質量や原子数や分子数と大きな関係がある物質量(mol)は化学で出てくる重要な単位ですが、これが理解できていないと計算問題はほとんど解けません。
日常ではほとんど使うことがないのでなじみはありませんが少し慣れればすぐに使えるようになります。
molへの変換練習をしておきましょう。
molを使うときに覚えておかなければならないこと
mol(モル)というのは物質量を表す「単位」です。
詳しくは
⇒ 物質量とmol(モル)とアボガドロ定数
で復習しておいて下さい。
例えば今はほとんど使わなくなりましたが、「12」本の鉛筆は「1ダース」の鉛筆ということがありますよね。
これが分子数とかになると実際に測定可能な量を集めると膨大な数になります。
例えば、
「大きめのコップに水を180gいれました。このコップには何個の水分子があるか?」
というときダースで答えるとものすごい桁になります。
そこで化学などで原子や分子を扱う場合、物質量の単位に「mol」を使うのです。
\(1\mathrm{mol}=6.0\times 10^{23}\)(個)
です。
この \(6.0\times 10^{23}\) という数は覚えておかなければならないアボガドロ定数です。
必ず覚えておいてくださいね。
これからの計算問題は全てと言って良いほどこのmolを使って(mol)=(mol)の関係式で解いていきます。
今までは比例式を主役にしてきましたがこれからはちょっと変えていきますよ。
比例式でもいいのですが物質量は避けて通れないので少しでも慣れておきたいところですからね。
molの公式達
物質量(mol)を算出する方法はいくつか出てきます。
それらは全て同じ量を表しているmolなのでそれぞれが等しくなるのです。
密度が \(d\) 、体積が \(v\) からなる分子量 \(M\) の物質が \(w\)(g) あり、
その中に \(N\) (個)の分子が存在しているとすると単位を換算する場合、
分子のそのものは変化しないので物質量 \(n\) において
\(\displaystyle \color{red}{n=\frac{w}{M}=\frac{dv}{M}=\frac{N}{6.0\times 10^{23}}}\)
という関係式が成り立ちます。
もちろん物質が金属などの原子性物質のときは \(M\) は原子量、\(N\) は原子数となります。
この4つの式のうち2つを使って(6通りの方程式のうちの1つを使って)計算しますのでこれさえ覚えておけば何とかなる、と思っていて大丈夫です。
覚えていなかったら?
数学を駆使して(「駆使する」ってほどでもありませんけど)自力で方程式を立てるなり、算数的に計算するなりしてください。
molを求めることが問題の最終的な答えになるということは少ないと言えます。
どういうことかと言うと、
molは計算できて当たり前で、それを使って化学の計算問題は解いて行く、ということです。
molを求める計算は化学計算問題の『入り口』ということですね。
これができないと化学の計算問題をほとんど捨てることになりますよ。
質量と物質量の基本問題
物質量から質量を求める問題
0.4mol の \(\mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O}\) は何gか求めよ。
\( \mathrm{Na=23\,,\,C=12\,,\,O=16\,,\,H=1}\)
\( \displaystyle n=\frac{w}{M}=\frac{dv}{M}=\frac{N}{6.0\times 10^{23}}\)
のうち
\( \displaystyle n=\frac{w}{M}\)
を使えば簡単に求まります。
求める \(\mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O}\) を \(x(=w)\) とします。
式量 \(M\) は \(\mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O=286}\) なので
\( 0.4=\displaystyle \frac{x}{286}\)
これから \(x=286\times0.4=114.4\) (g)
比例式でも簡単に出せますが公式を使うようにしています。
1つひとつ出していく、という人は比例式でもかまいませんよ。
式量に g をつければ 1mol の質量になるので
「 1mol で 286g なら 0.4mol では何 g?」と同じです。
\( 1:0.4=286:x\)
どちらにしても式量(286)は計算しなくてはいけません。
質量から物質量を求める問題
ブドウ糖 ( \(\mathrm{C_6H_{12}O_6}\) ) 36gを水90gに溶かした溶液がある。
この溶液には何molの分子が含まれるか求めよ。
\( \mathrm{C=12\,,\,O=16\,,\,H=1}\)
この問題は少し意地悪な問題です。
普通なら「ブドウ糖分子は何mol含まれるか」でしょう。
(その場合は水の90gは関係なくなります。)
この問題は「この溶液全体の分子」となるので水分子も計算しなくてはいけません。
まあ、2回mol計算ができるからラッキーだと感じてください。笑
分子量は
\( \mathrm{C_6H_{12}O_6=180}\)
\( \mathrm{H_2O=18}\)
です。
だから求める分子のmol数は
\( n=\displaystyle \frac{36}{180}+\displaystyle \frac{90}{18}=5.2\,(\mathrm{mol})\)
ほとんどがきれいに割れる数値で与えられるので計算はそれほどややこしくはありませんから思い切って割り算しにいって下さい。
