同素体を持つ元素の種類は決まっていて、同素体のもつ性質も特有にあります。物質の成分が元素で出来ているというのは説明しました。同じ呼び方でも元素か単体かの意味の違いもありましたが、今回は同じ元素でできている単体の中でも性質も呼び名の違う同素体について簡単に説明しておきます。
同素体とは
同じ元素で出来ている単体だけど、性質の違うものを「同素体」といいます。
例えば、
ここ最近騒がれている地球温暖化に影響しているといわれる
「オゾン」( \(\mathrm{O_3}\) )
これは構成元素は酸素( \(\mathrm{O}\) )です。
私たちが呼吸に使っている
「酸素」( \(\mathrm{O_2}\) )
これも構成元素は酸素( \(\mathrm{O}\) )です。
どちらも同じ元素で単体なのですが、呼び名が違います。
もちろん性質も違うのです。
ほとんどの元素では単体はひとつしかありませんが、
2種類以上単体が存在する元素もあるということですね。
同素体を持つ元素は、
硫黄( \(\mathrm{S}\) )
炭素( \(\mathrm{C}\) )
酸素( \(\mathrm{O}\) )
リン( \(\mathrm{P}\) )
の4つを、元素記号を並べて、SCOP(スコップ)と覚えておくといいです。
同素体の例
同素体の例を少しあげておきます。
硫黄 :斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄があります。斜方硫黄は常温で安定で、黄色い(淡黄色)大きめのかたまりになった結晶です。
単斜硫黄は100℃近い高温で安定です。黄色の針状をした結晶です。
ゴム状結晶は褐色をした弾力性がある物質で、長く鎖状の複雑な構造をしています。
炭素 :ダイヤモンド、黒鉛や最近注目度が高いフラーレンなどがあります。ダイヤモンドは高価な宝石であるというのは知っていると思います。
黒鉛はおなじみの鉛筆の芯です。
どちらも炭素で出来ている単体です。
温度と圧力によって出来るものが違うんですね。
フラーレンは新素材として注目すべき同素体ですが、化学を深く勉強するときに改めて紹介します。
それまでに興味がある人は調べておくと良いですよ。
戦後、女性がよく着用するストッキングが流行りだした頃、
新素材は何だったのかも調べて見ると化学の発展を感じられるかもしれませんね。
酸素は \(\mathrm{O_2}\) で呼吸で利用しています。
無色、無臭の気体で空気中に約20%含まれています。
助燃性といって物質が燃える手伝いをします。酸素自身が燃えるわけではありません。
酸素がある一定以上の割合で存在しないと物質は燃えません。
火事のとき、密閉された部屋は燃えていないように見えて、
実は火がついていてもおかしくないくらい非常に高温になっている場合があります。
そこで扉を開けると空気中の酸素が一気に入り込み爆発的に燃え出すことがあります。
それが、『バックドラフト』です。
分子としての酸素はヨウ化カリウムデンプン紙を変色させません。
オゾンは \(\mathrm{O_3}\) で強い紫外線が当たると酸素の一部がオゾンに変化します。
淡青色で特有の臭いがあります。有毒です。
強い酸化力を持っていて、漂白・殺菌作用があります。
ヨウ化カリウムデンプン紙を変色させるので酸素と区別できます。
黄リンは淡黄色のろう状の固体です。
悪臭のする非常に毒性の強い物質です。
化学的に活発で空気中で簡単に酸化され発熱し約50℃で自然発火します。
だから水中に保存します。
空気を遮断して約250℃にしておくと赤リンに変化します。
赤リンは暗赤色の粉末で融点は高く毒性もありません。
発火点は約260℃で空気中でも簡単には発火せずに安定しています。
マッチの火をつけるときにこする面に塗ってあります。
同素体が発生する原因
同素体どうしは同じ元素で出来ている単体です。
何が違うかというと、構成する原子の結びつき(結合)の仕方や結晶構造が違うのです。
だから、温度や圧力などの状態によって互いに変化しあうという性質も同素体にはあるのです。
ダイヤモンドも人工的につくられるようになっていることで少しはイメージ出来るのではないでしょうか。
同素体に限らずいろいろな分子や化後物は、
結合の種類、しかたによって化学的な性質が変わってきます。
それが単体で出てくるのが同素体といえますね。
同素体も大切ですが単体や化合物の区別も重要です。
確認しておくと良いです。
同素体と同位体は違いますので気をつけておきましょう。