ar}\,\)は反応性は乏しいです。

⇒ 水素の製法と性質および希ガスの電子配置と性質

硫黄は結晶構造と性質が違う同素体を持っています。
同素体を持つ物質で問われる元素は限られているので覚えておいた方が良いです。

⇒ 物質の成分 同素体の種類と性質と生じる原因

リンの空気中酸化です。

 \(\,\mathrm{4P+5O_2 \rightarrow P_4O_{10}\,}\)

リンを空気中で転記すると十酸化四リンの白煙を上げて激しく燃焼します。

⇒ 窒素の単体と化合物およびリンの同素体と化合物

セラミックスの材料は珪砂や粘土です。
代表的なセラミックスは陶磁器、ガラスがありますが、これを作る工業をケイ酸塩工業(窯業「ようぎょう」)といいます。
伝統的セラミックスとニューセラミックス(ファインセラミックス)があるので確認してみると良いでしょう。

銑鉄は鋼よりも炭素や不純物の含有率は高いです。

⇒ 鉄の単体と化合物の性質と製錬方法

答え \(\color{black}{\fbox{ ⑤ }}\)

問\(\,2\,\)

アルカリ金属とアルカリ土類金属の性質ですがこれは説明不要でしょう。
炎色反応の色は覚えておいた方が良いですね。
色が出る仕組みは理論的に説明すると難しいですが、花火の色は炎色反応を利用しています。

アルカリ金属の性質です。

⇒ アルカリ金属単体の性質と化合物の製法『アンモニアソーダ法』

アルカリ土類金属の性質です。

⇒ アルカリ土類金属単体の性質とその化合物

炭酸塩は水に溶けにくいです。

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

問\(\,\mathrm{3}\,\)

錯イオンについての質問です。
錯イオンで出てくる金属は限られるので、各金属の配位数は覚えておくと良いです。

ポイントは色です。
水溶液中で特有の色を示すアクア錯イオンの色です。

⇒ 錯イオンの表し方と読み方と立体構造(配位子と配位数)

\(\,\mathrm{Cu^{2+}}\,\)と\(\,\mathrm{Zn^{2+}}\,\)の配位数は\(\,4\,\)で同じですが、
錯イオンは、

 \(\,\mathrm{Cu^{2+}}\,\)は正方形
 \(\,\mathrm{Zn^{2+}}\,\)は正四面体

構造をします。

\(\,\mathrm{Zn^{2+}}\,\)だけでなく配位数\(\,4\,\)の遷移元素は正四面体です。
配位数\(\,4\,\)の遷移元素の中で\(\,\mathrm{Cu^{2+}}\,\)だけが正方形になります。

配位数\(\,6\,\)の遷移元素の錯イオンをすべて正八面体構造です。

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

問\(\,4\,\)

アンモニアから硝酸を製造するオストワルト法の設問です。

⇒ 窒素の単体と化合物およびリンの同素体と化合物

\(\,\mathrm{a}\,\)

反応Ⅲは、

 \(\mathrm{3NO_2+H_2O \rightarrow 2HNO_3+NO}\)

で硝酸と一酸化窒素が生成するので酸化と還元が起こっています。

二酸化窒素\(\,\mathrm{NO_2}\,\)の\(\,\mathrm{N}\,\)の酸化数は\(\,+4\,\)
硝酸\(\,\mathrm{HNO_3}\,\)の\(\,\mathrm{N}\,\)の酸化数は\(\,+5\,\)
一酸化窒素\(\,\mathrm{NO}\,\)の\(\,\mathrm{N}\,\)の酸化数は\(\,+2\,\)

 \(\,+4 \rightarrow +5\,\) 酸化
 \(\,+4 \rightarrow +2\,\) 還元

答え \(\color{black}{\fbox{ ② }}\)

\(\,\mathrm{b}\,\)

オストワルト法により硝酸の生成反応はまとめると

 \(\,\mathrm{NH_3+2O_2 \rightarrow HNO_3+H_2O}\,\)

\(\,\mathrm{6\,mol}\,\)のアンモニアから生成する硝酸は\(\,\mathrm{6\,mol}\,\)です。

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

問\(\,5\,\)