ブドウ糖分子のmol数を聞かれた場合は \(\displaystyle n=\frac{36}{180}=0.2\) です。
全体では水分子と別々に計算して足せばいいですからね。
使った公式: \(\displaystyle n=\frac{w}{M}\)
原子の物質量(mol)から質量を求める問題
アンモニア分子 \(\mathrm{NH_3}\) の中の窒素原子と水素原子の合計が20molになるにはアンモニアが何gあればよいか求めよ。
\( \mathrm{H=1\,,\,N=14}\)
アンモニア分子は 1mol 中には窒素原子 1mol と水素原子 3mol の合計 4mol の原子があります。
原子合計で20molにするには 5mol のアンモニア分子があればいい。
\(\mathrm{NH_3=17}\) なので
\(\displaystyle 5=\frac{x}{17}\) から \(x=85(\mathrm{g})\)
と無理矢理公式に入れた感じになりますが、比例計算でも簡単ですよね。
1分子中の原子数を \(m\) とすると
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}\times m\)
と公式化することもできますが、部分的に比例計算できるならそれで良いです。
何もかも公式化していたらきりがありません。笑
水溶液中にある原子数を求める問題
水90.0gにブドウ糖36.0gを解かした溶液がある。
この水溶液中の水素原子は合計何個あるか求めよ。
練習2で見た溶液ですね。
今度は水素原子の数を求める問題です。
もう惑わされずに済むと思いますが、
ブドウ糖から数えられる水素と、
水から数えられる水素があることに注意すれば難しくはありません。
ブドウ糖の分子式は \(\mathrm{C_6H_{12}O_6}\) ですがこれは問題に与えられると思います。
ここでは練習2で書いておいたので書きませんでした。
水の分子量は \(\mathrm{H_2O=18}\) はいいですね。
ブドウ糖1molからは12molの水素原子が、
水1molからは2molの水素原子が数えられます。
さて、
ブドウ糖36.0gは \(\displaystyle\frac{36}{180}=0.20\) (mol)だからブドウ糖から水素原子は、
\( 0.20\times 12=2.40 (\mathrm{mol})\)
水90.0gは \(\displaystyle\frac{90.0}{18}=5.00\) (mol)だから水から水素原子は
\( 5.00\times 2=10.0(\mathrm{mol})\)
合わせて12.4 molの水素原子が水溶液中に存在することになります。
原子の個数は分子中の原子数が \(m\) のときは
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}\times m\)
という公式を利用すると
\( n=\displaystyle \frac{36.0}{180}\times 12+\displaystyle \frac{90.0}{18}\times 2=12.4\)
と求められるようになります。
物質量からイオンの質量を求める問題
塩化マグネシウムの0.50mol中に含まれる塩化物イオンの質量は何gか求めよ。
\( \mathrm{Cl=35.5}\)
塩化マグネシウム \(\mathrm{MgCl_2}\) という化学式が書けなければ解けない問題です。
マグネシウムは2価の陽イオン \(\mathrm{Mg^{2+}}\)
塩化物イオンは1価のイオン \(\mathrm{Cl^-}\)
になるということを周期表で理解していればすむ話です。
\(\mathrm{MgCl_2}\) は1mol中に2molの塩化物イオンを含んでいます。
0.50 mol中には1.00molの塩化物イオンを含んでいるので
\( x=2\times 0.50\times 35.5=35.5 (\mathrm{g})\)
変化していないものは何かというと「塩化物イオンのmol」なので
(塩化物マグネシウムのmol)×2=(塩化物イオンのmol)
という関係を利用すれば
\( 0.50\times 2=\displaystyle \frac{x}{35.5}\)
から求めることもできます。
「原子数が同じ」とは物質量が等しいという問題
硫黄の結晶16g中に含まれている硫黄原子数と同数の原子を含むダイヤモンドの質量は何gか求めよ。
\( \mathrm{S=32\,,\,C=12}\)
物質量は単位をmolとして表していますが、
実は、\(\mathrm{1mol}=6.0\times10^{23}\) (個)という数を表しているに過ぎません。
硫黄原子とダイヤモンドの原子を等しくするというのは、
両方のmol数を同じにするということと同じなのです。
だから(硫黄のmol数 \(n\) )=(ダイヤモンドのmol数 \(n’\) )となるように方程式をつくれば終わりです。
硫黄のmol数 \(n\) は \(\displaystyle n=\frac{16}{32}\)
ダイヤモンドのmol数 \(n’\) は \(\displaystyle n’=\frac{x}{12}\)
だから \(n=n’\) を満たすのは
\(\displaystyle \frac{16}{32}=\frac{x}{12}\)
のときで \(x=6.0\) g。
物質量と分子量と分子数の関係
ショ糖の分子式は \(\mathrm{C_{12}H_{22}O_{11}}\) 水の分子式は \(\mathrm{H_2O}\) である。
ショ糖と水とを同質量とったとき、水の分子数はショ糖の分子数の何倍か求めよ。
\( \mathrm{C=12\,,\,H=1\,,\,O=16}\)
「同質量とったとき」と問題にあります。
