原子量と質量数は違うというのは既に聞いたことがあると思いますが改めて確認しておきましょう。また、原子量が中性子や陽子の数に比例しないのは何故なのか質量欠損と核融合エネルギーという言葉を簡単にですが意味だけでも見ておきましょう。

質量数の定義

確認になりますが原子量と質量数を簡単に説明します。

 質量数=陽子数+中性数

原子の質量は陽子数と中性数の和にほぼ比例することがわかっていますので、
質量数は原子の質量の目安として良く使われます。

ここで思うのが電子は原子の質量には関係しないのか?ということですよね。
陽子と中性子の質量はほぼ同じですが、電子の質量は陽子や中性子に比べると非常に小さいので無視することにしているのです。
(陽子や中性子の質量は電子の質量のおよそ1840倍です。)


ドルトンの原子説では、「原子はそれ以上分解できない粒子」とされたいましたが、科学の発展により原子核と電子によって構成されていることが分かって来たのです。

原子量

原子量は質量数とは違います。
同じなのは、中性子数が6の \(\mathrm{^{12}C}\) だけです。
これは \(\mathrm{^{12}C}\) の原子量を12と約束しているからで、
原子量とは相対的な重さということになります。
同位体であれ他の原子であれこれを基準に出した値なので相対質量といえますね。

ここまでの基本的なことは別に示したとおりですので確認しておきましょう。
⇒ 原子量と質量数は違う?相対質量と絶対質量

原子には同位体が存在するものが多く、その同位体の質量(相対質量)と存在比率を掛け合わせた平均値が平均原子量です。
つまり、元素の原子量は同位体の原子量の期待値といえるので整数値にはならない、ということですね。

例えば、
水素は質量数1と2の2つが99.99%と0.01%の比率で存在しています。
原子量は、

 \(\mathrm{^1H=1.0078}\,,\,\mathrm{^2H=2.014}\)

なので水素の平均原子量は、

 \(\displaystyle\frac{1.0078\times 99.99+2.014\times 0.01}{100}≒1.008\) 

となります。

質量欠損

原子量をもう少し詳しく見てみましょう。

例えば、
 \( \mathrm{^4_2He}\)

 \( \mathrm{^2_1H}\)

とヘリウムは重水素と比べると陽子数も中性子数も2倍です。(電子数も2倍)
しかし、原子量を見ると
 \( \mathrm{^4_2He=4.003}\)

 \( \mathrm{^2_1H=2.014}\)

となっていてヘリウムの原子量は重水素の2倍になっていません。

ヘリウムと重水素だけでなく、
 \( \mathrm{^4_2He=4.003}\)

 \( \mathrm{^{12}_6C=12}\)

についても同じことがいえます。

おかしいと思いませんか?
質量保存の法則はどうした?

これが質量欠損というものです。

 \( \mathrm{^2_1H+^2_1H\rightarrow^4_2He}\)

の反応が起こる際、4.028gの重水素から4.003gのヘリウムが生成する。

つまり、0.025gの質量が失われたことになるのです。
このように原子のようなミクロの世界では質量は保存されないということです。

ところで、この消えた0.025gの質量はどこに行ったのか?

膨大な熱エネルギーに変わっているんです。
これが太陽から放出される核融合エネルギーです。

どれくらいすごいエネルギーかを計算して見ましょう。
アインシュタインの相対性理論の公式

 \( \mathrm{E=mc^2}\)

を使って質量欠損の0.025gを代入すると(途中計算は省略します)

 \( \mathrm{E=2.25\times 10^{12}(J)=2.25\times10^9(kJ)}\)

となります。
どれくらいすごいのかわかりませんので、石炭を燃やしたときのエネルギーと比べてみます。

炭素の燃焼熱は1gで見てみると32.8kJです。
4.028gの石炭(炭素)を燃やすとすると

 \( \mathrm{32.8\times4.028=132(kJ)}\)

の発熱量です。
一方で4.028gの重水素が4.003gのヘリウムになるときの核融合エネルギーは

 \( \mathrm{E=2.25\times10^9(kJ)}\)

なので、おなじ4.028gから発生する熱量は

 \( \mathrm{2.25\times10^9\div 132=1.70\times 10^7}\)

つまり1700万倍違うということです。

これでもわかりにくい?

では、
4.028gの重水素が4.003gのヘリウムになるときの核融合エネルギーは、
石炭を約70(トン)=70000kg燃やしたときのエネルギーと等しい。
といえば少しはわかってもらえますか?

太陽のエネルギーってすごいですよね。

科学の発展によって原子力発電など核融合エネルギーを利用出来るようになりました。
しかし、戦争の道具として使うために科学者は研究したのでは決してない、というのは忘れないで下さい。

科学者の端くれとしての切なる願いです。

高校化学の範囲では、

⇒ 質量保存の法則や定比例、倍数比例などの法則とアボガドロの分子説

は成り立っているとして良いですよ。