タンパク質は有機化合物で複雑な構造をしているためにいろいろな反応を示します。熱による変性もその1つですが他にもいくつか重要なタンパク質の検出反応があります。後で出てくる酵素の働きにも関係していくることなので確認しておきましょう。
タンパク質の変性
タンパク質は前にも書いたように一次構造から四次構造までに分類できる複雑な立体構造をしています。
タンパク質は熱や強酸、強塩基を加えるとくずれ凝固したり沈澱することがありますが、これはタンパク質の立体構造が壊れることに原因があります。
これがタンパク質の変性です。
このことは有機溶媒や金属イオン(重金属イオン)によっても起こるので覚えておいてください。
あと忘れてはいけないのは紫外線によってもタンパク質の変性は起こるということですね。
一度変性したタンパク質は元に戻りません。(正確にはもどりにくい)
卵の白身である卵白アルブミンは球状タンパク質ですが熱により変性するとひも状に伸びた状態になります。
すると、疎水性が強くなって凝固して沈澱してしまうわけです。
酵素などはタンパク質でできていますが一度変性した酵素は元に戻らず機能を失います。
温度はおよそ60℃くらいで変性してしまうと思っていて良いです。
酵素については変性や機能などを別のところで詳しく書くことにします。
タンパク質の検出反応
キサントプロテイン反応
タンパク質の水溶液に膿硝酸を加えて加熱すると黄色沈澱を生じます。
冷却した後アンモニア水を加えて塩基性にすると橙黄色になります。
これがキサントプロテイン反応です。
これは多くのタンパク質に含まれるチロシンやフェニルアラニンのように芳香族アミノ酸がニトロ化されるからです。
※
濃硝酸を加えた直後は変性して白色沈澱を生じますが、過熱するとニトロ化が進み黄色沈澱へと変色するのです。
タンパク質に限らず芳香族アミノ酸単独でも起こる反応ですが、
チロシンはフェニルアラニンよりニトロ化されやすいのは、
チロシンがフェノール性のヒドロキシ基を持っておるためニトロ化が起こりやすい配向性を示すから。
ビウレット反応
タンパク質の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、
硫酸銅(Ⅱ)水溶液を少量加えると赤紫色に呈色します。
この反応はタンパク質に2個以上の連続するペプチド結合がある場合に起こる反応でビウレット反応といいます。
※
2個以上並ぶペプチド結合が銅イオン(\(\mathrm{Cu^{2+}}\))とキレート呼ばれる錯体をつくることで呈色します。
キレート錯体については余裕ができてからでいいので反応名を覚えておきましょう。
(注意)
中和滴定の「ビュレット」と「ビウレット」反応は違いますよ。混同しないでください。
ビュレットは器具名ですが、ビウレットは化合物名です。
しかも、ビウレット反応ではビウレットという化学物質は出てきません。笑
硫黄反応
タンパク質の水溶液に水酸化ナトリウムの固体を加えて熱を加えて、酢酸鉛(Ⅱ)水溶液を加えると硫化鉛(\(\mathrm{PbS}\))が黒色沈澱として出てきます。
これを硫黄反応といい、硫黄を含むアミノ酸やタンパク質中の硫黄の検出に用いられます。
まとめて反応例をあげておきます。
卵白の水溶液に、
・エタノールまたは塩酸または硫酸銅を加えると白色沈澱を生じる。(変性)
・熱を加えると凝固する。(変性)
・濃硝酸を加えて加熱すると白色沈澱を生じるが、加熱すると黄色になる。
冷却後溶液が塩基性になるまでアンモニア水を加えると橙黄色になる。(キサントプロテイン反応)
・水酸化ナトリウム水溶液を加え、その後硫酸銅水溶液を少量加えると赤紫色になる。(ビウレット反応)
・水酸化ナトリウム水溶液の固体を加えて加熱、その後冷却して酢酸鉛を加えて振り混ぜると黒色沈澱生じる。(硫黄反応)
おおよそ加える物質と呈色する色を覚えておけば大丈夫です。
次は酵素です。
人の身体に欠かせない酵素も特殊なはたらきをするタンパク質です。