今回は17族ハロゲンについて単体と化合物の製法と性質を見ていきます。ハロゲン単体の性質は高校化学で1番ではないか?というくらい問われますので基本的なことはしっかり覚えておきましょう。ハロゲンの化合物は反応性が高いので重要ですね。
ハロゲンとは
周期表の17族の元素を「ハロゲン」といいます。元素名ではなく族の名前です。18族を希ガスと呼ぶのと同じことです。
17族なので価電子が7個あり、電子を1つ受け取り1価の陰イオンになりやすいです。
周期表の第1周期にはなく、第2周期からフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンとありますがヨウ素までの性質を覚えておけば十分です。
ハロゲン単体の性質
フッ素
分子式 \(\mathrm{F_2}\)
沸点-220℃、融点-188℃の常温では淡黄色の気体で非常に酸化力の強い性質を持ちます。刺激臭があって有毒というより猛毒です。
酸化力がものすごく強いので水と激しく反応します。
\( \mathrm{2F_2+2H_2O\rightarrow 4HF+O_2}\)
塩素
分子式 \(\mathrm{Cl_2}\)
沸点-101℃、融点-34℃の常温で黄緑色の気体です。
フッ素よりは酸化力は小さいですがハロゲンの中では2番目に酸化力が大きいです。
やはり有毒です。
水に少し溶けて次亜塩素酸(\(\mathrm{HClO}\))を生じるので強い酸化作用を示します。
\( \mathrm{Cl_2+H_2O \rightleftharpoons HCl+HClO}\)
次亜塩素酸は漂白剤などに使われますが酸性は弱いけど、酸化力が強いです。
臭素(しゅうそ)
分子式 \(\mathrm{Br_2}\)
沸点-7℃、融点59℃の常温で赤褐色の液体ですが刺激臭のある有毒な気体を発生します。
ハロゲンの中では3番目の酸化力です。
臭素は常温で液体のただ1つの非金属ですが、金属でも常温で液体のものは水銀(\( \mathrm{Hg}\))しかありませんので覚えておくと良いです。
水に少しだけ溶けて次亜臭素酸(\( \mathrm{HBrO}\))を生じますが酸化力は\(\mathrm{HClO}\)の方が強いです。
ヨウ素
分子式 \(\mathrm{I_2}\)
沸点114℃、融点184℃の常温で黒紫色の固体です。
酸化力はハロゲンの中では小さい方ですが、昇華性があり気体は紫色になります。
毒性はあります。
ヨウ素は水には溶けにくいですがヨウ化カリウム水溶液には
\( \mathrm{I_2+I^-\rightleftharpoons I_3-}\)
(三ヨウ化物イオン)を溶液中につくり溶けて褐色の溶液となります。
これをヨウ素溶液といい、デンプンとヨウ素デンプン反応して青紫色になります。
ハロゲンは原子番号が小さいほど酸化力が強く反応性が大きくなります。
\( \mathrm{F_2> Cl_2> Br_2> I_2}\)
そのため反応が起きる場合とおきない場合とが出てきます。
臭化カリウム水溶液に塩素を通じると臭素が生じ褐色になります。
\(\mathrm{2KBr+Cl_2\rightarrow 2KCl+Br_2}\) (\(\mathrm{Cl_2\,>\, Br_2}\))
ヨウ化カリウム水溶液に塩素を通じるとヨウ素を生じ赤褐色になります。
\(\mathrm{2KI+Cl_2\rightarrow 2KCl+I_2}\) (\(\mathrm{Cl_2\,>\,I_2}\))
でも、
塩化カリウム水溶液に臭素やヨウ素を加えても反応は起こりません。
\(\mathrm{2KCl+Br_2\rightarrow \times}\) (\(\mathrm{Cl_2\,>\, Br_2}\))
\(\mathrm{2KCl+I_2\rightarrow \times}\) (\(\mathrm{Cl_2\,>\,I_2}\))
塩素の作成方法
塩素は「酸化マンガン(Ⅳ)に濃塩酸」を加えて加熱するか、「さらし粉に希塩酸」を加えても発生します。
\( \mathrm{MnO_2+4HCl\rightarrow MnCl_2+Cl_2\uparrow +2H_2O}\)
\( \mathrm{CaCl(ClO)\cdot H_2O+2HCl\rightarrow CaCl_2+Cl_2\uparrow +2H_2O}\)
\(\mathrm{MnO_2}\) の代わりにもっと酸化力の強い \(\mathrm{KMnO_4}\)(過マンガン酸カリウム)を用いた場合は加熱は必要ありません。
ハロゲン化水素の性質
ハロゲンと水素との化合物
フッ化水素 : \(\mathrm{HF}\)
塩化水素 : \(\mathrm{HCl}\)
臭化水素 : \(\mathrm{HBr}\)
ヨウ化水素 : \(\mathrm{HI}\)
をハロゲン化水素といい、無色の刺激臭のある気体で水に良く溶けます。フッ化水素を除けばハロゲン化水素は強酸です。
ハロゲン化水素の中でフッ化水素は沸点が一番高く、ほたる石に濃硫酸を加えて加熱すると生成します。
\( \mathrm{CaF_2+H_2SO_4 \rightarrow CaSO_4+2HF}\)
ただし、フッ化水素の水溶液であるフッ化水素酸はガラスを溶かすので注意が必要です。
\( \mathrm{SiO_2+6HF\rightarrow H_2SiF_6+2H_2O}\)
( \(\mathrm{H_2SiF_6}\) ヘキサフルオロケイ酸)
塩化水素は無色で刺激臭のある有毒な気体で、水に良く溶けて強酸である塩酸(塩化水素の水溶液)になります。
塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて加熱すると生成します。
\( \mathrm{NaCl+H_2SO_4\rightarrow NaHSO_4+HCl\uparrow}\)
これは良く問いになるのですが、
塩化水素はアンモニアと反応して塩化アンモニウムの白煙を生じます。
\( \mathrm{HCl+NH_3\rightarrow NH_4Cl}\)
これは塩化水素の検出でもありますが、アンモニアの検出でもあります。
塩化水素は「塩化ナトリウムと濃硫酸の混合物を加熱」で生成というのは覚えておきましょう。
ハロゲンは17族の元素です。
1つ電子を受けてれば閉殻するので陰イオンになりやすいということを確認しておいて下さい。
フッ素はすべての元素の中で電気陰性度が最も大きいというのも忘れないように!