油脂は動物や植物中にある疎水性の物質をいいますが種類がいくつかあります。
油脂から生成するセッケンの製法(けん化)や欠点および合成洗剤の製法についても触れておきます。
洗剤の界面活性剤としてのはたらきを知れば食器洗いや洗濯が論理的にできる?
油脂と分類
動物や植物の体内によくある3価アルコールのグリセリンと高級脂肪酸のエステルを油脂といいます。
ラードやごま油など良く聞く名前の油は油脂です。
油脂にはエステルを構成する脂肪酸の種類や性質によっていくつか分類できます。
脂肪とは
ラードやヘットのように飽和脂肪酸を多く含む油脂を脂肪といい、常温で固体です。
ラードは豚の脂、ヘットは牛の脂で、一般に動物性の油脂は固体のものが多いです。
脂肪油とは
ゴマ油やオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を多く含む油脂を脂肪油といい、常温で液体です。
オリーブオイルはオリーブ油といいますが、他にも大豆油やなたね油なども脂肪油です。
一般に植物性油脂は液体のものが多いです。
乾性油とは
亜麻仁油や大豆油のように多くの二重結合(不飽和結合)を持っていて空気中で酸化され固化しやすい脂肪油を乾性油といいます。
一方で空気中に放置しても固化しない椿油やオリーブ油などの脂肪油を不乾性油といい、
乾性油と不乾性油の中間にある固化しにくいゴマ油やコーン油などの脂肪油を半乾性油といいます。
この分類は油脂100gに付加するヨウ素の質量(g)の数値で表すヨウ素価で分類することができて、
ヨウ素価が130以上の脂肪油が乾性油、100以下が不乾性油、その間が半乾性油となります。
硬化油とは
ニッケル( \(\mathrm {Ni}\) )を触媒として脂肪油の二重結合部分に水素を付加させると飽和脂肪酸を多く含む油脂となり固化します。
この固化した油脂を硬化油といいセッケンやロウソクやマーガリンなどの原料となります。
セッケンの製法(けん化)と構造
油脂に塩基性水溶液を加え加熱すると加水分解されてセッケンとグリセリンとに別れます。
これをけん化といいます。
\(\mathrm {RCOOCH_2CH(OOCR)CH_2(OOCR)} + \mathrm {3NaOH}\\ \\
→ \mathrm {3RCOONa} + \mathrm {C_3H_5(OH)_3}\)
けん化によって生成した物質に食塩水を入れて塩析するとセッケンとグリセリンを分けることができます。
セッケンとは塩析によって別れた高級脂肪酸のナトリウムやカリウム塩のことをいうのです。
セッケンは高級脂肪酸なので長い炭化水素鎖と脂肪酸イオンの基があるので、
疎水性を示す部分と親水性を示す部分の両方を持っています。
分子中に疎水基と親水基を持つ物質を界面活性剤といい洗浄作用があります。
洗剤です。
セッケンを水溶液に一定の濃度以上に溶かすと疎水性の部分を内側に、
親水性の部分を外側に向けて集まり球状のミセルというコロイドをつくります。
セッケンの水溶液は加水分解し弱い塩基性(アルカリ性)を示しますが、
硬水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンとは溶けにくい(難溶性の)塩をつくるのでセッケンは硬水中で泡立ちが悪くなります。
セッケンを水に溶かすと水の表面張力が下がります。
またセッケンには疎水性の油を取り囲んで水の中で分散させる「乳化作用」があります。
疎水基と親水基の両方を持つことによる作用ですね。
合成洗剤
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの強酸のナトリウム塩を合成洗剤といいます。
合成洗剤は水によく溶け水溶液は中性を示します。
セッケンのようにカルシウムイオンやマグネシウムイオンと難溶性の塩をつくらないので硬水中でも洗浄作用は低下しません。
セッケンは弱酸と強塩基の塩なので塩基性を示しますが、
合成洗剤は強酸と強塩基の塩なので中性を示すのです。
加水分解するかしないかの違いですね。
けん化とセッケンのつながり理解できたでしょうか?
けん化とは油脂の加水分解のことで、
けん化によって生成した高級脂肪酸の塩をセッケンというのですよ。
油脂はエステルです。
で構造は見ておいてください。