クロム酸カリウムと硝酸銀との反応式が書ければ簡単な問題なのですが、
クロム酸塩が難溶性だということを先に知っておかないと反応式も書けません。

覚えておくしかないのでしょうか。

 \(\,\mathrm{K_2CrO_4+2AgNO_3 \rightarrow Ag_2CrO_4+2KNO_3}\,\)

クロム酸カリウムと硝酸銀との反応は

 クロム酸カリウムと硝酸銀との比は\(\,\color{red}{1:2}\,\)で反応

します。

すべての沈殿量を計算する必要はありません。
反応しきる物質を見比べていけば良いだけです。

比率が\(\,1:2\,\)で反応するので
 \(\,1:2\,\)を超えたときは\(\,\mathrm{K_2CrO_4}\,\)が沈殿量を決める
 \(\,1:2\,\)を超えないときは\(\,\mathrm{AgNO_3}\,\)が沈殿量を決める
ということを意識しておきましょう。

濃度が同じなので表\(\,1\,\)を比で見る

 \(\begin{array}{|c|c|c|} \hline
 番号 & \mathrm{K_2CrO_4} & \mathrm{AgNO_3}\\ \hline
 1 & \color{red}{1} & 11 \\ \hline
 2 & \color{red}{2} & 10 \\ \hline
 3 & \color{red}{3} & 9 \\ \hline
 4 & \color{red}{4} & \color{red}{8} \\ \hline
 5 & 5 & \color{red}{7} \\ \hline
 6 & 6 & \color{red}{6} \\ \hline
 7 & 7 & \color{red}{5} \\ \hline
 8 & 8 & \color{red}{4} \\ \hline
 9 & 9 & \color{red}{3} \\ \hline
 10 & 10 & \color{red}{2} \\ \hline
 11 & 11 & \color{red}{1} \\ \hline
\end{array}\)

表の比率から試験管番号\(\,4\,\)のときに両方が反応しきるので、
\(\,4\,\)が沈殿量はピークになっているはずです。

試験管番号\(\,5\,\)からは\(\,\mathrm{K_2CrO_4}\,\)が減っているので沈殿量も減っていることが分かるからですよ。

この時点で沈殿量を表すグラフは①か②まで絞れます。

試験管番号\(\,4\,\)のときの沈殿量を計算します。

 \(\,\mathrm{K_2CrO_4+2AgNO_3 \rightarrow Ag_2CrO_4+2KNO_3}\,\)

沈殿するのは\(\,\mathrm{Ag_2CrO_4}\,\)で式量は
 \(\begin{eqnarray}
\mathrm{Ag_2CrO_4}&=&108\times 2+52+16\times 4\\
&=&332
\end{eqnarray}\)

濃度\(\,\mathrm{0.1\,mol/L}\,\)の\(\,\mathrm{Ag_2CrO_4}\,\)溶液が\(\,\mathrm{4.0\,mL}\,\)反応するので

 \(\displaystyle 0.1\times \frac{4.0}{1000}=4.0\times 10^{-4}\,\mathrm{mol}\)

これは沈殿する物質\(\,\mathrm{Ag_2CrO_4}\,\)の物質量に等しいから

 \(\begin{eqnarray}
332\times 4.0\times 10^{-4}&=&1.328\times 10^{-1}\\
&=&0.1328\,\mathrm{mol}
\end{eqnarray}\)

この量は①のピークの沈殿量を表しています。

答え \(\color{black}{\fbox{ ① }}\)

問\(\,3\,\)の無機化学はここまでです。

理論的に考えるよりもそれぞれの物質の性質を知っておく方がはやいでしょう。

⇒ 2019年度センター試験化学の第1問の解説(共通テスト対策)

問\(\,1\,\)は物質の構造についての理論化学分野でした。

⇒ 2019年度センター試験化学の第2問の解説

問\(\,2\,\)は物質の状態についての理論化学の計算問題が主でした。

⇒ 2019年度センター試験化学の第4問第5問(有機化学)の解説

問\(\,4\,\)は有機化学というのが例年のパターンです。

結果報告を聞く限り、今年は得点しにくかったのかもしれませんね。