ベンゼン環に直接結合するヒドロキシ基を持つ化合物を総称してフェノール類といい、それ以外をアルコールといいますがフェノール類とアルコールは少し性質が違います。同じヒドロキシ基を持つので共通点もありますので確認しておきましょう。
フェノール類
ベンゼン環にヒドロキシ基(\(\mathrm{-OH}\))が直接結合している化合物だけをフェノール類といいます。
ナフタレンのようにベンゼン環が2つ以上連なった環にヒドロキシ基がついていてもフェノール類といいます。
ベンゼン環に直接ついていない場合はアルコールといいますので注意しておきましょう。
フェノール類の例
ヒドロキシ基だけが直接結合したヒドロキシベンゼン
\(\mathrm{C_6H_5OH}\) はフェノール。
ヒドロキシ基とパラ位にメチル基がついたパラヒドロキシトルエン
\(p-\mathrm{CH_3C_6H_4OH}\) はパラクレゾール。
などのように慣用名で呼ぶものが多いです。
ヒドロキシ基とカルボキシ基がついたサリチル酸やナフタレンにヒドロキシ基がついたナフトールなどもあります。
さらに配位している位置によって呼び名が変わるものもありますので慣用名を覚えるようにしておいた方が良いですね。
また、ベンジルアルコール \(\mathrm{C_6H_5-CH_2OH}\) はベンゼン環にヒドロキシ基が直接ついていないのでフェノール類ではなくアルコール類になります。
フェノール類の性質
フェノール類はアルコールとは少し(かなり?)性質が異なります。
先ずはアルコールは中性ですがフェノール類は水溶液中でわずかに電離して弱い酸性を示します。
\( \mathrm{C_6H_5OH}\,\rightleftharpoons\,\mathrm{C_6H_5O^-}\,+\,\mathrm{H^+}\)
\(\mathrm{C_6H_5O^-}\) は「フェノキシドイオン」といいますので覚えておきましょう。
水溶液には溶けにくいですが水酸化ナトリウム水溶液には塩を生じてよく溶けます。
\( \mathrm{C_6H_5OH}\,\rightarrow{\mathrm{NaOHaq}}\,\mathrm{C_6H_5ONa}\)
このときできる塩を「ナトリウムフェノキシド」といい、
この水溶液に二酸化炭素を通すと弱酸のフェノールが遊離します。
\( \mathrm{C_6H_5ONa}\,\rightarrow{\mathrm{CO_2}}\,\mathrm{C_6H_5OH}\)
またフェノールは塩化鉄(Ⅲ)\(\mathrm{FeCl_3}\)水溶液で\(\color{magenta}{紫色}\)に呈色しますので、
この反応はフェノールの検出反応として使われます。
アルコールとの共通点
フェノールはアルコールと違う点もありますが共通点もあります。
どちらもナトリウムと反応して水素を発生します。
フェノールではナトリウムフェノキシドと水素
\( \mathrm{2C_6H_5OH}\,+\,\mathrm{2Na}\,\rightarrow\,\mathrm{2C_6H_5ONa}\,+\, \mathrm{H_2}\)
エタノールではナトリウムエトキシドと水素
\( \mathrm{2C_2H_5OH}\,+\,\mathrm{2Na}\,\rightarrow \,\mathrm{2C_2H_5ONa}\,+\,\mathrm{H_2}\)
となります。
もう一つ、フェノールは無水酢酸と反応してエステルを生成します。
氷酢酸と簡単にエステルをつくるアルコールほどではありませんが無水酢酸とならエステルを生成します。
\( \mathrm{C_6H_5OH}\,+\,\mathrm{(CH_3CO)_2O}\,\rightarrow\,\mathrm{C_6H_5OCOCH_3}\,+\,\mathrm{CH_3COOH}\)
\(\mathrm{C_6H_5OCOCH_3}\) は酢酸フェニルです。
氷酢酸と無水酢酸の違いは
⇒ カルボン酸の性質と種類 マレイン酸とフマル酸(幾何異性体)
の中で説明してありますので確認してください。
フェノールの反応と製法について
をみておいてください。