比例の応用問題はいくらでもありますがすべての学年で出てくる文章題で比例式は使えます。
ここでは比例式の文章問題への利用方法とちょっと変わった比の使い方を紹介します。
この比の利用ができるようになれば理科でものすごく計算が楽に感じられるようになりますよ。
文章題への比例式の利用
文章題の第一歩は、
答えになるもの、求めたいものを文字で表す、
なので文字式は重要なポイントです。
ここでは簡単な文字式を使った問題です。
ある学校の生徒は女子が男子より \(30\) 人多い。
女子と男子の人数の比は \(6:5\) であるとき、この学校の生徒数を求めなさい。
この問題では学校の生徒が求めたい答えですが、
学校の生徒を直接求めようとして文字でおくとやっかいです。
学校の生徒は女子と男子しかいませんので連立方程式を利用するなら、
女子と男子をそれぞれ違う文字でおく方法も考えられますがそんな必要はありません。
\((女子):(男子)=6:5\)
なので
\((\color{red}{女子}):(\color{red}{男子})=\color{red}{6x}:\color{red}{5x}\)
と \(x\) を使って表せます。
この差が \(30\) 人なので、
\(6x-5x=30\) から \(x=30\)
よって、
女子は \(6x=6\times 30=180\)(人)
男子は \(5x=5\times 30=150\)(人)
なのでこの学校の生徒は、
\(180+150=330\) (人)
と求めることができます。
他にも、女子の生徒数を \(\color{red}{x}\) とすると、
男子は \(30\) 人少ないので \((x-30)\) とおけます。
女子と男子との比が \(6:5\) なので、
\(x:(x-30)=6:5\)
という比例式ができます。
この比例式を解くと
\(\begin{eqnarray}
5x&=&6(x-30)\\
5x&=&6x-180\\
5x-6x&=&-180\\
-x&=&-180\\
x&=&180
\end{eqnarray}\)
これは女子生徒の人数なので、
男子生徒は \(\color{red}{30}\) 人少ない \(150\) 人です。
合わせると学校の生徒数で、
\(180+150=330\) (人)
でもいいですよ。
「比」を先に使うか、「差」を先に使うかの違いだけで、
問題文の条件を使っていることに変わりはありません。
比例式だから、というわけではありません。
解き方は1つではないのです。
比例式のちょっと変わった応用の仕方
比例というのは数学だけではなく理科でもよく使います。
ちょっと長くなるけど真剣に読んでくれているあなたにだけ、
ここで少し理科に応用できる比例計算の方法をこっそり教えます。笑
これが使えるようになれば高校の理科でも大活躍しますよ。
例えば、
「 \(\,5 \,\)%の食塩水 \(\,800\,\) g中に溶けている食塩の量 」
を求めてみましょう。
\(5\) %の食塩水は食塩水 \(100\) g中に食塩が \(5\) g溶けています。
だから \(800\) gの食塩水中には \(8\) 倍の
\(5\times 8=40 \,\mathrm{g}\)
これは簡単ですね。
濃度で出ているので \(100\) g中の食塩の量がでて、\(8\) 倍しています。
この関係は食塩水の量が多くなればその中の食塩の量も多くなる比例です。
「 \(5\) %の食塩水 \(800\) g中に溶けている食塩の量 」
これは比例関係になります。
これを普通に比例式を使って求めると、
求める食塩の量を \(x\) とすると比例式は
\(100:5=800:x\)
または
\(100:800=5:x\)
となり、
\(100x=5\times 800\)
この方程式を解くことになるのでどちらも答えは同じで \(x=40\) です。
これは普通の求め方です。これでいいです。
しかし、こんなことをしなくても求めることができます。
この比例関係は時計回りに式を作れば出てくる方法があるのです。
手順は簡単です。
\(\displaystyle \color{red}{②\,5g溶けているなら} \times \frac{\color{red}{③\, 800 gの食塩水中に}}{\color{red}{① \,100 gの食塩水中に}}=\color{red}{④\,x g溶けている}\)
※
この式は意味をとるために形がくずせないので、画面の大きいパソコンか、スマホなら横に長く見られる環境でご覧下さい。
全体を通じてこのサイトは画面の大きいパソコンで見た方が当然見やすいです。
このように、①⇒②⇒③の順に入れていけばすぐに出てきます。
これは比例計算の場合すべてに使えます。
理科でこれを使えないと割と計算に苦労します。
比例式を書くか、頭の中で処理しなくてはいけないからです。
なぜこの計算を比例計算とするかというと、普段の買い物を考えてください。
「\(\,1\,\)本\(\,120\,\)円のジュースを\(\,6\,\)本買う」
というとき支払いはどういう計算をしていますか?