物質をとったとき質量(g)と物質量(mol)は比例します。
例えば、
水であれば 18g とったとき 1mol で、36g とったときは 2mol で物質量の比は 1:2 です。
同じようにショ糖 16g とったときと 32g とったときも物質量の比は 1:2 です。
具体的に数値を求めるのではなく分子数の比を求めればいいので、こういうときはとる量は自分で決めていい、ということになります。
そして物質量の比は分子数の比になることも考えると、適当な数値を選んで計算すればいいとわかります。
わざわざ難しい計算になるような数値ではなく、分かり易い数値がいいですよ。
\( \mathrm{C_{12}H_{22}O_{11}=342}\)
\( \mathrm{H_2O=18}\)
なので両方を 342g とったとしましょう。
すると、ショ糖は 1mol、水は 19mol、となります。
よって答えは19倍と出てきます。
「何だか一般的じゃない」と思う人は質量を文字を使って解いておくと良いです。
一般的な数値で両方からとった質量を \(w\) と表すと、
ショ糖と水のmol比を \(n\,:\,n’\) とすると
\( \displaystyle n\,:\,n’=\frac{w}{342}\,:\,\frac{w}{18}=1\,:\,19\)
となりこれは水分子がショ糖分子の19倍であるということを表しています。
方程式として解きたい場合は、水分子がショ糖分子の \(x\) 倍あるとして、
\( \displaystyle \frac{w}{18}=\frac{w}{342}\times x\)
を解けば答えが出てきます。
物質量と原子の個数に関する問題
molと個数の関係はわかっていると思います。
\(\mathrm{1mol=6.0\times 10^{23}}(個)\) です。
銀原子0.01molの中には何個の銀原子が含まれているか求めよ。
これも銀原子でなくても答えは変わりませんね。
何であろうと1molは \( 6.0\times 10^{23}\) 個です。
だから0.01molだと、
\(6.0\times 10^{23}\times 0.01=6.0\times 10^{21}\)(個)です。
18gのアルミニウム中のアルミニウム原子の数はいくらか求めよ。
\( \mathrm{Al=27}\)
比例で簡単に求まる問題です。
1molで \(6.0\times 10^{23}\) 個なのでアルミニウムが何molかを出せば求まります。
アルミニウム18gのmol数 \(n\) は \(\displaystyle n=\frac{18}{27}\) molです。
原子の個数はアボガドロ定数にmol数をかければ良いので
\(\displaystyle 6.0\times10^{23}\times \frac{17}{28}=4.0\times10^{23}\)(個)
となります。
化学の計算を段階的に、部分的にするときは分数は割り算せずに残しておきましょう。
続きの計算で約分されたり消えたりするように問題がつくられることが多いので、
割り算は最終の答えを出す段階ですると効率よく計算できますよ。
「mol数の変化はない」としてアルミニウムの原子数を \(x\) とすると
\( n=\displaystyle \frac{18}{27}=\displaystyle \frac{x}{6.0\times 10^{23}}\)
という方程式も立ちます。
比例式だと、
\( 1:\displaystyle \frac{18}{27}=6.0\times10^{23}:x\)
ですね。
求め方は自分のやりやすい方法でいいですよ。
原子の総数を求める問題
少しは物質量(mol)や原子・分子の個数問題になれてきたと思いますがどうでしょう?
物質量 \(n\) は \(\displaystyle n=\frac{w}{M}\)
個数は \(n\times 6.0\times 10^{23}\) ですよ。
\(\mathrm{CaCO_3 \hspace{10pt}5.0g}\) に含まれる原子の総数は何固か求めよ。
\( \mathrm{Ca=40\,,\,C=12\,,\,O=16}\)
先ずは物質量(mol)を出しましょう。
\(\mathrm{CaCO_3 \hspace{5pt}5.0g}\) は式量が \(\mathrm{CaCO_3=100}\) なので
\(\displaystyle \mathrm{n=\frac{5.0}{100} \,mol}\) です。
計算は続きますので分数のままにしておきましょう。
\(\mathrm{CaCO_3}\) は5つの原子で構成されているので、
mol数を5倍してアボガドロ定数をかければいいだけです。
\(\displaystyle \frac{5.0}{100}\times 5\times 6.0\times 10^{23}= 1.5\times 10^{23}\)(個)。
原子の総数を \(x\) とすると、原子総数のmol数は変わりませんので、
\( \displaystyle \frac{5.0}{100}\times 5=\displaystyle \frac{x}{6.0\times 10^{23}}\)
から求まります。
比例式を使うと
「100g のとき \(5\times 6.0\times 10^{23}\) 個なので
5.0g のとき \(x\) 個」
から
\( 100:5.0=5\times 6.0\times 10^{23}:x\)
これが1番慣れているかもしれませんね。笑
長くなりましたのでこの辺で終わりにします。
molと原子、分子の個数にも少しは慣れてきたと思いますので計算問題にもチャレンジしてみて下さいね。
まだ不安があるときは
の復習からどうぞ。