たぶん\(\,120\,\)円の\(\,\color{red}{6}\,\)倍だから
\(120\times \color{red}{6}=720\)
としていると思います。
この「 \(\color{red}{6}\) 」ってどこから来ている数字でしょう。
実は頭の中で \(\displaystyle 120\times \frac{6}{1}\) の \(\displaystyle \frac{6}{1}=6 倍\) をやっているのです。
もし、「\(\,6\,\)本だから」という場合は、
\(120\,(円)\times 6\,(本)\) としているのではありません。
単位が違います。
\(120\,(円/本)\times 6\,(本)\) としているのです。
単位もかけ算の場合はかけられるので、
上の計算は
\(\,(円)\times(本)=(円本)\,\)
という単位になりますがこのような単位はありません。
下の計算は
\(\displaystyle (円/\color{red}{本})\times (\color{red}{本})=\frac{\,(円)\,}{\,(\color{red}{本})\,}\times (\color{red}{本})=(円)\)
となり(本)の部分は約分で消えているので単位は(円)なのです。
簡単な整数比の場合は暗算でやっているので気がついていいないのです。
この比例計算を使うときは①と③に同じ単位のものを入れて時計回りに入れると、
分数のところでは単位が消えて①の単位が④の単位と一致するという便利な面もあります。
例えば、時速 \(40\) kmで走る自動車は \(15\) 分で何 m 移動するか求めるとき、
\(40\) kmは \(40000\) mで、1時間は \(60\) 分なので、
「 \(60\) 分で \(40000\) m、\(15\) 分では?」
という比例計算で
\(\displaystyle 40000\,(\mathrm{\color{red}{m}})\times \frac{15\,(\color{blue}{分})}{\,60(\color{blue}{分})}=10000\,(\mathrm{\color{red}{m}})\)
他にも食塩水で試してみましょう。
普通なら比例式で求めます。
難しくはありません。
\(3\) %の食塩水は、\(100\) gの食塩水中に \(3\) gの食塩があるので、
求めたい食塩水の量を \(x\) とすると、
\(100:3=x:15\)
これから
\(3x=100\times 15\)
これを解いて、
\(\displaystyle x=\frac{100\times 15}{3}=500\)
中学生はこれでもいいです。
高校生でもこうしている人が多いです。
しかし、比例関係を利用すると、
「\(100\) gの食塩水中に \(3\) gの食塩、\(x\) gの食塩水中に \(15\) g」
なので
\(\displaystyle ②\,3\times \frac{③\,x\,}{①\,100}=④\,15\)
と比例式を書かずに方程式ができます。
この程度だとあまり有効性を感じないと思いますが、
この比例関係は、どこから時計回りに回しても成り立つのです。
単位を消すために①と③の位置には同じ単位の量を入れますが、どっからでも成り立っているから問題はありませんよ。
めったにみることのできない比例計算法
ではどうすれば化学の計算でも活かせるか、
直接求めたい食塩水の量を出してみましょう。
「\(100\) gの食塩水中に \(3\) gの食塩、\(x\) gの食塩水中に \(15\) g」
これは言い換えれば、
「\(3\) gの食塩を得るのに \(100\) gの食塩水が必要、では \(15\) gの食塩を得るには?」
です。これも比例関係だというのはわかるでしょう。
これを使えば、
\(\displaystyle ②\,100 gの食塩水が必要\times \frac{③\,15 g得るには?}{①\,3 gの食塩を得るには}=④\,x\)
となるので直接
\(\displaystyle 100\times \frac{15}{3}=x\)
と求めることができます。
なぜこの方法をお伝えしているかというと、
この左辺は計算結果として出てくる数値ではないからです。
もっと複雑な計算をしなければならないときの部分的な数値にしかならないことがほとんどなのです。
今はいいです。
中1で方程式をやっている間なら比例式を立てて、それが解ければ十分です。
しかし、この後高校の数学をやっても比例式の応用は二度と学ぶことはありません。
というかこの比例計算法を知ることは一生ないかもしれません。
筆者の高校時代の化学の先生が教えてくれた方法なのでほとんどの人は知りません。
(授業中にちょろっといっただけですけど、後で勉強して分かったことです。)
教科書はもちろん、参考書や問題集でもこの比例計算の説明を見たことはありません。
試しにお父さんやお母さんに聞いてみて下さい。
もし、知っていたら本気で尊敬して下さい。
自分で言うのもおかしいですが、それくらいレアな計算法ですよ。笑
筆者の化学サイトにはありますけど、
化学の計算問題を説明するとき、普通の人は知らないので比例式を使って段階的に説明しなければ通じません。
それを段階的でなく、ごく当たり前のように一気に書いてある問題集の解説などは慣れていない人にはわかりにくいと思いますよ。
ここで出会えたあなたは超ラッキーです。笑
化学の計算で困ったらここに戻ってくるといいです。
応用範囲がものすごく広いですからいろいろと使えますよ。
反比例にも計算方法がありますが、長くなるので書きません。
比例計算だけでも得意になれるといいですね。
これが使えれば中学での食塩水の問題は非常に簡単に感じるようになります。
⇒ 1次方程式で解く食塩水の濃度と混ぜる量問題の解説(中学1年)
使いこなすのは比例式からでいいです。
相似でよく使うのも比例式ですので中学生は比例式で十分です。
ただ、いずれ理科で計算問題が苦手だなと感じたらここに戻って比例計算のやり方を見直してください。
大学入試の化学の計算もセンターや共通テスト程度なら簡単に思えてきますよ。
その頃にはこのページの存在をきっと忘れてますけどね。笑